文:功刀和幸(MotorMagazine編集部)/写真: 永本秀和
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熱効率50%を目指す次世代水平対向BOXERエンジンの開発
SUBARUは新体制への転換でBEVへの大幅な投資を行ったが、依然としてSUBARU車の魅力の源として「BOXER」というICEは必要不可欠だ。今回の発表では、その「BOXER」の商品力を向上させる方策も盛り込まれていた。
昨今のICEの開発では、資源(燃料)とCO2排出量削減のため熱効率の向上が命題となっていて、熱損失を減らすロングストローク設計が主流となっている。しかし水平対向エンジンはその横長の構成上、ロングストローク化に制約があるため、熱効率向上には不利とされていた。しかしSUBARUのエンジニアはその逆境をはね除けようと、「BOXER」への情熱の火を絶やさず努力を続けていた。
この「SUBARU 開発戦略 説明・取材会」では、その熱効率向上の目標を、ガソリン燃料エンジンの実現可能最高レベルと目されている50%を掲げた。不利とされているショートストローク構成を抱えたままとあって、これは興味を惹かれないではいられないだろう。

※イメージ画像(現行のFB25型ユニット)
エンジニアに話を伺うと、50%という数値はあくまで目標とのこと。しかしあのSUBARUが何の目算もなく具体的な数値を掲げるわけはない。その方策というのも、現状ではまだ着想段階で具体的な実現の方法は未確定なものも多いが、ひとつひとつ実現させていくことで、50%を目指せる火種にはなっているようだ。
弱点を優位性の強化で補っていくという攻撃的戦略
まずその足がかりとして、燃焼の強化を追求していくという。
熱効率の向上には、フリクションロスの低減や、燃料消費の削減、熱損失を防ぐなど、少ない燃料でできるだけ多くのエネルギーを得る方法が主流となっている。ロングストロークやミラーサイクル、ダウンサイジングターボなどはその手法の代表例だ。
しかし「BOXER」は先述のようにショートストロークという、熱損失低減にとっては「枷」となる特性を抱えている。そのため、今後さらに進むであろう熱効率向上の競争の中では生き残りが難しいという意見も見られた。
しかしSUBARUは「この欠点をなんとかする」という後ろ向きなアプローチではなく、より質の良い燃焼を極めることで欠点を包み込んでしまおう、というアグレッシブなアプローチでビハインドをひっくり返そうとしているのだ。
そうすることで熱効率向上とともに、豊かなトルクという「Performance」の魅力向上に効く武器も得られるとあって、今のSUBARUが推し進める戦略に対しての切り札としても効果を発揮するだろう。

熱効率を向上させる燃焼のメカニズムを解説する開発スタッフ。
燃焼を強化するアイデア
今回発表された熱効率向上のからくりは、安定した速い燃焼を作り出すことで、従来よりも広い回転域で豊かなトルクを取り出せるというもので、同じ仕事量をより少ない燃料で得られる結果、燃費が向上し、熱効率も高まるというもの。
具体的には、燃焼室形状を見直して強いタンブル流(縦回転の渦)を作り出すというのがポイントのひとつ。強いタンブル流によって吸入する混合気をかき混ぜて均一な混合状態を作り、火炎の伝搬を理想の球形を保ったまま行えるようになる。これにより、ノッキングの種となる燃焼温度の偏りが減少。その結果、よりエネルギーを効率よく取り出せる圧縮比や点火の設定が可能になるというわけだ。

均質で素早い燃焼を実現する強いタンブル流を発生させる燃焼室を持ったシリンダーヘッド。
また、タンブル流の形成に大きく影響するポート形状も見直されている。できるだけ乱流を生まないよう、極めてストレートな通路にすることでスムーズで速い流れを実現し、タンブル流の強化を促進している。

スムーズに混合気を燃焼室に送り込めるよう、ストレートなポート形状にデザインされている。
この燃焼室とポート形状の見直しや、燃料を噴射するインジェクターの噴霧パターンの検証に大きく貢献したのが、車体の設計にも大いに活用された独自開発のCAE(Computer Aided Engineering=計算機援用工学)技術だ。
早くから車体の挙動やシャシのたわみなどの解析にデジタル技術を活用し始め、従来のアナログ機器での検証・解析で得られた知見を踏まえて、独自のアルゴリズムを盛り込んで育て上げてきたCAEの解析技術は業界でも高いレベルまで達しており、今では実測値とほぼ変わらないシミュレーション結果を得るまでに至っている。
この高度なCAE解析により、解像度の高い燃焼プロセスのシミュレートが可能となり、さまざまなアイデアの試行錯誤がデジタル上で行えることで、これまでは困難だった形状の創成を実現できた。

同時に展示されていた新開発のピストンにも、優れた燃焼を実現させるノウハウが盛り込まれている。
展示では実物のシリンダーヘッドが置かれ、燃焼室形状やポートの形状が確認。また、そこにはこの新世代「BOXER」に組み合わされるターボユニットも展示。現状はオーソドックスな機械式のようだが、将来は電動ターボの活用も視野に入れているという。

過給によって燃焼のエネルギー効率を高めるターボユニット。
現時点ではまだ熱効率50%の道を進み始めた段階だが、今回示された方策を皮切りに近い将来、新体制の強みを活かした強力なアイデアが盛り込まれた新たな魅力を備えた新世代の「BOXER」が登場することだろう。
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