外観はより親しみやすくなり、情報通信機能を大幅に強化
2015年12月にデビューした現行型プリウスは、2016年は25万台近く、2017年は16万台以上を販売して新車販売台数トップとなった。だが、新車効果が落ち着くと、トンガリ過ぎた?デザインの影響や、同じプラットフォームでSUVのC-HRや弟分のアクアに押され、2018年は12万台を切って3位に陥落した。
そこでデビューから3年、2018年12月に外観のデザインを大きく変更。縦方向の印象が強かったフロントマスクは横方向への広がりあるものとなり、顔つきが少し優しくなった。独特の形状だったリアコンビランプは、わりと普通の意匠になった。
「デザインに良い悪いはない。好きか嫌いか、だけだ」とはクルマ業界でもよく言われるフレーズだが、個人的にはマイチェン前のスタイルは嫌いではなかった。少しアグレッシブなフロントマスクや、夜間に点灯したリアコンビランプは、プリウスの先進性を感じさせてくれた。インテリアのデザインに変更はないが、ブラック加飾を採用して上質感のある落ち着いたものになった。
今回、外観のデザインとともにマイナーチェンジの目玉となっているのが、専用通信機のDCM(データ・コミュニケーション・モジュール)を全グレードで標準装備し、T-コネクトサービスを3年間無料で使えること。
これは、ステアリング左の音声認識スイッチを押して年中無休のオペレーターと電話で直接会話し、ナビの目的地設定やお店の電話番号案内、天気予報や渋滞情報などをオペレーターが検索して結果をナビに送信してくれるというもの。実際にオペレーターと会話して試してみたが、かなり便利だ。
また、音声対話サービスのエージェント機能もあり、ナビに話しかけるだけで目的地や情報を検索できる機能もある。オペレーターに頼まなくても、こちらの機能でも十分に役に立つ。そのほか、LINEを介して愛車と会話したり、スマホとセキュリティの連動もできるが、このあたりは実際に所有してから試してみると良いだろう。
さて、今回のマイナーチェンジでパワートレーンなどは変更されていない。したがって、走りっぷりに変わりないが、市街地走行での乗り心地が少し良くなったように感じられた。見切りの良さや低重心による安定感、スムーズな加速フィールなど、プリウスらしさはそのまま。
ECOモードでの走りがタルいのも変わらず(笑)、かといって普通に走るのならPOWERモードを使う必要もなくNORMALでも不満ない走りっぷりを見せる。
試乗車はAツーリングセレクションで17インチ45タイヤを履いていたので、市街地走行では乗り味は少し硬め。それでも従来型よりは良くなっているが、街乗り中心に使うなら15インチで十分だろう。
安全運転支援機能のトヨタセーフティセンスも全グレードに標準装備。レーダークルーズコントロールの加減速はスムーズで好感を持てるもの。レーンディパーチャーアラートはステアリング制御機能付きだが、車線維持支援機能ではない。
最近、ホンダ、フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツの同クラスの最新モデルに試乗したが、いずれも車線維持支援機能まで備えている。プリウスが先進性を強調するなら、このあたりはもう一歩進めて欲しかったところだ。
とはいえ、スマホの置くだけ充電や快適温熱シート、カラーヘッドアップディスプレイにLEDヘッドランプなど、充実した装備(一部オプション)は、さすがプリウス。
今回、311km(都市高速と一般道がほぼ半々)走って平均燃費は25.6km/L。EV走行比率は55%と表示された。例によってエコランは行わず、エアコンも入れっぱなしでほぼNORMALモードで走行。実燃費はJC08モードの約7割と言われているから、悪い数値ではないだろう。
親しみやすいデザインとなり、コネクティッド機能を強化したプリウス。2019年2月の販売台数は前年比103.1%の1万1867台で、ランキングも2位と復調の兆しを見せている。「トヨタ帝国 プリウス王子の逆襲」はなるのか? 期待して見守ってみたい。(文:篠原政明/写真:Webモーターマガジン編集部)
トヨタ プリウス Aツーリングセレクション 主要諸元
●全長×全幅×全高:4575×1760×1470mm
●ホイールベース:2700mm
●重量:1390kg
●エンジン:直4DOHC+モーター
●排気量:1496cc
●最高出力:98ps・72ps
●最大トルク:142Nm・163Nm
●JC08モード燃費:37.2km/L
●トランスミッション:電気式無段変速機
●駆動方式:横置きFF
●価格(税込み):300万6720円