昭和は遠くなりにけり…だが、昭和生まれの国産スポーティカーは、日本だけでなく世界的にもブームとなっている。そんな昭和の名車たちを時系列で紹介していこう。1965年発売の日野 コンテッサ1300クーペ。

華のあるクーペは、スペシャリティの始祖

日野 コンテッサ1300クーペ:昭和40年(1965年)4月発売

画像: ミケロッティがデザインした独特のスタイリング。カタログ値では最高速145km/hと謳われていた。

ミケロッティがデザインした独特のスタイリング。カタログ値では最高速145km/hと謳われていた。

現在は乗用車部門から撤退している日野自動車工業が、フランスのルノー4CVの国内組み立て(ライセンス生産)を開始したのは1953年(昭和28年)のことだった。

生産はほぼ10年間にわたって続けられたが(63年まで)、その間、61年にコンテッサ900がデビューした。

もちろんルノーの国内組み立てで学んだ技術とノウハウをベースにした作品で、その設計は56年から開始され、58年1月に試作車第一号が完成している。

コンテッサはリアエンジン車の4CVの流れをくんだ4ドア5座のRRセダンで、エンジンは4CVの748ccを上回る直4・OHVの893ccだった。ルノーの影響は設計の至るところに反映しており、ボア×ストロークも60×79mmの超ロングストロークが採用されていた。

サスペンションもルノーゆずりの前がウイッシュボーン/コイル、後がスイングアクスル/コイルの全輪独立懸架方式が採用されていた。

画像: ナルディタイプのウッドステアリング、木目のメーターパネルなど、ムードあふれるコクピット。ラック&ピニオンのシャープなステアリング特性で熱烈なファンも多かった。

ナルディタイプのウッドステアリング、木目のメーターパネルなど、ムードあふれるコクピット。ラック&ピニオンのシャープなステアリング特性で熱烈なファンも多かった。

4CVと異なる最大の特徴は、電磁式ハンドル・チェンジを持ったギアボックスを取り入れたことで、これはRR車固有のデメリットである、長いケーブル操作によるギアチェンジの不利をなくすためだ。

さらに同社は神鋼電機との共同開発による電磁クラッチもオプションとして設定している。

このコンテッサ900の最初のスポーティ版は62年7月登場のSタイプだが、64年8月、
コンテッサはフルモデルチェンジを行い、4ドアセダンのコンテッサ1300を発売した。

エンジンは新設計のGR100型、直4・OHVタイプで排気量は1251cc、最高出力は出力55ps/5000rpm、最大トルクは9.7kgm/3200rpmを発生した。

連続高速走行を前提として、クランクシャフトは5個のベアリングで支持され、またバルブ配置はクロスフロータイプを採用するなど、かなり進歩したメカニズムも特徴だった。

画像: リアに搭載されるGR100型は直4のOHV。中低速のトルクが厚い実用性に富んだエンジン。クランクシャフトは5ベアリング支持で耐久性も高かった。

リアに搭載されるGR100型は直4のOHV。中低速のトルクが厚い実用性に富んだエンジン。クランクシャフトは5ベアリング支持で耐久性も高かった。

そして同じ年の12月、ジョバンニ・ミケロッティのオリジナル・デザインによる1300クーペが発表された(セダンもミケロッティのデザイン)。

このクーペのエンジンは同一排気量ながら圧縮比を8.5から9.0に高め、SUキャブレターを2連装して、最高出力は65ps/5500rpm、最大トルクは10kgm/3800rpmを発生した。車重が945kgであるから、馬力当り重量は14.5kg/ps(SAE)となる 。

画像: リアのオーバーハングがフロントよりも30cm以上長い、前と後が逆転したようなプロポーション。リアビューの美しさが売りであった。

リアのオーバーハングがフロントよりも30cm以上長い、前と後が逆転したようなプロポーション。リアビューの美しさが売りであった。

この1300クーペはミケロッティの傑作のひとつに数えられるが、内外から高い評価を受け、65年7月イタリアで行われた第5回国際エレガンス・コンクールを最初として、9月の66年度国際自動車エレガンス・コンクール(ベルギー)、67年6月の第4回サンミッシェル自動車エレガンス・コンクール(ベルギー)において、セダン/クーペはともに3年連続して権威の高い名誉大賞をうけている。

1300クーペはスタイルの美しさだけでなく、レースでの活躍もめざましく、66年11月の第9回リバーサイド・タイムスGPレース(USA)でクーペが総合優勝し、67年のルソン島一周耐久レースでも1、2位を独占した。もちろん国内のレースにおいてもその活躍は目覚しかった。

画像: リアにエンジンを搭載しているとは思えない流麗なシルエットのリアビュー。

リアにエンジンを搭載しているとは思えない流麗なシルエットのリアビュー。

リアエンジンの特徴である、オーバーステア気味の操縦特性はかなり顕著だったし、高速での直進安定性にはやや問題はあったものの、ラック&ピニオン式のステアリングシステムはシャープなステアリングレスポンスを示し、またサスペンションにしてもロールを十分におさえた設定となっており、そのハンドリングはきわめてユニークなものがあった。

価格は85.8万円と、フェアレディ1500(88万円)よりわずかに低く設定されていたが、ウッドパネルのインストルメントパネルなど内装にも行き届いた配慮がなされ、スポーツタイプである以上に、日本で初めてのスペシャリティカー的な性格を備えたモデルとして、特異な存在となっていた。
またDOHCエンジン搭載の計画もあったが、それは実現せず、日野コンテッサそのものも67年8月に生産終了となった。

スペシャリティカーというジャンルのなかった時代、このクルマの持つ独特のムードは日本車離れしていて、そのためか、オーナーの多くは医師、弁護士などのいわゆるインテリ層のお金持ちが多かったようだ。

動力性能では見るべきものはなくとも、この美しいスタイルに憧れたファンは多い。現在も愛好者のクラブが存在する。

画像: 当時のカタログ写真より

当時のカタログ写真より

昭和の名車のバックナンバー

コンテッサ1300クーペ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4150×1530×1340mm
●ホイールベース:2280mm
●重量:945kg
●エンジン型式・種類:GR100型・直4 OHV
●排気量:1251cc
●最高出力:65ps/5500rpm
●最大トルク:10.0kgm/3800rpm
●トランスミッション:4速MT
●タイヤサイズ:5.60-13 4PR
●価格:85万8000円

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