3ナンバーボディで迫力と安定感がアップ
ホットハッチは欧州では根強い人気があるカテゴリーで、各社ラインアップ内には必ず一定数が存在するが、最近の日本では、ニスモやGRなどサブブランドのコンプリートカーとして命脈を保つケースが多い。
量販モデルとして比較的手頃な価格で存続しているのはフィットRSと、ここで紹介するスイフトスポーツが2大巨頭。そのスイスポが3世代目となって大きな進化を見せた。
全幅がワイドな3ナンバーボディとなったのが話題だが、実は5ナンバーの縛りがある日本仕様のみ、標準モデルの全幅を1695㎜とスリム化させていたというのが真相で、海外生産の3代目スイフトは当初から全幅1735㎜。スイスポはひときわ走りにこだわるモデルゆえ日本仕様にもワイドボディを採用したというわけなのだ。
拡幅に伴いボディサイドの抑揚はより豊かになっているし、ノーズコーンが延長され、サイドのエアスクープもワイドとなったフロントマスクは精悍な面構え。リアバンパーも幅が増して見た目の安定感が増した。ボディ外周の下まわりパーツにカーボン調のシボを使っているあたりも粋な演出と言えよう。
プラットフォームはバレーノ以降スズキの小型車に用いられる新世代の「HEARTECT(ハーテクト)」で、これは軽量/高剛性が最大の特徴。加えて、高張力鋼板の使用部位を拡大したアッパーボディや、内外装の軽量化を併せて行うことで、先代のスイスポより70㎏も軽い970㎏(6速MT)という車重を実現した。欧州勢はどれも1.2トン前後だし、比較的軽いフィットRSも1100㎏手前。新型スイスポは世にあるホットハッチの中で最軽量と言って良いと思う。
専用ターボエンジンと6速MTで走りを一新
パワーユニットは、長く親しまれてきた1.6L自然吸気のM16Aから、1.4L直噴ターボのK14C型ブースタージェットにスイッチした。過給化により最大トルクが70Nmも上乗せされたのが最大の特徴だ。
このエンジン、先にエスクードにも搭載されたが、スイスポ用は点火や過給制御を見直した上に、吸排気、冷却系まで専用開発とすることでレスポンスと出力を向上させ、140㎰/230Nmを実現。ストックのまま使わずに専用チューンとしているあたりにスズキのスイスポに対する思い入れが伝わる。
ギアボックスは先代からさらにショートストローク化とフリクション低減を図った6速MTのほか、CVTをやめてトルクコンバーター式を再び採用した6速ATの2タイプから選べる。
この他にも、定番のモンロー製ショックアブソーバを使った足まわりは、専用ハブやアーム類の強化で剛性を高めたうえに、スタビやスプリングレートを入念にチューニング。ブレーキも1インチ大型化して効き味と耐フェード性を高めるなど、キメ細かい改良が施された。
安全&運転支援装備に関しては、8万6400円のセーフティパッケージを選択するとデュアルセンサーブレーキサポートほか7種の安全機能と、アダプティブクルーズコントロールが揃う。この展開は標準型スイフトと同じだが、スイスポではステア制御を行う「車線逸脱制御機能」が新たに加わったのがニュースだ。
ボディカラーは全6色を設定
■文:石川芳雄 ■写真:井上雅行