“知っている”ことのアピールにはなりそうだ
あるクルマを言い表すとき「R32がさあ・・・」や「FDとすれちがって・・・」など、型式で言い合うことがよくある。これを車名で「スカイラインがさあ・・・」や「RX-7とすれちがって・・・」と言ったのでは、「いつの?何代目?」と聞き返されて二度手間となってしまう。
これを回避するためにも、車名・世代・エンジンなどを表す型式を使っているのだ。ただ、クルマに詳しくない人にとってみれば、英数字を羅列したまさに暗号のように聞こえるだろう。
こうした型式で呼ばれるクルマは数多いが、ここではスバル車に焦点を当ててみようと思う。レガシィやインプレッサ、フォレスターなど、何代にもわたって名前を受け継がれているモデルたちもまた、型式で呼ばれることが多いからだ。スバルファンの間では一般的にふた桁の英数字で呼ばれ、たとえば「BL」は4代目レガシィB4を表す。もうひと桁付け加えることもあり、「BLE」といえば、3L 水平対向6気筒エンジン搭載モデルとなるのだ。
このスバル車の型式、実際にはもっと長い。クルマのどこかに貼られているコーションプレートのアプライドモデル欄を見るとわかるが、7桁もある。たとえば、「VM4D5V5」。これで分かるのは「ビッグマイナーチェンジを受けた、D型の初代レヴォーグ 1.6 STIスポーツ アイサイト AWD(CVT)」ということ。この7文字で、車種やエンジン、トランスミッションまでわかってしまうのだ。
ひとつづつ7桁の意味を見ていくと…
■1文字目:車種
■2文字目:世代・ボディ形状
■3文字目:エンジン/駆動方式
■4文字目:年次モデル(1年目は“A”、2年目は“B”、以降C、Dと続く)
■5文字目:ドア枚数(リアゲートを含め、レヴォーグは“5”、WRXは“4”)
■6文字目:グレード
■7文字目:トランスミッション
1文字目は車種を表すのだが、ベースとなっているモデルがわかるだけ。セダンなのか、ワゴン・ハッチバックなのか区別はできないので、2文字目と組み合わせて使用することがほとんどだ。また、代替わりしてもこの文字は変わらない。
・B=レガシィ シリーズ(ツーリングワゴン/B4/アウトバックなど)
・V=レヴォーグ/WRX/レイバック
・S=フォレスター
・G=インプレッサ シリーズ(セダンのG4/ハッチバックのスポーツ/XV/クロストレックなど)
・Z=BRZ
・Y=エクシーガ/クロスオーバー7
過去にさかのぼればレオーネ/アルシオーネ(シャシー共通)の“A”や、アルシオーネSVXの“C”などもある。
2文字目は世代とボディ形状を表す。必ず1文字目との組み合わせで使われ、ワゴンのレヴォーグは“VM”、セダンのWRXは“VA”となる。また世代によっても文字は変わり、レガシィツーリングワゴン(とアウトバック)は初代から順にBF→BG→BH→BP→BR→BS→BT、セダン(B4)はBC→BD→BE→BL→BM→BN→BWと代を重ねている。ちなみに2ドア/4ドアで型式は共通のようで、初代インプレッサはともに「GC」だった。
・レガシィセダン(B4):BC→BD→BE→BL→BM→BN→BW(北米)
・レガシィツーリングワゴン:BF→BG→BH→BP→BR→BS
・レガシィアウトバック(グランドワゴン他):BG→BH→BP→BR→BS→BT
・インプレッサセダン:GC→GD→GE→GJ→GK
・インプレッサワゴン(XV・クロストレック):GF→GG→GH→GP→GT→GU
・インプレッサWRX STI(セダン):GC8→GDB→GVB
・インプレッサWRX STI(ハッチバック):GF8→GGB→GRB
・WRX:VA→VB
・レヴォーグ:VM→VN
・フォレスター:SF→SG→SH→SJ→SK
・BRZ:ZC→ZD
・エクシーガ/クロスオーバー7(共通):YA
3文字目はエンジンと駆動方式だが、ここを解説しだすとキリがない。1.6L水平対向4気筒エンジン(FB16)を搭載したGT型のインプレッサは、FFで“2”、4WDで“3”と異なる。さらに、2L対4エンジン(EJ20)エンジンでもチューニング・仕様によって違ったりもする。逆にターボの有無で文字は変わらないなど、複雑極まりない。
スバル車独特の表現として使われるのが4文字目だ。モデルがデビューした1年目モデルを“A”、2年目モデルを“B”、それ以降はC、Dと続いていく。なぜ書き分けるのかというと、スバル車は細かな改良を毎年繰り返してクルマの熟成度を高める“年次改良”を行っているからだ。
A型(デビュー1年目)では固かった足まわりが、B型(2年目)で劇的に良くなったという事例がいくつもある。そして、D型(4年目)でビックマイナーチェンジが行われる(車種によって前後することもある)。乗り心地や装備面の増強、エクステリアデザインなど、改良は多岐にわたり魅力を高める。この“D型”の登場を待ってから買うという熱狂的なファンもいるほどだ。
5文字目はドアの枚数だ。リアゲートを含めての数なので、レガシィツーリングワゴンやレヴォーグなどは“5”、レガシィB4やWRXで“4”、BRZで“2”となる。
6文字目はグレードを表すのだが、これを理解するには全グレードを把握しなくてはならないので割愛。
7文字目はトランスミッション。これもエンジン同様複雑だ。ひとくくりにCVTといっても、モデルごとにギア比や部品が異なるように、ここの文字も異なる。
先にも書いたが、この型式を理解したからといって、何かが大きく変わることはないだろう。でも、クルマ好きの集まりで「SG9、おもしろいクルマだよねー」なんて言えば、こいつ知ってるな!と思われるかもしれない。そういった優越感に近い何かを感じることも、自動車ライフにおけるひとつの楽しみか。
ちなみにSG9とは、2代目フォレスターに設定されていた、STiバージョンのこと。2.5L水平対向4気筒ターボエンジンと6速MTを搭載したハイパフォーマンスSUVとして、ちょっとマニアックな存在だった。