2012年、991型に進化したポルシェの基幹車種「911」が日本でも走り始めて大きな注目を集めていたが、本国ドイツではその991型の911カブリオレがデビューを飾り、国際試乗会が開催された。今回はスペイン・カナリア諸島で行われたその国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2012年5月号より)

非の打ち所がない完成度だが操作には慣れも必要

さて、肝腎のカブリオレボディはどうだったのか? こちらも大進化を成し遂げていた。先代モデルと決定的に違うのは、幌の開閉速度だ。2+2キャビンを覆う大きな幌を電動で開け閉めするのに要するのは、たったの13秒! センターコンソールのスイッチを引き続ければ屋根が開く。50km/hまでならば、走り始めてでも開閉が可能だ。

速い! 先代の911カレラ カブリオレが20秒弱だったから7秒も短くなった。この7秒は大きい。念のため、スイッチを押し込んで閉めてみると、それも13秒。最後のロックまで自動で行う。弟分のボクスター(旧型)も幌の開閉自体は電動で行われるが、最後のロックは手動で行わなければならない。

この7秒の短縮をもたらしたルーフトップシステムが、新しい911カレラ カブリオレの進化で最も大きなもののひとつだ。「カブリオレというクルマの美しさを左右するのは、幌を閉めた時の形にあります。今回のフルモデルチェンジでカレラ カブリオレのシルエットは、初めてクーペと一致しました」そう語ったのは、プロジェクトリーダーのミハエル・シェッツレだ。

オープンカーが幌を閉めると、幌の骨の部分だけが盛り上がって凸凹になりがちだが、今度のカレラ カブリオレはたしかに、幌を閉めて真横から眺めてみると、クーペの911カレラと同じように屋根からリアバンパーにいたるラインがサラッとなだらかになっている。

幌はアウター/防音材/パネルボウ(乗員の上の部分に来るマグネシウム合金製構造材)/インナーが組み合わさった4層構造になっている。見た目はキャンバスの布だけでできているようだが、防音材とサンドイッチされた軽量かつ強固なパネルボウが収められている。シンプルなようだが、中身はなかなか複雑だ。

閉まり方も複雑になった。パネルボウとリアウインドウがZ字型に折り畳まれると同時にサイドウインドウがハネ上げられ、コンパクトに畳まれていく。畳まれたルーフはエンジンの上部にコンパクトに収まるから、シルエットを乱すことがない。

幌を開けて高速道路に乗り出すと、風の巻き込みや風切り音がほとんど発生していないことに驚かされる。今回のモデルチェンジで初めて採用された電動式ウインドディフレクターが効果を発揮しているのだろう。

コーナーやアップダウンが連続した空いた高速道路を100km/h以上で駆け抜けても、頭の上には見えない屋根が存在しているかのように車内は平安そのものだ。

高速道路を降り、急峻なワインディングロードへ繰り出す。右に左に激しいコーナリングを延々と繰り返していっても、カブリオレボディはミシリとも言わない。剛性感の高さは格別だ。剛性感ばかりがクルマの完成度を決定付けるとは思わないが、カレラS カブリオレには舌を巻いた。

画像: 内外装は、ポルシェらしく豊富に用意されるオプションアイテムから選ぶことで、様々な組み合わせを実現することができる。シートレイアウトは、クーペと同様に2+2シーターと理解しておきたい。

内外装は、ポルシェらしく豊富に用意されるオプションアイテムから選ぶことで、様々な組み合わせを実現することができる。シートレイアウトは、クーペと同様に2+2シーターと理解しておきたい。

ほとんど非の打ちどころがないカレラS カブリオレだったが、インテリアが気になった。パナメーラのような太く、大きなセンターコンソールが空間を占拠し、ボタンやスイッチも多く、煩雑なのだ。

機能の増加に伴ってボタンやスイッチが増えてしまうのは現代の高性能車の宿命だが、そこをポルシェらしい精巧な解決方法でさばいて欲しかった。BMWのiDriveシステムほど過激でなくともかまわないから、せめて空調やエンターテインメント、電話などの走行に直接関係ない機能だけでも、パソコンや携帯電話のような階層構造を採用し、ボタンやスイッチを整理整頓できるようにするべきではなかったか。

スポーツカーだったら、なおさらだ。その点をポルシェのエンジニアに質すと、次の答えが返ってきた。「スポーツやスポーツプラス、PASMのモード切り替えスイッチなどは、走行中に瞬時に手探りで切り替えられなければならないので、指の移動量が最も少ない位置にボタンを配している。だから、ユーザーは少し使っていくうちに慣れて、手探りで操作できるようになるはずだ」

タイプ991への変化と画期的な幌の採用。今度の911 カレラS カブリオレは、ふたつの大きな進化を内包している。グランカナリア島の荒涼な岩山の間を駆け巡って、そのどちらの進化も大きなものであることを体感できた。(文:金子浩久)

991型ポルシェ 911 カレラS カブリオレ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4491×1808×1292mm
●ホイールベース:2450mm 
●車両重量:1560kg
●エンジン:水平対向6DOHC
●排気量:3800cc
●最高出力:294kW(400ps)/7400rpm
●最大トルク:440Nm(44.9kgm)/5600rpm
●トランスミッション:7速DCT(PDK)
●駆動方式:RR
●最高速:299km/h
●0→100km/h加速:4.5秒
※EU準拠

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