PCSは夜間歩行者や自転車運転者も検知可能に
2017年の交通事故死者数は過去最少の3694人と、1万人を超えていた'70年代に比べると激減した。それでも交通事故死者の3分の1以上は歩行者。また路外逸脱による事故死者も3割ほどいる。
こうした事故を少しでも減らすためにトヨタが2015年に導入を開始した予防安全パッケージが「トヨタ セーフティセンス(TSS)」だ。その内容は、
<1>プリクラッシュセーフティ(PCS)=先行車または歩行者との衝突回避支援、もしくは被害低減を図る
<2>レーンデパーチャーアラート(LDA)=車線逸脱による事故の予防に貢献する
<3>オートマチックハイビーム(AHB)=夜間の前方視界確保を支援する
を中心とする、複数の機能からなる。
このTSSが、第2世代へと進化した。単眼カメラ+ミリ波レーダーの構成はそのままに、PCSが夜間歩行者や自転車運転者も検知可能になるなど、性能を向上させた。
今回、トヨタ東富士研究所で進化したPCSを体感することができた。
まずは対歩行者PCS体験。
時速40kmで走行中、クルマの陰から時速5kmで歩行者が飛び出してくる。システムが認識し、自動でブレーキをかけて衝突を回避する。
外からの動画を見ると誰でも止まれそうだが、車内から見るとこんな感じに見える。
普通に運転していたら、反射神経の良い人でもブレーキをかけられるかどうかのタイミングだ。街中を走っていて実際に起こりそうなシチュエーションだけに、このシステムはありがたい。
続いて、時速40kmで走行中、脇道から時速15kmで自転車が飛び出してきたときに衝突を回避するPCSを体験。
この動画、カメラの位置の関係で「たいしたことないじゃん!」と思われそうだが、実際に運転しているとブレーキが間に合うかどうかというほどのタイミング。
レーダーの近距離検出範囲を広角化し、単眼カメラに「動き検出ロジック」を追加して横断自転車を精度高く認識できるようになった。
ちなみに自転車は真横だけでなく斜めや前後の映像でも認識し、飛び出しを検出する。
最後は、夜間歩行者対応PCS。
明るさ約1ルクス(月明かりより少し明るいくらい)の夜道をロービームで時速30kmで走行中、道に立っている歩行者を認識して衝突を回避する。
車内から見ると、ロービームでは走れないような真っ暗な夜道。歩行者の下半身しか見えない状態でもTSSは確実に歩行者を認識して衝突を回避する。
この第2世代のTSSは既にアルファード/ヴェルファイアに採用されており、今後発売されるモデルに随時装着されていく予定だ。
ドライバーによる安全運転は前提だが、ドライバーをサポートして事故発生の可能性を下げ、万が一の事故の際にも被害低減につなげるトヨタ セーフティセンス。
その進化ぶりを体験できた貴重な機会だった。
(文:篠原政明 写真・動画:トヨタ自動車)