超微小な減衰にもこだわった新ダンパーで乗り味スッキリ
レクサスESが実に7世代目にして初めて、日本に凱旋デビューすることになった。従来同様にFFベースであるものの、初代モデルがアメリカ向けに企画されたカムリプロミネントだった当時とは大きく異なり、見ての通り生粋のレクサスブランドとしての風格を得ている。
トヨタのクルマづくりの新しい概念TNGAに基づいた新プラットフォームGA-Kを用いて新たに設計され、同じシャシを採用するカムリに対してホイールベースは45㎜長く、重量もおよそ100kg程度重い。レクサスならではの高い静粛性と世界基準の走りを実現するために、ベースのシャシに補強を加え、音振動対策にはシール材の採用など、徹底した部材補強を行った結果の重量差と言っていい。
結果、その走りの答えは実に明快。初代LSが究極に静かなクルマとして世界を驚かせたのと同様、ESもあらゆる雑音を排除し、世界最高水準の静粛性を体感できる。18インチタイヤ装着車ではホイールにさえ吸音効果を持たせることなどで、高級サルーンとしての上質感を演出している。
もっとも搭載されるパワーユニットは2.4Lハイブリッドで、海外向けのV6は日本仕様に設定はなし。エンジンサウンドは決して耳障りではないものの、急加速時には4気筒特有の音の変化が感じられる。回転の急な上昇や振動を抑えたことによる効果はあるし、力強さもある。ただ、周りが静かすぎるだけに、グッとアクセルに力を込めたときにはエンジン音が少し際立つ場面もあった。
走りはフラット感があってよほど攻め込まない限りFFであることはわからない。それだけキャビンにかたまり感があって、4輪がしっかりと路面をつかんでいる証拠。旋回中に段差を通過すると旋回方向に揺れるのが気になるが、このあたりは最近のレクサス特有の乗り味。走りと乗り心地の妥協点
とみるのが正解だろう。
際立っていたのは新たに採用された「スイングバルブショックアブソーバ」を採用した18 インチモデルの乗り味。0.002㎜/secという超微小領域での減衰が可能となり、スッキリした乗り味で、うねり路面での追従性が実にいい。音や振動にも効果があって、フラットな乗り味に磨きをかけてくれている。
一方、専用のスポーツシートを装備し、走りにこだわったFスポーツは、電子制御可変ダンパーの採用でメリハリのある乗り味を実現。サルーンとしてはいささか尖った印象はぬぐえないものの、高いGをキープしてくれてダイレクト感のある走りが楽しめる。
上質さの中にも走りの切れ味を演出しているあたりが、基本性能の高さを表していて、快適性を極めたバージョンLは中でもレクサスバッチの象徴的存在。7代目にして日本導入を決めた裏には、この妥協のないクルマ作りがあったに違いない。
世界初! 「デジタルアウターミラー」の使用感はどうよ?
少々慣れも必要だが、雨天や夜間などには効果を発揮
7代目ESでは世界で初めて『デジタルアウターミラー』が採用された(バージョンLにオプション設定・21万6000円)。従来のサイドミラーに代わって、小型のデジタルレンズを使って室内のカラーディスプレイに映し、雨や雪の影響で曇ってしまったウインドー越しでも、クリアな後方視界が確保できるという優れもの。ディスプレイが室内両サイドのピラー付け根にレイアウトされることで、視線の移動量も少なくて済む。また、ウインカーに協調して後方視界を拡大してくれて、死角をなくす
工夫がなされている。
一方、車線変更などでは車両間に入ろうとしたとき、すぐ後ろにいたはずの車両が広角への自動切り換えでいきなり小さくなり、思った以上に接近していたなどの違和感があった。ズームスイッチは上手に使い分けると良いだろう。普段見慣れている光学レンズよりも奥行き感がないせいか慣れるまでは距離感がつかみにくかったことも気になった。
ただ、夕暮れ時や外気温の影響などでウインドーが曇ってしまった時でも明るい画像が常に表示され、悪条件になるほど効果は絶大。おじさん世代にはまだ慣れが必要だが、デジタル世代とってはその効果をより一層実感するに違いない。(文:瀬在仁志/写真:井上雅行)
レクサスES300hバージョンL主要諸元
●全長×全幅×全高:4975×1865×1445mm ●ホイールベース:2870mm ●重量:1730kg ●エンジン型式・種類・排気量:A25A-FXS・直4DOHC・2487cc ●エンジン・モーター最高出力:178ps・120ps ●エンジン・モーター最大トルク:221Nm・202Nm ●システム最高出力:160kW[218ps] ●JC08モード燃費:23.4km/ℓ ●トランスミッション:電気式無段変速機 ●タイヤサイズ:235/45R18 ●価格:698万円