完璧な操舵感に驚き、高い走行安定性に喜ぶ
911 カレラ カブリオレとは、昨年2011年10月のフランクフルトショーでフルモデルチェンジが発表された911(タイプ991)に早くも設定されたカブリオレのことである。
タイプ991版への改良点を端から挙げていく重複は避けたいところだが、ポルシェ初の電動パワーステアリングの仕上がり具合の素晴らしさに、まず強く印象付けられた。
休火山を抱くグランカナリア島の山岳地帯を縫うアップダウンとコーナーが連続した道で、休むことなく右に左にハンドルを回し続けている時に、操作とアシスト量変化の滑らかさ、伝達される情報量の豊富さに驚かされた。
直進状態ではアシストがほとんどなくなり、適度な手応えが走行の安定性に寄与しているが、そこから切り始め、再び直進状態に戻る時の一連の動作に電動パワーステアリングにありがちな人工的な反応が皆無で、とても頼もしい。従来の油圧式と較べて遜色がないほか、それ以上に滑らかだ。ここまで上質なパワーステアリングを他に知らない。同時に大幅な軽量化も図られるのだから、まったく言うことはない。

幌を開けて走行しても、風の巻き込みや風切り音がほとんど発生していないことに驚かされた。
タイプ991のクーペがデビューした時の国際試乗会ではこの電動パワーステアリングに賛否両論の評価が下されていたようだが、筆者がグランカナリア島で乗ったカレラS カブリオレに関しては、完璧なものだった。
タイプ991へのフルモデルチェンジによるもうひとつの大きな変化は寸法の拡大だ。ホイールベースが100mm延長され、オーバーハングが短くなった。フロントトレッドも52mm(カレラS、カレラ カブリオレは46mm)拡大され、理論的には走行安定性が高まったはずである。
まったくその通りで、直線でもコーナーでも極めて安定感に溢れ、それは激しいコーナリングやブレーキングの際にも変わらない。ひと昔前までは、「911はリアエンジンだから加減速に伴う前後の姿勢変化が大きく、そうした特性は操縦性にシリアスな影響をもたらす」と危惧する声が必ず聞かれたものだが、このカレラSカブリオレではまったくの杞憂に過ぎなかった。
ノーズダイブとテールスクオットという前後の動きだけでなく、左右へのロールもほとんど感じさせない(ゼロということはあり得ないのだが)フラットな姿勢を維持しながら、ハイペースで荒涼とした峠道をクリアしていった。と同時に、路面からのショックやノイズ、細かな振動などをも遮断し切っていて、乗り心地は重厚ですらある。スポーツカーであると同時に、とても上質なサルーンのような快適性も備えている点に感服させられた。
