発表とほぼ同時期に試乗することができたので、まずは高速道を中心としたショートインプレッションをお届けしよう。
セダンのS90、ワゴンのV90、どちらも流麗なスタイリングが印象的。
今回試乗したのは、S90/V90とも「T6 AWD インスクリプション」というグレード。
パワートレーンはガソリンの2L 直4DOHCにターボ+スーパーチャージャーを装着し、フルタイムで4輪を駆動する。ミッションは8速AT。
2013年のフランクフルト・ショーで公開されたコンセプトカー「コンセプト クーペ」を4ドアセダン化したというS90のスタイルは、なかなか美しい。フロント車軸とAピラー付け根との距離にこだわったというサイドビューは、FFがベースとは思えないほどバランスが取れている。これは新世代プラットフォーム「スケーラブル•プロダクト•アーキテクチャー(SPA)」採用の効果だという。
V90も、なだらかなルーフラインが従来型のV70などに比べてエレガントに仕上がっている。
どちらも全長は5m近い(V90のほうがS90より30mm短い)が、全幅は従来モデルのS80/V70/XC70と同じ1890mmにおさえられている。実際に乗っての車両感覚もS90/V90とも見切りは良いので、市街地走行でも気にはならないだろう。
ツインチャージパワーの威力絶大。外観からは想像できない走りっぷり。
コクピットにおさまると、ウッドパネルの量が増えているとかエアコンルーバーの形状が違うとかの差はあるが、全体的な印象はXC90と大きく変わらない。
S90/V90とも1800kgを超える車重だが、走り出しからけっこう軽快だ。もっとも、320ps/400Nmを発生するツインチャージドエンジンだから、その威力は絶大。アクセルペダルに力を入れて踏まなくても日常の使用にはまったく不満はないが、ちょっと踏み込めば力強いサウンドを奏でて低速域からモリモリと加速していく。
8速100km/hでのエンジン回転数は約1700rpm。室内は静かで、ハイクオリティなインテリアに囲まれた高速クルージングはきわめて快適だ。
今回の試乗車は、V90がオプションのエアサス(リアのみ)、S90がノーマルのメカニカルサスだったが、S90は少し乗り味に硬さを感じた。もっとも、どちらも走行距離は2000km足らず。ボルボ車に限らずヨーロッパ車では3000kmくらい走行しないとサスペンションがなじんでこないから、もう少し走り込めばS90の乗り味も落ち着いてくるだろう。
市街地走行の時間は少なかったが、頻繁にアイドリングストップし、再始動もスムーズ。出来の良い8速ATが効率の良い回転域でエンジンを回して走るから、実燃費はかなり良さそうだ。
ライバルはジャーマン・プレミアム スリー。長く乗れるセダン/ワゴンとしてオススメ。
室内はどちらも十分に広く、快適。リアシートはS90/V90とも余裕たっぷりだし、V90のカーゴスペースは「ザ・ワゴン」といった広さと使い勝手の良さを誇る。
フラッグシップにふさわしい快適装備や、ボルボ得意の安全技術も満載。車線維持走行をサポートする「パイロット・アシスト」は首都高速レベルの曲率だと扱いにくいが、ハイウエイでのクルージングなら問題ない。
ライバルは、ずばりジャーマン・プレミアム スリーのEセグメント(メルセデス・ベンツ Eクラス、BMW 5シリーズ、アウディ A6)。価格や装備で比べれば、まったく遜色はない。
S90は、アンチドイツ派のアッパーミドルサルーン好きには格好の1台だ。
V90は、インポートワゴン好きに人気を呼びそう。クロスカントリーという選択肢も魅力的だ。
流麗で飽きのこないスタイリングは、長く付き合うのにも向いているだろう。
今回は高速道を中心とした短時間の試乗だったが、いずれロングツーリングをしてみたい。
ボルボS90/V90は、そんな気にさせてくれるクルマだった。
(文:篠原政明/写真:井上雅行)
主要諸元 ボルボ S90 T6 AWD インスクリプション 主要諸元(カッコ内はV90)
全長×全幅×全高:4965×1890×1445(4935×1890×1475)mm
ホイールベース:2940mm
重量:1820(1840)kg
エンジン:直4DOHCターボ+S/C・1968cc
最高出力:235kW<320ps>/5700rpm
最大トルク:400Nm<40.8kgm>/2200-5400rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
JC08モード燃費:12.5km/L
タイヤサイズ:255/35R20
価格:842(799)万円