電池容量は増えたが、室内スペースは変更なし
電気自動車の実用性の話になると、必ずといっていいほど「航続距離が足りない」ということが問題視される。しかし、電気自動車のリーディングカンパニーを自認する日産は、ついにそんな不満を解消する答えを用意した。それが「リーフe+(イー・プラス)」だ。
リーフに追加されたこの新グレードは、従来モデルに対して約1.5倍のバッテリーを搭載し、電力量は40kWhから62kWhへと増加している。電気(エレクトリック)を追加(プラス)という名前そのものだ。
電池の最小単位であるセルは、従来192セルのところ、e+では1.5倍の288セルとなる。量は増えたが、モジュール化の工夫とハーネス接続からレーザー溶接への切り替えという生産技術の改良で、容積の増大は最小限に抑えられた。
それでも床下に納める電池は、旧来よりも20mm車体の下に出っ張る。それに対しては、全高を5mm上げて最低地上高を15mm下げて対応。だが、多くの人は実車を見ても最低地上高が下がっていることに気がつかないだろう。
電池が増えたことによってリーフe+は、いくつものメリットを手にした。最大の利点は航続距離の延長だ。一充電あたりの最長航続距離は40%も増え、JC08モードなら570km。より厳しいWLTCモードでも458kmの走行が可能となる。
日産がカーウイングスによって集めたデータによると、これで1日あたりの走行距離のユーザーカバー率は99.5%になるという。確かに1日に500kmを超えて走ることは、普通の人にとって非常にまれなはず。一般的な使い方であれば十分な航続距離だ。
そして、電池が大きくなったメリットはもうひとつあった。それがパワーだ。走ってみてビックリ! とんでもなく速いのだ。サーキットの400mほどしかない直線で、やすやすと最高速度である150km/hほどに達する。
モーターは従来と同じだが、供給される電力のパワーアップに合わせ、最高出力も110kW(150ps)から160ps(218ps)にアップ。トルクは340Nmもある。まさにホットハッチと呼べる動力性能を備えたのだ。
しかも重い電池が床下にあるため、重心が異様に低く、ロールも少ない。だが足もとはエコタイヤ。パワーに対してグリップ力が負けるから、フロントタイヤがズルズルとアウト側に流れる。しかし、アクセル全開でなければ、どっしりとした挙動で非常にコントローラブルだ。
ロールしきってフロントからズルズルと膨らむのではなく、最小のロール角のまま横に水平移動する…、そんなイメージだ。この強烈な走りはサーキットでないと、なかなか味わい尽くすことはできないだろう。
とはいえ、リーフe+はバキバキに飛ばすスポーツカーではない。飛ばすこともできるけれど、ていねいに走れば450km以上のロングドライブも可能にしてくれる。
外装も内装も、見た目は普通の40kW版リーフとほとんど変わらない。乗り心地も、ちっとも悪化していない。普通のファミリーカーそのものだ。能ある鷹は爪を隠すというけれど、このe+も同様だ。電気自動車だと思ってナメてはいけない。強烈な実力を秘めたクルマなのだから。(文:鈴木ケンイチ/写真:伊藤嘉啓)
リーフe+ G 主要諸元
●全長×全幅×全高:4480×1790×1545mm
●ホイールベース:2700mm
●重量:1680kg
●パワーユニット種類:交流電気モーター
●総電力量:62kWh
●最高出力:218ps/4600-5800rpm
●最大トルク:340Nm/500-4000rpm
●駆動方式:フロント横置きFF
●タイヤサイズ:215/50R17
●車両価格(税込み):472万9320円