ドラテク向上の第一歩は、自分の位置を決めること
一般道での運転を考えた場合、一番大切なのはテクニックよりも“心がけ”だ。“愛”と言い換えてもいいだろう。歩行者や自転車を常に自分のカノ女やカレ氏だと思えば良い。イライラして乱暴な運転をしないことや、交通の流れを阻害しない程度のスピードで走ることなど、基本的なマナーやルールを守ることこそ重要…といってもそれができないドライバーも多かったりするのだが…。
ただ、ハイスピードドライビングを身につけたい、速いドライバーになりたいと思うなら、時間とお金の許す限りサーキットなどのクローズドされたコースを走り込むことがまず必要だ。もちろんセンスが良ければ最初から速いということもあるだろうが、そんな人はこういう記事は読まないから例外としよう。
本格的に走る前に覚えておかなければいけないことがふたつある。ドライビングポジションとヒール&トゥだ。正しいドライビングポジションは一般道でも必要なことだし、ハイスピードドライビングを考えた場合には、より重要となる。MT車(HA読者にもまだまだこだわりのある人が多いと思うが…)の場合、ヒール&トゥができなければ、立ち上がりに備えて適切なギアに入れるタイミングを逃してしまい不利になるから、これも覚えておきたいポイント。
と…いうこで、今回は連載の第1回としてドライビングポジションを解説していこう。ハイスピードドライビングで正確な操作を安全にできるようになるには、正しいドライビングポジションが大前提だ。これはカッコ良く見えるようにするのが重要。カッコから入る項目でもある。
カッコ良く座るには、ソファに寝そべるような姿勢などは論外だが、あまり前すぎるのも操作を妨げるのでよくない。けっこう正しいドライビングにこだわりがある人も、こうなりやすいので注意したいところだ。
位置決めの最初は深く座ったときの左膝
具体的なシート合わせの方法だが、まずシートバックを極端に寝かせていない状態で腰掛ける。シートバックに背中がしっかりと当たるようにして、座面とシートバックの接合部にも隙間ができないように、お尻を深く入れるようにする。ここが重要だ。
次にペダルをしっかり操作できるように、シートをスライドして調整する。MT車なら左足でクラッチを奥まで踏み込んだときに、AT車ならフットレストに足を乗せたときに膝が伸びきらないところに調整する。そうしないと衝突して左足を踏ん張ったときに膝にダメージを負ってしまう可能性があるからだ。右足では踵をフロアに付けたままブレーキをしっかり踏めること確認する。
続いてシートバックの調整だ。いくつかの方法があるが、ステアリングの上に両手を伸ばしたときに手首が乗っかるくらいを基本とする。9時15分の位置を握ったときに肘が120度くらいは曲がっているようにしたい。ただ、スポーツ走行を考えていないノーマルシートでサーキット走行などをする場合、強いGがかかると身体がシートに沈み込んでハンドルが遠くなってしまうこともあるので、若干前(100度くらい)まで前進させてもいいだろう。
そうしないと大きくステアリングを切り込んだ場合に、肩が大きく浮いてしまい、正しい姿勢が保てない。この辺は最近のクルマならばテレスコピック機構が付いているので活用しよう。
シートの高さは、一般走行なら頭上が窮屈ではない程度に高い方がいい。単純に周囲の状況がつかみやすいからだ。ただハイスピードドライビングということを考えると、低い方が良い場合がある。これは単に低い方がかっこ良く見えるから…という面もないわけではないが、究極まで突き詰めれば重心が下がって操縦性に良い影響を与えるということがある。
近くが見えないと必然的に遠くを見るようになるから(程度問題で、あまり近くが見えないと危険なのでNG)、視線が安定して結果的にアクセルを踏めるということもある。もっとアイポイントに関してはシートが高くても意識的に調整できることではある。
ドラポジのキモは、実は視線の安定だ
シートやドライビングポジションについて個人的な体験がある。筆者はノーマルシートのクルマでダートトライアルに出ていたことがあるのだが、そのときにはそれで何の不自由を感じていなかった。普段乗りも兼ねたクルマで2ドアだったので、ノーマルシートの方が具合がいい面もあった。比較的低速コースをメインに走っていて、そこそこ成績も出ていたので「これで十分」と思っていた。
その後、バケットシートに交換して感じたことは、シートが沈み込まないので、安定したポジションが保てるということ。それまでシートをかなり前に出して(つまりカッコ悪いポジション…)4点シートベルトをがちがちに締め込んで走らないと、踏ん張ったときにステアリングが遠くなっていたのが、そういうことが減った。
シート位置が下がったことで、自然とアイポイントが遠くになったという面もあり、気分的にアクセルを踏み込める感じにもなった。特にサーキットを走るときなどは、できるだけ遠くの一点から遠くの一点というふうに視線を良そうすると、視線も安定するしコースも広く見渡せて情報も多く入ってくる。安全にもつながるので重要な部分だ。
(解説・飯嶋洋治/イラスト・きむらとしあき)