文:功刀和幸(モーターマガジン編集部)/写真:山内潤也
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パワートレーンは1モーター、後輪を駆動するRWD
ボルボの「EX30」は、ラインナップの中でエントリーモデルにあたるBEVのシリーズ。そのラインナップに、新たに「EX30 Cross Country Ultra P5 Long Range Electric」が特別仕様車というカタチで加わった。まずはその特徴を紹介していこう。

EX30 Cross Country Ultra P5 Long Range Electric 特別仕様車(ヴェイパーグレー メタリック)のフロントビュー。
■サイズ・車格:全長4235mm、全幅1850mm、全高1565mm。サイズ的にはBセグメントの上位で、プレミアムラインの小型SUVのカテゴリーとなる。ボルボのラインナップでは最もコンパクトなモデルで、日本の駐車場事情にもフィットする外寸となっている。

EX30 Cross Country Ultra P5 Long Range Electric 特別仕様車(ヴェイパーグレー メタリック)のリアビュー。
■価格:ラフロード向けのタフネスイメージで仕上げられた外装で、最上位グレード「Ultra」の充実した装備はそのままに、航続距離重視のP5 Long Rangeパワートレーンのシングルモーター仕様(=RWD)に割り切ることで、599万円という価格を設定。標準車の「EX30 Ultra P5 Long Range Electric」とこの「Cross Country」版の差額は20万円と、内外装の仕様を考えるとお得な価格設定と言えるだろう。
■動力性能と航続距離:P5 Long Rangeパワートレーンは後輪を駆動するRWDで、出力は200kW(272hp)/343Nm。近いセグメントのライバル車の中では中間より上で、価格を考慮に入れると上位に位置する。総電力量69kWhのリチウムイオンバッテリーを備え、一充電の航続距離はWLTCモードで530km。EX30ラインナップの中では、空力の関係で標準車より30km短いが、ツインモーターのAWDモデルのP8より30km長い。
数値自体はライバル車たちの平均値に相当するが、出力を考慮するとかなり健闘している。これには、航続距離重視のシングルモーター仕様に割り切ることで、AWD比で90kg軽量にできたことが貢献していると見ていいだろう。また、ファームウエアのソフトウェアアップデートで充電性能が 150kW 給電に対応。社内の国内での検証では141kW 程度の充電速度まで確認しているという。
■外観
樹脂色のブラックを効果的にあしらったタフネスイメージの外装装飾が施され、標準車に比べて20mm長いストロークと少し柔らかめのセッティングが施された専用のサスペンションを備える。フロントグリル部にある「67°54'0"N, 18°31'0"E」の文字列はスウェーデンの最高峰ケブネカイセ山(標高2103m)の座標で、その山々が連なるスカンジナビア山脈の等高線と共に刻まれている。ブラック加飾のホイールアーチに収まるホイールもCross Country専用で、P8と同じ19インチサイズを採用。

ボルボ車のアイコン「トールハンマー」意匠のヘッドライト。グリル部にはスウェーデンの最高峰ケブネカイセ山の座標と等高線がモールドされている。
■内装
内装の特長を挙げると、自然との融和をテーマとしたスエーデンらしく、自然素材とリサイクル材、バイオ素材のコンビネーションで構成された内装のマテリアル。カラーは、スカンジナビアの森の常緑樹の松やモミの葉からインスピレーションを得た色彩でまとめたCross Country専用の「pine」仕様となる。
そのほかにも、
・独立したデザインの大型センターディスプレイ。
・センターコンソール上面の最前部の幅いっぱいに備わるサウンドバーを備えるHarman Kardon Premium Soundシステム。
・コネクティビティはGoogleを採用。アシスタントとしてAIの「Gemini」を順次導入している。
・パノラミックルーフ(Ultraの標準装備)。
などが挙げられる。

Cross Country専用となる「pine」仕様カラーコーディネートの内装。
タフネスなイメージと、上位モデルの上質感
「EX30」はボルボのラインナップの中でサイズ的に最もコンパクトなモデルとなっていて、そのサイズ感の割にプレミアム感を味わえる上質な雰囲気がセールスポイントのひとつ。Cross Countryは、専用の外装やサスペンションが与えられたタフネスなイメージのラインで、「Ultra」は豪華装備の上位グレードとなっている。パワーユニットは、AWDモデルの「P8(ツインモーター)」からフロントのユニットを取り去ったカタチのシングルモーターRWDモデル「P5 Long Range」となる。

RWDモデルとなるシングルモーターのロングレンジモデル「P5」のリアバッジ。
バッテリー総電力量は69kWhと同じだが、出力がフロントユニットの115kW(156hp)少ない200kW(272hp)となり消費が抑えられるとともに、車両重量も90kg軽量となることで、一充電の航続距離はWLTCモードでAWDモデル比で30km長い530kmとなっている。
車両価格は同じパワーユニット&駆動方式の標準車より20万円高く、同じ「Cross Country Ultra」の「P8 AWD」よりも50万円低く設定されている。AWDモデルは必要ないが、タフネスなイメージと上位モデルの上質感が欲しいという、「ちょうど良い」ところを狙ったポジションのモデルだ。
RWDならではのトラクションの良さも効いている
今回設けられた試乗の機会では、箱根方面のコースを選択して行った。
実車を前にすると、いかにも自然を意識したボルボらしい控えめな主張の中に、「Cross Country」らしいラフでハードな印象が溶け込んだ絶妙な雰囲気を感じる。ボディ色は特別仕様車ということで、サンディ(薄茶系)、グレー、ホワイトの3色に絞った展開とのことで、試乗車は「ヴェイパーグレー メタリック」。落ち着いた佇まいの中にも洒落っ気を感じさせる。
乗り込んで室内を見回すと、ウールや麻などの自然由来の素材を感じ得るマテリアルが上手くあしらわれていて、ボルボらしいアバンギャルドなデザインに親しみやすさを加えている。Ultraグレードの標準装備となるパノラミックルーフからの採光で、pine仕様のライトな配色の内装が、より明るさを感じさせてくれる。
ハンドルにビルトインされたボタン数個のほか、コラム部からは右にシフト系のレバー、左はウインカーとワイパーのみと、操作系のデバイスは極めてシンプルにまとめられているので、国産車から乗り換えるとその差異に少し戸惑うかもしれないが、慣れると運転に集中できる。こういうところにボルボの安全に対する高い意識が現れている。
物理操作デバイスから省かれたヘッドライトなどの項目はセンターのディスプレイにまとめられているが、UI(ユーザーインターフェース)が改良され、スマートフォンやタブレットのような感覚で操作できるようになっていて、こちらも慣れれば運転中の快適性は高そうだ。

極めてシンプルかつミニマルにまとめられた操作系。
ちなみに日本国内の要望を盛り込み、サイドミラーの格納を、これまでのセンターディスプレイでの段階的操作からミラー調整部に移行し、直接操作が可能となっている。
始動を行い試乗スタート。アクセルペダルの入力への反応はマイルド寄りのリニア感で、駐車場内でのデリケートな出力調整にも意図通りに動いてくれる。室内は窮屈な印象はないが、運転感覚的にはコンパクトさが有効に感じられ、小回りの取り回しにも不満は感じなかった。
一般道から有料道路に入り、合流でアクセルペダルを強めに踏み込み加速を試みる。加速感は車格から想像する勢いよりも強く感じ、なかなかにパワフルだ。50〜80km/hのレンジでは、モーターのスムーズでリニアな出力特性もあって、そうそう不足を感じることはないだろう。この日は試せなかったが、120km/h領域でもこの特性は発揮されるだろう。
車高は標準車比で+20mmだが、アイポイントが高く見晴らしは良い。そのぶん腰高な挙動を予想したが、サスペンションのセッティングがソフト寄りだという割に、レーンチェンジなどの切り返し動作でモタ付く印象はなく、スタビリティは高いと感じた。その際、フロントが軽い感触はあるものの、接地感はしっかり確保されていて、ハンドリング面でも安定を感じる。

ワインディング路では、力強い加速感とコーナーリングでの安定感を確かめることが出来た。
ワインディング路に入り、上りでの加速を試すと、アクセルペダルの操作にしっかり加速感が乗り、BEVの重量を感じさせず鋭い瞬発力で車体をぐいぐい押し出してくれる。
このとき、RWDならではの後輪のトラクションの良さも効いているのだろう。加速が気持ち良いので、ややハイペースで左右のコーナーを切り返していくが、車体の安定感は有料道路で感じた印象と変わらず、さすがに横Gによってロール感が増すものの、それでもフラットな乗り心地を維持しようとするサスペンションとシャシの働きによって安定して駆け抜けていけるのが意外だった。
また、軽く流していくペースでは、ワンペダルモードのスタンダードで減速は十分で、特に登りではブレーキペダルをほとんど使用せずに走ることができる。試乗ではアクセルを開け気味で50〜60kmほど走行してみたが、数値は控えていなかったものの、印象ではバッテリーの減りは思ったほど多くはなかった。これくらいの航続距離が確保されているのなら、もう少し急速充電設備が整備されていけば、長距離の移動も不安が少なく行えるのではないか、と思えた。
車両価格はけっして安いとは言えないが、取り回しの良いコンパクトなボディに高性能なパワーユニットとロングレンジのバッテリーを備え、周りと差別化が図れるタフネスなイメージの外装と、上質でスタイリッシュな内装を備えたこのパッケージなら、けっして高くはない、いやむしろ、ハマる人には高い満足感が得られる良い買い物となるのではないだろうか。
■VOLVO EX30 Cross Country Ultra P5 Long Range Electric 主要諸元
●全長×全幅×全高:4235×1850×1565mm
●ホイールベース:2650mm
●車両重量:1790kg
●モーター:TZ220XSA02(後)
●モーター最高出力:200kW(272ps)/6500-8000rpm
●モーター最大トルク:343Nm(35.0kgm)/0-5345rpm
●トランスミッション:なし
●駆動方式:RWD
●バッテリー:リチウムイオン
●総電力量:69kWh
●一充電航続距離(WLTCモード):530km
●タイヤサイズ:235/50R19
●車両価格(税込):599万円
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