いすゞ・ベレット1600GT の生い立ちの物語は、63年の第10回東京モーター・ショーで発表された 1500GT のプロトタイプ(試作車)から始まります。そして 64年4月にはそれとは別のより強力なエンジンを搭載した 1600GT がデビューしました。
2ドアのクーペボディは、ホイールベースは 2350mmとセダンタイプと同一ですが、全高は 1350mmと 40mm低く、全長 4005mm(セダンは 4010mm)×全幅× 1495mmでした。この 1600GT はデビューと同年の9月に早くもマイナー・チェンジを行い、4灯式ヘッドランプは 2灯式プラス・フォグランプに変更され、前輪にはディスク・ブレーキが装着されていました。
エンジンは G160型、直4、OHV、1579cc(83×73mm)で、SUの気化器を2連装して、出力は 88ps/5400rpm、最大トルク 12.5kgm/4200rpm を発生。車重は 940kg でパワーウエイトレシオは 10.7kg/ps(SAE)と、わずかに 10kg/ps をオーバーする程度に抑えられていました。この結果、最高速は 160km/hと、国産車としては初めてスポーツカーの指標ともいえる 100マイル・ラインに達したのでした。
先述の64年9月のマイナーチェンジにともない、1500GT もベレットのラインアップに加えられます。1500GT のエンジンはG150型、直4、OHV、1471cc(79×75mm)で、SU気化器の 2連装により、出力は77ps/5400rpm、最大トルク12kgm/4200rpm を発生しました。また、こちらの最高速は150km/h でした。
ベレット1600GT/1500GTは、“ベレG” の愛称で知られ、リアのスイング・アクスル特有のクセのある操縦性を持っていましたが、ラック&ピニオン式ステアリングシステムと相まって、ステアリング・フィールは当時としては正確で、その鋭いハンドリングはスポーティ走行の醍醐味を味わえるものでした。
ただし販売台数はそれほど伸びませんでした。その一因は価格にあったと言われています。1600GT
の販売価格は 93万円。このプライスは1960年代当時、車格がより上のセドリックなどと同じ価格帯でした。
ベレット1600GT は細部変更・改良を繰り返し健闘しましたが、ハイパワー化の波には抗しきれず、1969年9月に登場するベレットGTRへと進化していくのです。
いすゞ・ベレット1600GT 主要諸元
■全長4005×全幅1495×全高1350㎜
■ホイールベース:2350㎜
■車両重量:940kg
■トランスミッション:4速MT
■エンジン:G160・直4 OHV 1579㏄
■最高出力:88ps/5400rpm
■最大トルク:12.5kgm/4200rpm
■サスペンション形式:前=ダブルウイッシュボーン/後=ダイアゴナルスイングアクスル
■車両価格:93万円(1964年当時)