昭和は遠くなりにけり…だが、昭和生まれの国産スポーティカーは、日本だけでなく世界的にもブームとなっている。そんな昭和の名車たちを時系列で紹介していこう。(ホリデーオート2018年6月号別冊付録より)

鋭いハンドリングの個性的GTカー

いすゞ ベレット1600GT:昭和39年(1964年)4月発売

画像: カタログ値では、最高速は160km/h、0-400m加速は18.3秒と謳われていた。

カタログ値では、最高速は160km/h、0-400m加速は18.3秒と謳われていた。

組立車(ライセンス生産)のヒルマン・ミンクスの後継モデルとして、ベレットがデビューしたのは1963年(昭和38年)6月のこと。

曲面に囲まれたコンパクトなボディシェル、そして独特なサスペンションシステムを持ったベレットの走行性がまず人々の心をとらえた。その秘密は後輪のサスペンションレイアウトにあった。

ダイアゴナルリンクとコイルスプリングを組み合わせ、さらに横置きリーフスプリングのコンペンセータを加えた独立懸架システムにより、ベレット独特の“ふんばりのきく”走行性が生まれたのである。なお前輪はウイッシュボーン/コイル独立懸架となっている。

ミニカー以外のFR車として当時少ない全輪独立懸架を採用したベレットに、スポーティタイプがバリエーションに加えられたのは、むしろ当然といってよかった。

画像: スポーツカームードいっぱいのコクピット。シフトストロークの短い4速フロアが小気味良かった。

スポーツカームードいっぱいのコクピット。シフトストロークの短い4速フロアが小気味良かった。

果たして63年の第10回東京モーター・ショーで1500GTのプロトタイプが発表された。そして64年4月にはそれとは別の、より強力なエンジンを搭載した1600GTがデビューした。

これは、2ドアクーペ・タイプで、ホイールベースは2350mmとセダンタイプと同一だが、車高のみは1350mmと40mm低くなっていた。なお全長は4005mm(セダンは4010mm)、全幅は1495mmである。
この1600GTは同年9月には早くもマイナーチェンジを行い、4灯式ヘッドランプは2灯式+フォグランプへと変わり、前輪にはディスクブレーキが装着されている。

エンジンはG160型と呼ばれる直4OHVの1579ccで、SUキャブレターを2連装して最高出力は88ps/5400rpm、最大トルクは12.5kgm/4200rpmを発生した。

車重は940kgであるから、馬力あたり重量は10.7kg/ps(SAE)とわずかに10kg/psをオーバーしていた。最高速は160km/hで、はじめてスポーツカーの指標ともいえる100マイル・ラインに達した。

画像: SUツインキャブの吸気音と抜けの良いマフラーで、ベレGは特有の官能的なサウンドが楽しめた。

SUツインキャブの吸気音と抜けの良いマフラーで、ベレGは特有の官能的なサウンドが楽しめた。

フェアレディ1500が当時最速の155km/hとなっていたのを考えると、ベレット1600GTの160km/hという数字の持つ意味がよくわかる。

さらに当時の世界に目を向けて見ると、GTと称する量産タイプは、それほど数は多くなかったが、たとえばイギリスのフォード・コンサル・コルティナGTでは、1.5Lの83.5ps(SAE)エンジンを搭載し、馬力あたり重量は10.4kg/ps(SAE)とベレットGTと全く同一水準だが、最高速は149km/hだった。

BMW1600も、全輪コイル独立懸架でスポーツ性の高いモデルといえるが、そのエンジンは1573ccの94ps(SAE)で、馬力あたり重量は11.2kg/ps(SAE)、最高速は150km/hとなっている。

画像: ベレットGTは、基本シルエットは変わらないものの、小変更、小改良が重ねられた。写真のモデルは再度4灯ヘッドランプにもどった後期型(1968年)。

ベレットGTは、基本シルエットは変わらないものの、小変更、小改良が重ねられた。写真のモデルは再度4灯ヘッドランプにもどった後期型(1968年)。

ベレット1600GTが、後発メーカーであるいすゞの意気込みを如実に示した作品だったことがよくわかる。

後発の企業は洋の東西を問わず、いつも立ちふさがる大企業の壁に挑戦するため、技術的にもスタイルの面でも、常に一歩を先んじた新機軸を示さなくては立ち行かない宿命を持っている。

1600GTには、先述の64年9月のマイナーチェンジとともに1500GTがラインアップに加えられた。
1500GTのエンジンはG150型で、直4・OHVの1471ccで、SUキャブレターの2連装により、最高出力は77ps/5400rpm、最大トルクは12kgm/4200rpmを発生した。最高速は150km/hである。

画像: 受注生産の形でごく少数生産された1600GTファストバック。テールランプは丸型6灯だった。価格は標準モデルの10万円高。

受注生産の形でごく少数生産された1600GTファストバック。テールランプは丸型6灯だった。価格は標準モデルの10万円高。

ベレット1600GT/1500GTは、“ベレG”の愛称で知られ、リアのスイングアクスル特有のクセのある操縦性を持っていたが、ラック&ピニオン式ステアリングシステムと相まって、当時としては数少ない正確なステアリング特性を示し、その鋭いハンドリングはスポーティ走行の醍醐味を味わわせてくれた。

ただし販売台数はそれほど伸びなかった。それというのも93万円(1600GT)という、車格のより高いセドリック1900あたりと全く同じ高価格であったためかもしれない。

たしかに1965年になって鳴り物入りでデビューしたスカイライン2000GT(S54)よりも数万円高いのは大きなハンディキャップではあった。それだけにユーザーはマニアックな、個性を重んじる人たちが多かった。つまりトヨタ、ニッサンの多数派ではなく、一匹狼とでも言えるだろうか。

ベレット1600GTは細部変更・改良を繰り返し、少数ながらも健闘したが、ハイパワー化の波には抗しきれず、ベレットGTRへと進化してゆく。

ともかく、日本で“GT”の名称はこのクルマからスタートした。独特のエキゾーストサウンドとともに記憶に残る1台である。

画像: 1600GTのパワーユニットを2ドアセダンに移植した1600スポーツ(68年型)。フロントグリルもGTと同一デザインで、快速実用セダンとしてまずまずの人気を得た。

1600GTのパワーユニットを2ドアセダンに移植した1600スポーツ(68年型)。フロントグリルもGTと同一デザインで、快速実用セダンとしてまずまずの人気を得た。

ベレット1600GT 主要諸元

●全長×全幅×全高:4005×1495×1350mm
●ホイールベース:2350mm
●重量:940kg
●エンジン型式・種類:G160型・直4 OHV
●排気量:1579cc
●最高出力:88ps/5400rpm
●最大トルク:12.5kgm/4200rpm
●トランスミッション:4速MT
●タイヤサイズ:5.60-14 4PR
●価格:93万円

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