2011年9月、マツダからデミオに続く「SKYACTIV」の第二弾が登場した。アクセラがマイナーチェンジを機に、2L直噴ガソリンエンジン「SKYACTIV-G」、新世代高効率6速AT「SKYACTIV-DRIVE」、さらに実行時間と頻度を拡大したアイドリングストップシステム「i-stop」などを搭載して注目を集めた。Motor Magazine誌はその正式発表を前に、テストコースで試乗している。ここではその模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年11月号より)
低燃費とともに「走る歓び」の実現も目指す「SKYACTIV」技術
マツダの「SKYACTIV」とは低燃費技術のことだと思われるかも知れないが、実はそれだけではないということが、この新しいアクセラに試乗してよくわかった。低燃費とともに、「走る歓び」も実現しているのだ。と言うか、そもそもマツダというメーカーは「Zoom-Zoom」というコピーを使っていることからもわかるように、走る歓びを犠牲にしてまで低燃費を実現するつもりはさらさらないのだろう。低燃費と走る歓びを高次元で両立させることにこそ意義があると考えているに違いない。
さて、デミオに続くSKYACTIV第二弾であるアクセラのもっとも注目すべきトピックは、「SKYACTIV-DRIVE」という新世代高効率6速ATを搭載したことだ。SKYACTIVとはエンジンだけではなく、クルマのあらゆる領域の技術を使って燃費性能と走る歓びを高めようというものなのだ。トランスミッションがSKYACTIVの非常に重要な要素であることは言うまでもない。
この新ATは、CVTとDCT、そしてトルコン式ATのいいとこ取りをしたようなものなのだが、一番のポイントは従来型ATに比べてロックアップ領域を大幅に拡大したことだ。JC08モード燃費測定時で比べると従来型のロックアップは49%であるのに対して、新ATは82%にもなる。これは実際にどういうことかと言うと、発進時から10km /hまでとシフトチェンジ時の一瞬以外はすべてロックアップしているということだ。
これで燃費がよくなることはもちろん、エンジン回転と速度とのダイレクト感も味わえるわけだ。さらに、この新6速ATはコンパクト設計で、従来の5速ATとほぼ同じ大きさだというのだから、まさにSKYACTIVの面目躍如といったところだろう。技術的にはトルコンを新開発して、翼を小さくしたりクラッチの耐久性を向上させたことが大きい。
次にエンジンだが、2LのSKYACTIV-Gを搭載する。レギュラーガソリン仕様で圧縮比はデミオの14対1よりは低い12対1となっている。排気系はプラットフォームの制約があり、SKYACTIVの理想とされる42-1ではなく、4-1を採用している。これで最高出力は154ps、最大トルクは194Nmで、従来モデルの2Lエンジンより、4ps、8Nmm向上している。性能曲線を見るとあらゆる回転領域でトルクが太くなっているが、とくに低速トルクの向上が顕著だ。
そしてアクセラと言えばアイドリングストップシステムの「i-stop」をすぐにイメージするが、これは実行時間と頻度を大幅に拡大している。具体的には「N、Mレンジでのi-stop実施。舵角時のi-stop条件拡大。オートエアコ制御見直し」などで、燃費改善効果を向上させた。
さらにボディ剛性のアップが図られた。狙いは乗り心地と操安性の向上、ロードノイズの低減で、フロアトンネルまわりの結合構造、溶接方法を見直しフロア剛性を大幅に向上させている。そしてステアリング特性は、切り始めの操舵力を軽めにして、切り込んで行ったときに手応えを感じるような方向へ味付けされた。このあたりはフォルクスワーゲンのゴルフをベンチマークにしたようだ。ただそれはマネをしたということではなく、ゴルフを参考にしつつ「アクセラらしいキビキビ感を維持しながら、安定性と乗り心地を改善した」ということのようだ。

インパネまわりもエクステリア同様に曲面を巧みに使っている。ところどころのシルバー加飾がいいアクセントだ。
17インチタイヤ装着車の楽しさは際立っている
さて、試乗コースはマツダの美祢自動車試験場。全長3.33kmで高低差は15mある。かつては西日本サーキットと呼ばれF2レースなども行われていたが、コース幅は広くなく、きついコーナーも多いので、アクセラクラスのクルマを試すには最適と言えるだろう。
まずは15インチタイヤを装着した20Sに乗った。ピットロードから1コーナーへと向かい、60〜80km/hくらいのスピードでいくつかのコーナーをクリアしてまず感じるのは、ステアフィールの良さである。デミオもそうだった。SKYACTIVの2モデルにはそのあたりの共通性を感じる。また、サスペンションの動きもわかりやすい。それはクルマの挙動が掴みやすいということであり、スポーティな走りを楽しめるということでもある。
ただ、装着していた195/65R15サイズのエコタイヤは、当然と言えば当然なのだが、シャキッとしないところがある。さらに154psのエンジンとこのシャシの組み合わせは、いわゆる「シャシが勝っている」状態なので、思う存分、走りを楽しめるテストコースでは、いまひとつすっきりしないというのが正直なところだった。
次に乗ったのが17インチタイヤを装着した20S。そして走り出すなり、タイヤの違いは大きいなと実感した。これほどクルマ全体の印象が変わるものかと驚いた。本来持つステアフィールの良さが際立って、走りが引き締まった。さらに新6速ATのダイレクト感が活きてくる。そしてドライビングが実に楽しいのだ。これならば、多少燃費が悪くなったとしても17インチを選んだ方がいいだろう。
さて、この試乗会には比較のため従来モデルが用意されていたが、これに乗ってはっきりとわかった。従来モデルの方が軽快感はあるが、ステアフィールは新型のほうがかなり上質だ。ゴルフの「マネはしないがベンチマークだ」という意味合いがよくわかった。このところのマツダのクルマ作りには好感が持てる。(文:Motor Magazine編集部)

SKYACTIVのガソリンエンジン第二弾となる2L DOHC。シーケンシャルバルブタイミング機構、新開発のマルチホールインジェクターなどを採用する。
マツダ アクセラ スポーツ 20S-SKYACTIV 主要諸元
●全長×全幅×全高:4460×1755×1465mm
●ホイールベース:2640mm
●車両重量:1320kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1997cc
●最高出力:113kW(154ps)/6000rpm
●最大トルク:194Nm(19.8kgm)/4100rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF