トルク感あるエンジン特性とSトロニックで走りに不満なし
そんな好印象につながった大きな要因は、ごく低回転域からターボブースト効果を発する1.8TFSIのエンジン特性と、そこに組み合わせるSトロニックによる効果が挙げられる。
とくに、ワイドレンジでありながら変速時のステップ比が小さいというデュアルクラッチ式7速トランスミッションゆえの強みと、頻繁にシフト動作を繰り返しても鬱陶しさに繋がらないスムーズさを兼ね備えたこのトランスミッションは、従来のエントリーモデルからの出力ダウンを補って余りある働きぶりを実感させてくれるのだ。
もしもこれが、たとえばオーソドックスなトルコン式5速ATなどを搭載していれば、そこではやはりもの足りなさの残るだろう、つまりはまったく異なった印象になった可能性は強いと思う。このモデルが積む最先端のトランスミッションが出力の落ち込み分をカバーし、これまでと変わることのない「TTに相応しい動力性能」をキープしてくれたということだ。
ところで、今回のTTクーペ1.8TFSIのテスト車は、オプション設定のSラインスポーツパッケージを装着していた。その内容は、専用デザインの前後バンパーや、バックレストに専用ロゴが刻まれたスポーツシート、3スポークのスポーツステアリングホイールやアルミインサート付きのスカッフプレートなどで内外装をドレスアップ・・・と、ここまではよい。しかし、10mmのローダウン化が図られたスポーツサスペンションと18インチタイヤの組み合わせは、正直なところそのフットワークテイストにあまり良い効果をもたらしていないという印象が拭えなかった。

軽快さが楽しい1.8TFSIエンジン。10・15モード燃費も2.0TFSIの13.2km/Lから14.6km/Lに向上している。
走り出しの瞬間からストローク感に乏しく、とくに首都高など路面に継ぎ目が連続するような道路の走行では、常に揺さぶられるような挙動が強めとなった。その乗り味は「カジュアルでスポーティなクーペ」としてのTT本来の狙いどころからも、やや外れ気味という印象が強い。そもそも、このパッケージオプションで38万円という価格は、せっかく身近になったこのモデルのエントリーグレードとしての価値を、なかば相殺してしまうようにも思えてしまう。
というわけで、もしも筆者がこのモデルを手に入れるとすれば、まさに素の状態こそがベストという判断をすることになると思う。残念ながら未確認ではあるものの、ノーマルサスペンションに標準の17インチタイヤという組み合わせが、スポーティクーペらしいより上質な乗り味をもたらしてくれることは間違いないだろう。
硬派を追うなら、同じTTシリーズにはより相応しいグレードがあるはず。最後にそんな感想ももたらしてくれたのが、1.8TFSIなる新たなベーシックグレードだ。(文:河村康彦)
アウディ TTクーペ 1.8TFSI 主要諸元
●全長×全幅×全高:4190×1840×1390mm
●ホイールベース:2465mm
●車両重量:1320kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1798cc
●最高出力:118kW(160ps)/4500-6200rpm
●最大トルク:250Nm(25.5kgm)/1500-4500rpm
●トランスミッション:7速DCT(Sトロニック)
●駆動方式:FF
●車両価格(税込):414万円(2012年当時)



