モータースポーツの知見が活かされたハイブリッド技術
このシステムはふたつのモーターで構成されるが、うちひとつは8速DCTと組み合わせる駆動用モーターとなる。そしてもうひとつのモーターが搭載されるのはターボチャージャーの中だ。排気慣性を用いて回すタービンにモーターを組み合わせることで、低回転域からの過給の立ち上がりを増速化させる一方で、排出ガスによって得られるエネルギーを駆動用バッテリーの充電側にも割り当て・・・といえば、思い出すのはF1やWECなどのトップカテゴリーで用いられるMGU-Hだ。
すなわちT-ハイブリッドの技術的源泉は、2015〜2017年に3年連続コンストラクターズタイトルを獲得したLMP1車両の919ハイブリッドにあると見て間違いない。モータースポーツを通じて磨き上げたテクノロジーを市販車にフィードバックする。蓋を開けてみればT-ハイブリッドはポルシェの王道たるエンジニアリングの産物だ。
搭載されるフラット6は992・1型に搭載される9A2型の流れを汲む9A3型となり、排気量は3.6L。カレラ系が搭載するライトサイジングコンセプトの3Lとはボア・ストローク共に異なり、97.0×81.0mmの設定は、振り返ってみると997後期型のカレラに用意された3.6Lのそれとほぼ同じだ。これに組み合わせられるのが件の電動ターボで、エネルギーのバッファに用意されるリチウムイオンバッテリーは前軸側に搭載しており、その容量は1.9kWhとなっている。

2024年5月に発表された新型911。その最大といえるトピックが、GTSモデルに同車初となるハイブリッドシステムが追加されたこと。3.6Lの新開発パワートレーンも搭載された。
エンジン本体のアウトプットは485ps/570Nmと、ベーシックなカレラに対しては91ps/120Nm大きい。レッドゾーンも7500rpmと、つまりエンジン単体でも十分GTSとして成り立つチューニングが施されている。そこに加わる駆動モーターは56ps/150Nm。モーター単独での電動走行はなく、あくまでアシストのために組み込まれる。
T-ハイブリッドの少なからぬ副産物は小型・軽量化だ。電動化に伴うアーキテクチャーは400Vの高圧仕様となりスターターは廃止、コンプレッサーも電動化されるなど補機類の構成も一新されている。補機駆動のためのプーリーやベルトを持たない構造のおかげでエンジン全長や全高も短縮、そしてハイブリッドシステムに伴う重量増も50kgに抑えられた。ちなみに次期911ターボは、このT-ハイブリッドを電動ツインターボ化し、700psの大台に乗せてくるのではないかと噂されているが、詳細は不明だ。

