新時代のダウンサイジングターボエンジン
20世紀の後半まで、スモールカーや軽自動車のパワーユニットは2気筒が一般的だった。軽量かつコンパクトに設計でき、コストの点でも有利だからだ。
だが、弱点もある。3気筒や4気筒と比べると、ノイズや振動が大きい。そのため姿を消していったが、フィアット・クライスラーは最先端の電子制御技術を盛り込んで新時代の直列2気筒エンジンを送り出した。それが「ツインエア」だ。
時代が求めるダウンサイジングに加え、シリンダー数を減らして、意表をつく直列2気筒を完成させた。排気量も小さくしたため、動力性能には余裕がない。そこでフィアットは、インタークーラー付きターボを装着してライバルを凌ぐパワーとトルクを手に入れたのだ。
主要メカニズムは、今の時代の主流となっているDOHCの4バルブ方式である。だが、排ガス対策を意識してロングストローク設計とした。ボア80.5㎜×ストローク86.0㎜で、総排気量は875ccだ。ノッキング回避と機械の抵抗損失を意識したボア/ストローク比を選んでいる。この独創の2気筒エンジンを積むのはフィアット500系やパンダ、ランチア(クライスラー)のイプシロンだ。
こう見えて最新技術が満載
メカニズムで注目したいのは電子制御を加えた油圧式の吸気バルブコントロールを採用したことである。スロットルバルブに代えてマルチエア・テクノロジーを用い、吸気バルブを開閉させて吸気量を絶妙にコントロールしているのだ。油圧をソレノイドバルブで上手にコントロールすることにより、最適な可変タイミングとリフト量によるバルブ駆動を実現した。
このシステムにターボを組み合わせ、1.2L自然吸気エエンジンより23%ものパワーアップを達成している。それと同時に30%もの燃費低減も実現した。2気筒だが、フィアットはプレミアム感をアピールしたいのだろう。販売価格は1.2Lモデルより高価な設定とした。
ツインエアは瞬時に過給し、パワーが気持ちよく盛り上がる。2気筒だから振動は出るし、エンジン音も耳につく。が、この弱点を他車にはない個性にしているところが凄い。
もうひとつ、このツインエアの個性と魅力をさらに際立たせているのが、伝達効率のいいシングルクラッチの2ペダルマニュアル、5速デュアロジックの採用である。慣れないと変速時にギクシャクするが、使いこなせるようになると操る楽しさは格別だ。実用燃費もいい。