自工会の調査では、軽乗用車でもふだんの乗車人数は1人が66%。加えて、日本には2人乗りの超小型モビリティという軽自動車の区分があるのに、選べる車は限られる。だがVIDA NEX 3なら前後に2人が乗る「SUVの4分の1」の超小型EV。インドの二輪大手Hero MotoCorpが2025年11月にEICMAで初公開したコンセプトモデルだ。

文: 石川順一
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普段の乗車人数は、たいてい1人か2人

平日の朝は1人で駅へ。週末は2人でスーパーへ。そんな使い方をしていると、車の後ろの席は荷物置き場になっていることが多い。日本自動車工業会の2025年度「軽自動車の使用実態調査」でも、軽乗用車のふだんの乗車人数は「1人」が66%を占めた。

それでも車体には4人分の席と、それに見合う幅がある。対向車が来るたびに路肩へ寄せる道も、枠は軽用なのにドアを開けるときに隣へ気を使う駐車場も、小さい車を選んだはずなのについて回る悩みだ。

いっそ二輪にすれば身軽になるが、雨の日や荷物の多い日はあまり快適といえない。日本には、2人乗りの超小型モビリティを軽自動車として走らせる区分まである。ところが、その枠の型式指定車として売られていたトヨタのC+podは2024年夏ごろに生産を終えた。

いま新車で買える2人乗りの超小型モビリティは、沖縄県内だけで売られるAIM EVMのように、走る場所に条件のつく認定車にとどまる。1人乗りのミニカーでは、2人目を乗せられない。2人分の席と屋根があって、大きさは二輪に近い乗り物。そんなものがあればと思いながら、運転を苦手としながら、軽のハンドルを握っている人は少なくないことだろう。

前後に2人乗り、ドアは上に開く

そんな悩みに応える一台がインドで登場した。それが2人乗りの超小型4輪EV、VIDA NEX 3だ。インドの二輪メーカーHero MotoCorpの電動ブランドVIDAが、2025年11月にミラノの二輪ショーEICMAで初公開した。面白いことにクルマにもかかわらず、席は横に並ばない。

画像: 前後に2人乗り、ドアは上に開く

運転席の真後ろに、もう1つの席がある。車体の幅は1人分に近く抑えるための工夫といえよう。2人で乗る日も、1人の日と変わらない細さで狭い道をすれ違える作りを狙ったのだろう。目標にしている大きさは「SUVの4分の1」。正確な寸法はまだ公表されていないが、都市の狭い道と小さな駐車枠に合わせて小さく作ることを、最初から設計に織り込んでいる。

画像: 前後に1人ずつ。2人で1つの目的地へ、という都市の移動に合わせた乗車人数だ。

前後に1人ずつ。2人で1つの目的地へ、という都市の移動に合わせた乗車人数だ。

車体は屋根と窓で囲われているので、二輪と違って走っている間は雨に濡れない。それに内装は用途に合わせて構成を変えられる。日々の通勤から特定の用途まで、という言い方で、何がどう変わるかはまだ示されていない。走る場所も都市に限らず、地方の移動まで想定している。ドアは屋根側を軸にして、スーパーカーのように上へ開く。横に大きく振り出さずに済むぶん、隣の車や壁との隙間が狭い場所でも乗り降りしやすい。

画像: 席は運転席の後ろにもう1つ。ドアは屋根側を軸にして上へ開く。

席は運転席の後ろにもう1つ。ドアは屋根側を軸にして上へ開く。

日本の区分に当てはめると、2人乗りの4輪は、1人乗りに限られるミニカーには入らない。受け皿の一つが、軽自動車の一種として設けられた超小型モビリティの型式指定車だ。長さ2.5m、幅1.3m、高さ2.0m以下で、最高速度は構造上60km/hまで、高速道路は走れない。普通免許で運転でき、C+podはこの枠で売られていた。NEX 3がこの寸法に収まるかは、今後の開発次第だ。

二輪で鍛えた電動の土台

NEX 3の性能を示す数字は、まだ一つも出ていない。それでも絵だけのコンセプトと見ないのは、VIDAが電動の乗り物をすでに量産しているからだ。

VIDAは2022年12月に最初の電動スクーターを納車した。2025年11月のEICMAで欧州投入を発表した代表モデルVX2は、1回の充電で125km走り、最高速度は90km/h。防水のバッテリーを2個とも車体から外して充電できる。電池を積んだ乗り物を量産してきた土台は、4輪になっても生きるはずだ。親会社のHero MotoCorpは開発拠点をインドとドイツの2か所に持ち、そこがVIDAの背中を支える。

設計に対する外部の高い評価もついた。NEX 3を含む3つのコンセプトは2026年に、世界三大デザイン賞のひとつとされるRed Dot Design Concept Awardを受けている。

画像: 運転席の前に丸いメーターが2つ並ぶ。ハンドルの中央にVIDAのロゴが入る。

運転席の前に丸いメーターが2つ並ぶ。ハンドルの中央にVIDAのロゴが入る。

四輪の電動SUVを世に出した人が率いる部門

Hero MotoCorpはニューデリーに本社を置く二輪メーカーで、2026年4月から9月までの半年で354万5,475台を出荷した。9月は祭りの季節を前に伸びて、1か月で76万6,348台。工場は8つで、インドに6つと、コロンビア、バングラデシュに1つずつある。2025年11月の時点で52か国に売り、顧客は1億2,500万人を超え、売上は約50億ドルにのぼる。

その会社が二輪の次に選んだのが、Novusと名付けた3つの乗り物だ。NEX 1は背負って持ち運べる個人用の乗り物、NEX 2は自分でバランスを取る電動の三輪、そしてNEX 3が4輪。車の区分から決めるのではなく、人の移動の場面から決める。移動の途切れた端を埋める持ち運べるもの、二輪の身軽さに安全と使い道を足した三輪、雨でも2人で動ける四輪。その場面ごとに1台ずつ当てたのがNEXシリーズの3台だ。

二輪の会社が4輪を作れるのか。その問いへの答えが、この部門の人選にある。VIDAを含むEV部門を率いるKausalya Nandakumarは、2025年7月にHeroへ加わる前、Mahindraの電動自動車会社でCOOとして電動SUV事業の立ち上げと市場投入を率いた。四輪の電動車を市場に出した経験が、この部門にはある。

外部との協業も二輪では続いている。米国の電動バイクメーカーZero Motorcyclesとは共同で電動バイクを開発中で、電動二輪のAther Energyと、三輪の電動商用車を作るEuler Motorsには出資している。電動の技術も、二輪より大きな車体の作り方も、社内だけで抱え込まない柔軟な体制を敷いている。

インドを駆ける期待の新マイクロモビリティ

NEX 3は、2025年11月4日にミラノで公開されたコンセプトだ。製品ページではニュースレターの登録を受け付け中で、どのぐらいの反響があるか測っている段階と言える。

具体的な諸元等、公表されていないことは多い。加えてHero MotoCorpは日本に正規代理店がないため、国内導入の可能性も薄い。それでも、半年で354万台の二輪を出す会社が、2人乗りの4輪を形にして見せたことは変わらない。1人か2人で移動するための最適な選択肢が、これからどのように実現されていくか、目が離せない。

画像: 後ろ姿。背面の大きなパネルにVIDAの文字が浮かぶ。

後ろ姿。背面の大きなパネルにVIDAの文字が浮かぶ。

VIDA(Hero MotoCorp) NEX 3主要諸元

・車両の形:4輪・2人乗りの超小型EV(コンセプト)
・座席:前後に各1席
・内装:用途に合わせて構成変更可能
・初公開:2025年11月4日、EICMA 2025(ミラノ)
・受賞:Red Dot Design Concept Award 2026(Novusシリーズとして)
・開発:Hero MotoCorp の電動ブランド VIDA

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