「素性の良さ」は設計段階で決まる

2025年9月に販売を開始したグレカーレのエントリーグレード「エッセンツァ」。マセラティならではの基本性能や美しいデザインはそのままに、1000万円を下まわる990万円という価格設定を実現。試乗車のボディカラーはオプションのメタリックペイント・ネロテンペスタ(21万円)。
世の中には「素性の良いクルマ」というものがある。設計の初期段階に妥協がなく、技術的に正しい姿で開発されたクルマは、乗るとその素性の良さをたちどころにして感じられるし、さまざまなグレードが展開されていても1台のクルマとしてまとまりの良さが伝わってくる。
反対に、設計の初期段階で無理を押しとおしたクルマは、その無理がさまざまな場面で綻びとして現れたり、「電子制御式サスペンションが装着されているグレードは良いけれど、そうじゃないとグレードはちょっと・・・」ということが起きがちである。
マセラティのニューモデル「グレカーレ エッセンツァ」は、グレカーレが「素性の良いクルマ」であることをあらためて思い起こさせてくれる1台といえる。
車両価格を抑えても、マセラティはマセラティ

エントリーグレートと言われなければ、内装でそれを判断することはできない。イタリアンラグジュアリーらしい上質なフルレザーインテリア。各ステッチやマテリアルにまでマセラティのこだわりを感じる
英語で言うところのエッセンスにあたるイタリア語「エッセンツァ」は、「本質」や「真髄」を意味する。グレカーレでいえば、従来からラインナップされてきたもっともベーシックな「グレカーレ」よりも、さらにお手頃価格で手に入るエントリーグレードとして「グレカーレ エッセンツァ」は設定されている。
それでも、ラグジュアリーカーに求められる装備がすべて揃っているのは、イタリアはモデナに本拠を置くラグジュアリカーの老舗ブランドとして当然のこと。たとえば、マセラティのインテリアで最大の魅力といっても過言ではないハイクオリティなフルプレミアムレザーが備わるのはもちろんのこと、シートヒーターやアンビエントライトまでもが揃っているのだ。それでいながら1000万円を切る990万円のプライスタグが与えられているのだから、これはもうバーゲンのようなものだ。
ただし、その走りからはマセラティらしさがしっかりと感じられた。たとえば東名高速道路の下りで大井松田インターチェンジを過ぎたあたりから始まる、なだらかなコーナーが連続するセクションでは、ステアリングホイール上で指先1本分、いやその半分を操舵しただけでも的確に反応して、長いコーナーを流れるように走り抜けることができる。
こう書くと「過敏なステアリングレスポンス」を想像されるかもしれないが、ここで言っているのはステアリングの正確さの話で、ステアリングレスポンスとは異なる。


