「悔しさ」を原動力に生まれたGR GT
この「GR GT」の物語は、今から約20年前にさかのぼります。当時、トヨタの副社長に就任した豊田章男氏は、マスタードライバー修行の一環として「モリゾウ」の名でニュルブルクリンク24時間レースに参戦していました。2014年には、自らも開発に携わったLFAで念願のクラス優勝を達成します。
しかし、その勝利を噛み締めている場で耳にしたのは、「トヨタは退屈なクルマしか作れない」という辛辣な言葉でした。この言葉を重く受け止めた豊田氏は、そのときの悔しさをものづくりの燃料に換えて、世界に認められる魅力的なスポーツカーを作ることを決意します。やるなら最高のものを作るという意気込みのもと、社内のクルマ好きたちの情熱を集結させて誕生させたのがこの「GR GT」というわけです。

この日、世界で初めて姿が公開された「GR GT」。
大排気量V8が放つ圧倒的な存在感
注目ポイントは、やはり大排気量の内燃機関を中心に据えている点です。新開発された3998ccのV8ツインターボエンジンは、モーターを含めたシステムトータルで650ps以上というパワーを発生します。
スペックの数値だけ見れば上回る車種は他にいくつもありますが、このエンジンは超高回転型の持性に仕立てられているようで、発せられる官能的なサウンドはきっとクルマ好きの心を鷲掴みにすることでしょう。
3998cc の排気量を持つV8ツインターボエンジンは、潤滑の安定性向上と搭載位置を極力下げるためにドライサンプ方式を採用しています。それによって低いボンネット高となり、鋭いフォルムも実現しています。
このエンジンは高い出力と高回転特性が見どころですが、トヨタ自慢の直噴技術が採用されているため、熱効率にも優れていることでしょう。

GR GTに搭載される4LのV8ツインターボユニットを斜め後方から見る。
そのエンジンから発生させられる高出力は、CFRP製のトルクチューブを介してモーター一体型の機械式LSD内蔵8速ATへと伝達されます。このトランスミッションは後輪の間に配置、FR駆動方式としての理想的な重量配分にまとめるなどパッケージング面でのこだわりが感じられます。

トランスアクスル配置されるGR GTのモーター一体型8速AT。
外観デザインはこれまでとは逆のアプローチで行われたそうです。通常はパッケージングを基本にかっこよく見せるデザインをまとわせ、空力の良い方向に煮詰めていきますが、この「GR GT」では、まず走りの追求に必要な空力と冷却性能を求めることから始め、それをカッコ良くまとめるという一般的なクルマづくりとは逆の手法で進められました。
違う言い方をすれば、外装の形状はすべてが目的に沿った、意味のあるものだということになります。

空力特性と冷却性能を優先したアプローチによるデザインが行われた。
