2011年6月にMINIファミリー5番目のモデルとしてワールドデビューしたMINIクーペ。日本市場には2011年9月に導入され、ファミリーで初めてとなる2シーターモデルとして大きな注目を集めた。その魅力、走りはどういうものだったのか。Motor Magazine誌では、日本導入直前、そのハイパフォーマンスバージョンであるジョンクーパーワークス クーぺの試乗テストをドイツで行っている。2シーターということもあって日本では販売台数は大きくは伸びなかったが、いまも熱狂的なファンの間で人気の高いMINIクーペの試乗の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年11月号より)

想定するターゲットユーザーは「若くてモダンな男性」

MINIファミリーに5番目の兄弟となる待望の「クーペ」が加わる日が、いよいよ目前に近づいてきた。ミニの長い歴史にこれまで存在したことがない「クーペ」が新たなバリエーションとして加わることは、決してその存在の正当性やミニの血統を汚すことではない。

MINIブランドを統括するDr.カイ・ゼグラーは、クーペの成功に楽観的だ。「カントリーマン(日本名:クロスオーバー)も、過去に同様のモデルが存在しないにもかかわらず、販売台数は我々の期待を大きく上回っている」と語っている。クーペについても同様だというのだ。彼がそう語る理由は、MINIオーナーの男女比率にある。欧州を中心とした市場では、既存モデルの多くが女性に受け入れられているのだ。

そこでMINIは、欧州市場の男性に向けて人気のクーペを追加したのである。MINIが想定するクーペのターゲットユーザーは「若くてモダンな男性」。彼らのハートを掴むために、MINIはクーペに妥協のないスポーティさを与えた。

それはエンジンチョイスにも表れている。搭載する1.6L直4ターボの出力性能は、もっとも小さいクーパー クーペでも90kW(122ps)、クーパーSクーペは135kW(184ps)となる。ハイパフォーマンスバージョンのJCWクーペは155kW(211ps)だ。

既存のカブリオレをベースに開発されたクーペは、そのデザインも個性的。1.38mの低い全高に加え、ベースボールキャップを前後逆に被ったようなデザインの「ヘルメットルーフ」により、極めてスポーティなルックスを獲得している。市販バージョンはすべてツートーンとなり、オプションでハイコントラストのラリーストライプも用意される。

インテリアは、前を向いて座っているかぎり、既存のMINIとの違いにほとんど気付かないほどのMINIワールド。違和感はまったくない。しかし、後方に目をやると、リアシートは完全になく、2シータースポーツのトノカバーのようなデザインのバルクヘッドがフロントシート直後まで迫っている。

思い切ってリアシートを取り払った結果、トランク容量は280Lを確保。クラブマンより20L多いことになる。この点についてDr.カイ・ゼグラーは「日本のオーナーのためにトランクにゴルフバッグを上手く積めるようにしました」と語っているが、このクルマを乗るような若い人がオッサンのスポーツに興味を持っているかどうかは疑わしい。

画像: インテリアは既存のMINIと同様。違和感はまったくない。

インテリアは既存のMINIと同様。違和感はまったくない。

ジョンクーパーワークス クーペは史上最速のMINI

試乗車のJCWクーペに乗って、まず感じたのは、乗り味が見た目よりもずっと上質であり、ノーマルのMINIのように、いたって落ち着いたクルマとして使えることだ。それはライフスタイルの極みであるMINIクラブマンとよく似ている。

しかし、その理由は長いホイールベースではなく、極めて高いボディ剛性にある。足まわりにはクーペ専用セッティングを採用した。しかも、車速が80km/hを超えると自動的にせり出すリアスポイラーも装備。これは40kgものダウンフォースを発生させ、ロードホールディング性能向上に大きく寄与している。

1.6L直4ターボが果たす役割も、当然のことながら非常に大きい。最大トルク260Nmのこのエンジンは、オーバーブースト時にはこれが280Nmまで増加。最高出力の155kW(211ps)に達する。この結果、0→100km/h加速6.4秒、最高速度240km/hというパフォーマンスを実現。この数字はJCWクーペが史上最速のMINIであることを意味しているのだ。

極めて俊敏なコーナリング性能も特筆に値する。そのキレ味バツグンのハンドリングは、想像するレベルをはるかに超えている。まさに一般道を合法的に走れるゴーカートだ!

この俊敏なハンドリングは、フロントアクスルに標準で備わる電子制御LSDによるところが大きい。タイトなコーナーでも駆動力が左右に最適配分され、アジリティが引き上げられていることは間違いない。

ドイツにおける価格は、クーパークーペが2万1200ユーロ(約222万円)、クーパーSクーペは2万5300ユーロ(約265万円)、JCWクーペは3万150ユーロ(約327万円)となっている(すべて19%のドイツ付加価値税込)。発売は9月末から10月となる。

ちなみに、このMINIクーペはオックスフォードツインと呼ばれ、「ロードスター」の弟が存在する。彼は2012年に誕生するが、こちらも今から楽しみだ。

MINIブランドは、このクーペで改めてMINIが決して女性向けではなく、血中ガソリン濃度が高い男性でも十分楽しめるブランドであるというメッセージを発信した。(文:木村好宏)

画像: ハイパフォーマンスバージョンのJCWクーペに搭載される1.6L直4ターボは、最高出力155kW(211ps)、最大トルク260Nmを発生。オーバーブースト時にはこれが280Nmまで増強される。

ハイパフォーマンスバージョンのJCWクーペに搭載される1.6L直4ターボは、最高出力155kW(211ps)、最大トルク260Nmを発生。オーバーブースト時にはこれが280Nmまで増強される。

MINI ジョンクーパーワークス クーぺ 主要諸元

●全長×全幅×全高:3734×1683×1384mm 
●ホイールベース:2467mm
●車両重量:1240kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc 
●最高出力:155kW(211ps)/6000rpm
●最大トルク:260Nm/1850-5600rpm
●オーバーブースト時最大トルク:280Nm/1700-4500rpm
●トランスミッション:6速MT 
●駆動方式:FF
●最高速度:240km/h
●0→100km/h加速:6.42秒
※EU準拠

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