2025年9月19日(現地時間)、F1第17戦アゼルバイジャンGPが首都バクーの市街地サーキットで開幕する。バクーは古くからヨーロッパとアジアを結ぶ要衝として栄えてきたカスピ海沿岸最大の都市で、城壁に囲まれた旧市街と近未来的な巨大建造物が立ち並びぶ新市街地が共存する魅力的な街。アゼルバイジャンGPは2023年にスプリントフォーマットで開催されたが、今年は通常のレースフォーマットで行われる。

アクセル全開のセクションと狭く曲がりくねった旧市街セクションが混在

2016年にヨーロッパGPとして初開催されて以来、バクーでのグランプリは今年で9回目となるが(2020年は新型コロナウイルス感染拡大のため中止)、毎年のようにアクシデントやトラブルなど波乱が起きている。その要因のひとつはレースが行われるバクー市街地サーキット(Baku City Circuit)の難しいコースレイアウトにある。

画像: 3台のマシンが並んで走れるほど広いフラットアウト区間での攻防も見所のひとつとなる。

3台のマシンが並んで走れるほど広いフラットアウト区間での攻防も見所のひとつとなる。

そのコースは近代的な建物が並ぶ中をフラットで直角コーナーが続くセクター1、狭く曲がりくねった旧市街を走るセクター2、ほぼ直線の広い道をアクセル全開で駆け抜けるセクター3と3つのセクションに分けられるが、それぞれ性格が極端に異なるため、どちらかのセクションに合わせると別のセクションではタイムが出なくなり、各コーナーでの各マシンの速さにバラツキが生まれる。2016年にはバルテリ・ボッタスが予選で378km/hを記録した一方で、最も遅い区間は60km/h程度で、エンジニアにとって空力ダウンフォース設定は難しい妥協が求められるのだ。

そのためチームによって得意なコーナーや進入スピードが微妙に異なり、オーバーテイクのチャンスも生まれるが、中でも「ターン16の出口からターン1まで」のF1最長のフラットアウト区間での攻防が見所のひとつとなる。また、セーフティカーが導入される可能性が高いコースでもあり、チームは予期せぬ事態に対応する能力も重要になる。

トラックの幅が大きく変化するのも特徴的で、旧市街の入り口は7mほどしかないが、メインストレートでは 3台のマシンが並んで走れるほど広い。

また、バクーは「風の街」と呼ばれるほど風が強く、またカスピ海から吹く風は気まぐれで、これが波乱を呼ぶこともある。さらに路面温度の変化も厄介で、強い陽射しが当たる場所と近代的な建物によって陽射しが遮られる場所との温度の差が激しい。

タイヤにとって温度変化は大きな課題で、旧市街のテクニカル区間では温度が急上昇する一方、ターン16出口からターン1のブレーキングまでのフルスロットル区間では一気に冷却される。テクニカル区間で約90度に達したフロントのタイヤ温度が、ストレートエンドでは40度に低下することもある。

また摩耗が少ないと言われるコースではあるが、タイヤに大きな縦荷重が加わるのも特徴で、タイヤへのケアは重要。とくに2021年には、タイヤバーストのアクシデントが続発。レース残り5周で、トップを独走していたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が左リアタイヤバーストからクラッシュしたシーンは衝撃的だった。

画像: トラックの幅が大きく変化するのも特徴的で、旧市街の入り口は幅7mほどしかない。

トラックの幅が大きく変化するのも特徴的で、旧市街の入り口は幅7mほどしかない。

画像: バクー市街地サーキットのコース図。全長は6.003kmと長く、コース図からも変化に富んだレイアウトがよくわかる。

バクー市街地サーキットのコース図。全長は6.003kmと長く、コース図からも変化に富んだレイアウトがよくわかる。

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