トゥインゴの系譜と“5つのエピソード”が語る開発の現場
1993年に誕生した初代トゥインゴは、広いキャビン、スライド式リアシート、ポップで愛嬌のあるデザインを武器に、都市生活者の“自由の道具”となった。
2007年の2代目で近代化、2014年の3代目でRRレイアウトと5ドア化を果たし、「都市に最適化された小さな輸送機器」としての立ち位置を築いた。
しかし、電動化コストの高騰と安全規制の強化によってAセグは収益が出にくい市場となり、多くのメーカーが撤退。そこにあえて戻ってきたのが、新型Twingo E-Tech electricである。

開発を率いた主要メンバーが新型車とともに登壇。専任チームの迅速な意思決定が、このEVを短期間で形にした。
今回公開された5つのエピソードは、この挑戦の本質を赤裸々に語っている。
EPISODE 1:Commando Mode 21か月でEVを再構築せよ
ルノーは従来型の縦割り組織を完全に解体し、エンジニア、デザイナー、商品企画、品質、購買など全領域をひとつの“タスクフォース”に統合。まるで精鋭部隊のように最低限の人数で最速の意思決定を行う「コマンドーモード」で開発を進めた。
中国勢に対抗するには、スピードこそ最大の武器 ── その危機感が本エピソードには滲む。開発期間はわずか21か月。従来の欧州メーカーではほぼ不可能な数字だ。

端正なシルエットと短い全長が特徴。街中で扱いやすいサイズながら、5ドアによって実用性もしっかり確保する。
EPISODE 2:Cost-cutting as a strategy 「手頃なEV」を実現する執念
電動化で最も重いのはバッテリーコストだ。トゥインゴはもともと低価格帯の車種であるため、上位のE-Techシリーズと同じ開発基準では成立しない。
そこで彼らが選んだのは「ムダを極限まで削り、小さなEVを本当に手の届く価格にする」という原点回帰の戦略だった。材料、製造プロセス、部品共通化、モジュール設計、あらゆる領域で「1ユーロ単位」のコストと戦ったという。
EPISODE 3:Designing simplicity シンプルは妥協ではなく武器
初代トゥインゴの魅力は「必要だからこそ生まれた機能美」にあった。新型もそこに立ち返る。
外観はコンパクトで扱いやすく、視認性と乗降性を高めたボディプロポーション。インテリアは装飾を排し、収納や操作性など“生活道具としての機能”が優先される。
シンプルであることは、デザインの手抜きではなく、トゥインゴの核となる価値そのものだと位置付けている。

多彩なボディカラーをそろえた新型トゥインゴ。都市の風景に映える鮮やかな色使いが、日常に遊び心を添える。
EPISODE 4:Electrifying the A-segment 小型EVに最適なパワートレーンを再定義
新型Twingoは、都市利用に的を絞った60kW級のモーターとLFPバッテリーを採用。航続距離は約263kmと日常使用には十分で、コストと性能のバランスを徹底して追求した。
さらにGoogleを組み込んだOpenR Linkや最新の運転支援も搭載し、単なる「安いEV」ではなく、生活の中で頼りになるツールを目指した点も特徴だ。
EPISODE 5:A new industrial model 都市EVの未来を示す生産革新
生産はスロベニア・ノヴォメスト工場で行われるが、製造工程も見直され、徹底した省スペース化・省エネルギー化が進んでいる。
開発から製造まで、車両そのものだけでなく「作り方」も変えなければ、低価格EVは成立しない──その強いメッセージがこのエピソードを貫いている。

