2012年1月、デトロイトショー2012でベントレー コンチネンタルGT(2代目)のV8モデルが世界初披露されて注目を集めた。12気筒からのダウンサイジングは、ラグジュアリーマーケットのモデルたちにも時代の波が押し寄せていることを感じさせたが、果たして、このV8モデルはコンチネンタルGTに相応しい魅力を実現できていたのか。今回はスペイン北部で開催された国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2012年5月号より)

デビュー前からすでに計画があったV8モデルの設定

実は新型コンチネンタルGTのデビューより前に、ベントレーの首脳陣はすでに、V型8気筒エンジンを積んだラインナップの登場を教えてくれていた。狙ったのは、より燃費を重視するユーザーへとアピールすること。とは言っても、彼らの多くは必ずしも経済性を気にしているわけではなく、どちらかと言えば環境意識によって、もしくは周囲から見られるイメージを考えて、そうした新たな選択肢を望んでいるというのが本当のところだろう。

そうして生まれたコンチネンタルGT V8、そしてGTC V8が搭載するのは、V型8気筒4L直噴ツインターボエンジンである。

これはアウディと共同開発されたもので、新型S8などに積まれているのと基本的には同じもの。しかしながら吸排気系や制御系の違いによって、最高出力はS8の527psに対して507psにダウンするものの、最大トルクは650Nmから660Nmに増強されている。さらに、組み合わされる8速ATはギアがクロスした設定とされ、サウンドも重低音をより強調したものになっているという違いがある。

注目の燃費は、EU総合モードで10.6L/100km(9.4m/L)と、W12モデルの16.5L/100km(6.1km/L)に対して約4割も向上されている。これは気筒数削減、直噴化のほか、内部の摩擦抵抗の低減、温度マネージメントの効率化、減速エネルギー回生、そして低負荷時には半分の気筒を休止してV4として動作する可変シリンダーシステムなどの効果だ。

画像: これまでの6L W12気筒ツインターボエンジンに親しんできたユーザーだけでなく、新しい顧客層の関心を大いに集めるだろうと思われる新型4L V8ツインターボエンジン。新たに採用された8速ATはクロスレシオの設定で、小刻みにシフトアップして瞬く間に速度を高めていく。

これまでの6L W12気筒ツインターボエンジンに親しんできたユーザーだけでなく、新しい顧客層の関心を大いに集めるだろうと思われる新型4L V8ツインターボエンジン。新たに採用された8速ATはクロスレシオの設定で、小刻みにシフトアップして瞬く間に速度を高めていく。

新鮮な加速感とともに、獰猛さと静粛性も備える

アイドリングストップシステムが搭載されていないのは意外な気もする。しかし昨年末(編集部註:2011年末)にベントレーのパワートレーン部門の長であるポール・ウィリアム氏に訊いたところでは、ベントレーのユーザーにとって、あまり快適ではないだろうという判断だとのこと。将来的に搭載することは可能だという。

さて、当然気になるのは、このV8が果たしてコンチネンタルGTに相応しい動力性能、そして走りの魅力を実現できているのかということである。スタートボタンを押してエンジンを始動すると、室内に低音の効いたサウンドが響き始める。まず最初のハードル、クリアである。

そして加速も、期待を裏切らない。1700〜5000rpmという広い範囲で最大トルクを発生する特性は、タイヤが転がり始めたら即座に最大の力がもたらされる感覚。中程度までのアクセル開度では、背中を蹴飛ばされるように速度が高まったかと思うと8速ATが小刻みにシフトアップ、というのを繰り返して瞬く間に速度を高めていく。この加速感は、ちょっと新鮮だ。

それでいて全開まで踏み込めば、獰猛と表現したいほどの加速感を得ることもできる。回転上昇はW12より軽快で、しかも3000rpmを過ぎたあたりからはドドドドッという、いかにもV8らしいビートを聞かせながら一気にパワーを炸裂させるのだ。これで物足りないなんて思う人、そうはいないはずである。

8速ATのおかげで、たとえば100km/h走行時のエンジン回転数は約1350rpmに過ぎず、室内は静粛に保たれる。こうした低負荷時にはV4モードとなるのだがスイッチャブルエンジンマウントの振動低減効果で、快適性が損なわれることはない。V8とV4の切り換えも気付かないうちに行なわれる。

ただし、追い越しなどのために巡航状態からアクセルペダルを深く踏み込んだ瞬間のトルクのツキは、ちょっと淡白な感じもなくはない。レスポンスが悪いわけではないが、そんな時にはW12ほどリッチではないな、と思わせるのだ。とは言え、それは紛れもなく余分な力だけに、なくて却って健康的で気持ち良いと感じる人もいるに違いない。

画像: アクセルペダルを踏み込めば、いかにもV8らしいビートを聞かせながら一気にパワーを炸裂させる。リアビューでは8の字を横にしたようなテールパイプが特徴的。

アクセルペダルを踏み込めば、いかにもV8らしいビートを聞かせながら一気にパワーを炸裂させる。リアビューでは8の字を横にしたようなテールパイプが特徴的。

フットワークも、前輪荷重が25kg軽くなった恩恵で、軽快感が高まっている。走り全体に、まさに健康的な感じが強まっているのである。

スポーティで軽快な存在感は、その外見にも表れている。ラジエーターグリルはダークメッシュグリルをメタルフレームで縁取ったものとされ、バンパーも3分割された開口部周辺の形状が、よりアグレッシブなものに。8の字を横にしたようなテールパイプも特徴的だ。

各部のフライング「B」バッジのベース色が赤色に改められているのも、V8モデルならではの注目点だと言える。

日本でのコンチネンタルGT V8の価格は2166万6000円。GTC V8は2380万円で、いずれもW12モデルより低く抑えられている。当然ながら、この面でもアピール度は高いと言えるだろう。ただし、世界的に好調なセールスのおかげで、今年分の日本への割当て台数はそれほど多くないという話もある。興味を持ったならば、速やかにコンタクトした方が良さそうだ。(文:島下泰久)

ベントレー コンチネンタル GT V8 主要諸元

●全長×全幅×全高:4806×1943×1404mm
●ホイールベース:2746mm 
●車両重量:2295kg
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●排気量:3993cc
●最高出力:373kW(507ps)/6000rpm
●最大トルク:660Nm/1700-5000rpm
●トランスミッション: 8速AT
●駆動方式:4WD
●EU総合モード燃費:9.4km/L
●最高速:303km/h
●0→100km/h加速:4.8秒
※EU準拠

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