eKクロスの「マイパイロット」は、かなり出来が良い!
eKクロスは、従来型のeKカスタムに代わって登場したモデルだ。ノーマルのeKワゴンは自然給気エンジンだけだが、eKクロスは全車モーターアシスト付きのハイブリッドで、さらに今回試乗したTではインタークーラー付きターボも備わるという、いかに三菱がeKクロスにウエイトを置いているかがわかるだろう。
eKクロスの最大の特徴は、SUVテイストのフロントマスクだ。デリカD:5をも彷彿とさせるダイナミックシールドのフロントマスクは、けっこう刺激的。
だが、写真で見るよりも実車のほうがまとまりは良く、ボンネットやフェンダーはeKワゴンと共通(おそらくは共同開発車の日産デイズとも共通)ながら、フロントまわりだけの変更でここまで仕上げたのは、なかなか見事だ。
パッと見はギョッとなるフロントマスクだが、よく見ると愛嬌もある。クルマ・ヒエラルキーの強い日本では、すれ違いや合流などで弱い軽自動車だが、これくらい押し出し感の強い方が効果的かもしれない(笑)。
試乗車のTは前述のとおりターボエンジンにマイルドハイブリッドも備えたトップグレード。ミッションはCVTで、パドルシフトなどマニュアルモードはないが、このクルマの性格を考えれば問題ない。
エンジンサウンドは快音とはいかず、3000rpmを超えると少しノイジーだが、そこまで回さなくても発進加速は十分。モーターのアシストはインジケータを見ない限り分からないほど自然だ。
高速道路をDレンジ80km/hでクルーズすると、エンジン回転数は約2000rpm。この状態での乗り心地や振動は十分に抑えられている。
スポーツモードに入れるとエンジンを積極的に高回転域まで引っ張るが、人や荷物を多く積んでいない限りは使わなくても走りに不満はない。乗り心地は、4WDと55タイヤのためか少し硬めだが、軽自動車と考えれば不満のないレベルにある。
今回、ハード面で最大のポイントは高速道路の同一車線運転支援技術「マイパイロット」をオプションながら設定したこと。今回の試乗車には装着されていたので何度も試したが、コイツの出来はすごく良い。
ステアリングのメインスイッチを押して、指定速度や車間をセットするだけ。首都高速1号羽田線で制限速度にセットすれば、車線を維持して走行できると言えば、その出来が分かるだろうか。
パッケージオプションで税込み7万200円とはいえ、軽自動車に設定してくれたことは評価したい。「転ばぬ先の杖」と考えれば割高なオプションではないし、ぜひ装着を勧めたい。できれば、全車にオプション設定して欲しいところだ。
それでも、衝突被害軽減ブレーキや踏み間違い衝突防止システムなど「e-アシスト」は全車に標準装備している。昨今の悲しい事故の話を耳目にするたびに、こうしたシステムは装着を義務付けるべきだと思わずにはいられない。
アグレッシブな外観に対し、インテリアは比較的オーソドックスだ。エアコンパネルのタッチ式スイッチなど、クオリティも高い。
コクピットからの視界は良く、小物を置くスペースも多く備わっているのはありがたい。車高が高いから室内は前後シートともヘッドスペースはタップリ。リアシートはスライド可能だから、乗車人数と荷物の量に応じて調整できる。
オプションだがデジタルルームミラーやマルチアラウンドモニターなども設定されており、もはや安全&快適装備とも上のクラスのクルマと比べても遜色ない。
今回、約160km(都市高速と市街地走行が、ほぼ半々)を走行して、平均燃費は17.6km/L。例によってエアコンは入れっぱなしで、エコランはせず。高速走行が多かったとはいえ、WLTCモードより良い数値が出たのはたいしたもの。
リアスライドドアのスーパーハイト軽までスペース重視はしないけれど、軽でも人や荷物は問題なく積めて、安全&快適装備が充実して、もちろん走りはしっかりしていて、ちょっと個性的なクルマが欲しい…なんてゼイタクな望みにも、このeKクロスなら応えてくれるだろう。(文:篠原政明/写真:伊藤嘉啓ほか)
eKクロス T(4WD) 主要諸元
●全長×全幅×全高:3395×1475×1660mm
●ホイールベース:2495mm
●重量:920kg
●パワーユニット:直3DOHC+ターボ
●排気量:659cc
●最高出力:64ps・2.7ps
●最大トルク:100Nm・40Nm
●WLTCモード燃費:16.8km/L
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:横置き4WD
●タイヤ:165/55R15
●価格(税込み):176万5800円