GT2ストラダーレから着想を得たデザイン
MCプーラのデザインを確認すると、とくにフロント部分の装いが新しくなっているとわかる。マセラティ伝統の楕円形グリルはそれを囲むエリアがブラックアウトしており、MC20のそれと比べるとスタイリッシュさを増したように感じる。一方でグリルが黒くなったぶんトライデントが相対的に強調されたように見える。リアもMC20からの変更はわずか。ディフューザーの中央が盛り上がった形状となり、エキゾーストパイプは左右のエアダクトを囲むようなデザインとなった。
こうしたデザインはMC20 GT2ストラダーレの面影を色濃く感じさせる。すなわちそれは、レーシングマシン「マセラティ GT2」のロードゴーイングモデルとして徹底的に空力デバイスが磨かれ、そこで得たエアロダイナミクスの知見を、MCプーラで活かされていることを意味する。
インテリアは、MC20 GT2ストラダーレと同じく上端がフラット形状となったステアリングホイールが採用されたほか、助手席のインストゥルメントパネルの造形がよりデザイン性に凝ったものに変更されるなど、MC20との視覚的な差別化が図られている。

ハンドルのシェイプが変更された以外は、デザイン上におけるMC20からMCプーラへの変更点はほとんど見当たらない。
意外だったのは、パワートレーンに一切の変更が加えられなかったことだ。最高出力630ps/7500rpmと730Nm/3000-5500rpmのアウトプットを有する3L V6ツインターボエンジンは、MC20のそれと変更はない。言い換えれば、MCプーラは可視的な変化よりも、ブランドバリューを再考することを重要視したのだろう。
このようにMCプーラのディテールを確認してみると、やはりマセラティの作であることを強く意識させられる。つまり、ラグジュアリーで独自性のある世界観と高いパフォーマンスが見事に融合しているのだ。人々の記憶に残る、ハッとさせられるようなデザインと高性能ぶりは紛れもなくマセラティのスーパーカーであり、モデナで生産のすべてが行われる“純粋なる”イタリア車なのである。
今月はこの他にもランボルギーニ テメラリオ、アストンマーティン DB12、ベントレー コンチネンタル GTスピード、マクラーレン750S&GTSなどの最新モデルの試乗記から、フェラーリやアルファロメオなどのスーパーカーブランドが勢揃い。さらに大特集の後半では1970年代の「スーパーカーブーム」に焦点を当てた特別企画「スーパーカークロニクル」も展開。あわせて、ぜひ御覧ください!
マセラティ MCプーラ 主要諸元 ※【】はMCプーラ チェロ
⚫︎エンジン種類:V6DOHCツインターボ
⚫︎総排気量:2992cc
⚫︎ボア×ストローク:88.0×82.0mm
⚫︎圧縮比:11.1
⚫︎最高出力:463kW(630ps)/7500rpm
⚫︎最大トルク:730Nm(74.4kgm)/3000-5500rpm
⚫︎燃料・タンク容量:プレミアム・60L
⚫︎WLTCモード燃費:8.7km/L【8.5km/L】
⚫︎CO₂排出量:261【265】g/km
⚫︎全長×全幅×全高:4667mm×1965mm×1226mm【1214mm】
⚫︎ホイールベース:2700mm
⚫︎トレッド 前/後:1681mm【1680mm】/1649mm【1648mm】
⚫︎車両重量:1475kg【1560kg】
⚫︎最小回転直径:11.8m
⚫︎トランクルーム容量:50L(フロント)/100L(リア)
⚫︎トランスミッション:8速DCT
⚫︎ステアリング形式:ラック&ピニオン
⚫︎サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン、後ダブルウイッシュボーン
⚫︎ブレーキ:前Vディスク、後Vディスク
⚫︎タイヤサイズ:前245/35R20、後305/30R20
⚫︎0→100km/h加速:2.9sec.
⚫︎最高速:325km/h【320km/h】