ヒョンデグループが展開する水素ブランド&ビジネスプラットフォーム「HTWO」
圧縮水素を燃料にして走る燃料電池車(FCEV)の初代NEXO(ネッソ)は、2022年にヒョンデブランドの乗用車部門の日本再参入時に導入された。NEXOと同時にバッテリー電気自動車(BEV)のIONIQ 5、その後は、KONA(BEV)も投入されている。
この再参入に際してヒョンデモビリティジャパン(HMJ)は、ZEV(ゼロ エミッション ヴィークル)のみ日本市場で販売すると宣言している。これはつまり、日本の環境をヒョンデの車両は壊さないため、走行中にCO2を排出しないZEVのみ展開するということである。そのZEVとは、BEVでありFCEVであるということだ。
そしてHMJはその宣言どおり、再参入から4年以上が経過した2026年現在も、ラインナップはBEVのIONIQ 5、IONIQ 5 N、KONA、INSTER、そしてFCEVのNEXOとなっている。

2024年に韓国のヒョンデモータースタジオ高陽で発表された2世代目NEXOのコンセプトモデルが写真の「INITIUM(イニシウム)」である。これがほぼ同じデザインで新型NEXOとして登場した。
初代NEXOは、2018年に世界初の燃料電池専用モデルとして2018年から本国やグローバルで発売されている。そもそもヒョンデモーターカンパニー(HMC)は、水素モビリティ分野の研究&開発に30年という長い年月を費やしてきた。
以前、韓国の水素モビリティ事情を取材したことがあるが、ヒョンデはNEXOのようなFCEVだけではなく、トラックやバスなどの物流にもFCEVを投入、さらに韓国内の水素インフラにも深く関わっることがわかった。ヒョンデは、水素モビリティに本腰を入れている。
さらに販売台数世界3位の自動車グループとなるヒョンデモーターグループ(ヒョンデ、KIA、ジェネシス)を中心にサプライヤーやロジスティクス企業と協業、パートナーシップを結び、水素を社会の新エネルギーソリューションとして広く普及させるため、水素ブランド&ビジネスプラットフォーム「HTWO」を展開している。
新型NEXOもその中のひとつであるという証に、このFCEVのフロントフードの下に収まる水素燃料電池ユニットには「HTWO」のバッジが付けられているのである。
このヒョンデグループの水素ブランド&ビジネスプラットフォーム「HTWO」については機会があれば、詳しくレポートしたいが、今回の主役はあくまで新型NEXOなので、その試乗に集中したい。
グローバルで4万台以上の累計販売実績を持つ初代NEXO
世界トップの自動車メーカーのトヨタでさえ販売に苦戦するFCEVだが、HMCが2018年にグローバルで販売した初代NEXOは、全世界で4万台以上の累計販売実績を持っている。
そしてこの2世代目となる新型NEXOは、ヒョンデが長年にわたる水素技術の集大成として開発されたテクノロジーシンボルFCEVであり、「最も理想的な未来の水素社会モビリティを体現した1台として日本市場に投入する」と言っている。

新型NEXOのインテリア。写真はVoyageなのでシートがファブリックとなる。このグレードは他にシートヒーター&ベンチレーション、スマートパワーテールゲートなどの装備がなく簡素化されている。その分、価格も低く設定される。しかしADASのヒョンデスマートセンスはLoungeとあまり差がない。安全デバイスは充実していると言える。
また2世代目となる新型NEXOは、「ヒョンデの水素ブランド&ビジネスプラットフォームHTWOを通じて水素ソリューションの社会実装を加速するための中核を担うモデルとして、水素モビリティの現在と未来を体感できる移動価値を提供し、持続可能な社会に貢献する」ともヒョンデは言っている。そんな新型NEXOはどのようなクルマに仕上がったのか、とても興味深い。
まずはベーシックなVoyageに試乗した
今回参加した新型NEXOの試乗会では、ベーシックグレードのVoyageに試乗した。試乗コースは、ヒョンデCXC横浜からみなとみらいへ。さらにそこからヒョンデCXC横浜へ戻る35.4km、約41分のコースである。そのルートのほとんどが高速道路であった。
ちなみに新型NEXOにはこのVoyageのほかにLounge、Lounge+があり、全部で3グレードがラインナップする。

Voyageのファブリックシート。Lounge、Lounge+はレザーシートになる。

リアシートにも背もたれの角度調整機能が用意される。

ラゲッジルーム容量はVDA値で標準時510L、最大で1630Lにまで拡大できる。
冒頭に書いたように、FCEVもEVなので主にBEVとどう違うのかを確認しながら試乗したのだが、乗り心地や加減速、走行安定性などの走行フィーリングはBEVとの違いがない。運転していても同乗していてもNEXOがFCEVなのかBEVなのかの区別が付く人はほとんどいないだろう。
車両重量は、1890kg。このクラスのBEVと比べてもそれほど重い重量ではないので、走行性能がそれでスポイルされることはない。たとえば高速道路の合流などもドライバーの意志通り、タイムラグなくとてもスムーズに加減速できる。
右足を踏み込めば、EVらしい加速フィールも味わえるし、パドルで回生の強さを変えられるところやドライブモードに、ECO、NORMAL、SPORT、SNOWが用意され、デジタルエレクトリックサウンドが選べるところなどもヒョンデのEVに共通するものだ。
走行中のEVのメリットは、エンジン音のない静粛性、変速ショックのないことなどもあげられるが、そうした点はこのNEXOも同じ。快適な運転環境である。

ドライバーインフォメーションディスプレイの表示はドライビングモードの変更に合わせて変化させることでもできる。

ウインカー操作に合わせてその方向の死角をドライバーインフォメーションディスプレイに表示するので後方から近寄ってくる自転車やバイクが確認できる。

水素残量82%で走行可能距離が718km(エアコン使用時)と表示される。これだと1%あたり約8.8km走れることになるので水素残量100%では約880km走れる計算になる。

地図で簡単に近くの水素ステーションの情報が探せるのは便利。できればここに営業時間、空き状況、水素の値段なども表示されると完璧だ。
新型NEXOの操作系や装備、そしてインテリアの雰囲気などは、最新のヒョンデブランドのBEVに共通するものとなり、FCEVだからといって特別なものはない。つまり、いきなり乗ってもふだんBEVに乗っていれば違和感なく走ることができるだろう。
試乗中、ドライバーインフォメーションディスプレイに表示される走行可能距離は600km以上だった。水素残量80%程度でこの表示は、安心感がとても強い。とくにBEVの充電スタンドと違い、水素ステーションがどこにあるのかわからない状態だった筆者にとっては、水素残量や水素の充電を気にせずに試乗することができたので助かった。
上級グレードLoungeにも試乗。トップグレードLounge+との価格差は15万円
後日、NEXOラウンジを借りだして少し長く試乗した。ここでは短時間の試乗ではわからないことや水素の充填環境を中心に確認することができた。
試乗会とは違って時間があるのでじっくり新型NEXOを見ると、エクステリアデザインがとてもいいと改めて思った。これは韓国でワールドムレミアされた新型NEXOのプレビューモデルINITIUM(イニシウム)のときから感じていたことである。当時、記者席で取材していた筆者は、まわりの韓国メディアの熱い視線と熱狂で迎えられていたことをいまでも鮮明に覚えている。
新型NEXOは、「Art of Steel」というヒョンデの新しいデザイン言語のもと、素材本来の特性を活かした重厚なシルエットに美しさを併せ持つ個性を表現したという。どこにいても存在感を放つNEXOのデザインは、それだけで所有欲を満たしてくれるものではないだろうか。
話を戻そう。NEXO Loungeである。さすが上級グレード。装備の充実ぶりがすごい。ところでLoungeとLounge+の違いだが、デジタルサイドミラーの有無のみだ。つまり他は同じ。価格差は15万円なのでこれがデジタルサイドミラーの価格ということだ。
車両価格は750〜835万円だが、これに国や自治体の補助金が付くので、金額面の購入メリットもあると言えるだろう。エコカー減税、グリーン化特例、CEV補助金の話はまた別の機会があれば書いてみたいと思うが、あくまで今回はNEXOの試乗レポート。これに集中したい。

デジタルサイドミラーはLounge+に標準装備される。

デジタルサイドミラーの画像はAピラー下のディスプレイで表示される。慣れないとちょっと見にくいが、雨天時に水滴などが付かないので安全ではある。

Lounge+のタイヤホイールは245/45R19、19インチのアルミホイールを装着する。

Audio by Bang & OLUFSEN プレミアムサウンドシステムをLounge+は標準装備。14スピーカー、外部アンプ、e-ASDが装備する。
