2002年にポルシェ初のSUV「カイエン」が登場してから今年で17年が経過した。いつの時代もスポーツSUVの頂点に君臨し続けてきたカイエンに新たな歴史が始まる。(Motor Magazine 2019年8月号より)
画像1: 【海外試乗】ポルシェ カイエンクーペは満を持して投入されたポルシェ初のSUVクーペ

親和性が高いポルシェとクーペフォルム

もはやSUVクーペというカテゴリーはニッチではない。率直に言って、2008年にBMW X6がデビューした時にはまさかこうなるとは思わなかったが、今ではそのBMWやメルセデス・ベンツなど多くのブランドがSUVクーペを設定し、いずれも好調な売れ行きを示している。それはSUVがすでに走破性や積載性から選ばれる存在ではなく、セダンやワゴンに代わる選択肢として定着していることを示しているとも言えるだろう。

ポルシェがカイエンのラインナップに新たにクーペを加えたのも、そんな状況を鑑みればまったく不思議なことではない。ましてポルシェとクーペフォルムは親和性が高く、またすでにマカンという、ひとまわりコンパクトなだけでなく、よりクーペライクなモデルが存在していることを考えれば、むしろ遅過ぎたとすら言うべきだろう。

ポルシェAGのセールス&マーケティング担当者に話を訊くと、計画自体はもっと早い段階からあったという。しかし、モデルライフ途中ではなく、その設定を前提に開発されたモデルから投入したいと考えた結果、このタイミングになったのだそうだ。そして、おそらくカイエンの販売の3割がクーペになるだろうと見込んでいるという。

画像: クーペ投入を前提に開発が行われていたカイエン。

クーペ投入を前提に開発が行われていたカイエン。

緻密に計算されたフォルム後席の快適性も十分に確保

まさに開発当初からその設定を前提としていたらしく、クーペフォルムはまったく違和感なくまとめられている。もちろん、それは単に全高を下げ、リアゲートを寝かせただけでなく、細かな部分まで配慮が行き届いたデザインのおかげでもある。

たとえばフロントウインドウは実はカイエンよりほんの1度だけ傾斜が強められている。一方、真横から見るとリアゲートの傾斜角は実は思ったほど大きくはないことに気づく。カイエンクーペはガラスルーフを標準とすることで、ルーフのボディ色の部分を薄く見せ、さらにルーフ後端に固定式スポイラーを装備することで、クーペらしさを演出している。

さらに、カイエンにはないアダプティブリアスポイラーの採用によってデッキ高を下げたことも奏功し、見事そのフォルムにカイエンとは異なる伸びやかな印象を与えているのである。

車体後半の外板パーツは、カイエンとはほぼ別物になっている。フェンダーラインも違っていて、それに合わせてトレッドは28mm拡大されている。これもまたロー&ワイド感の強調に繋がっているのは間違いない。

室内で大きく異なるのは、クーペではリアシートは2人がけが標準、3人がけは無償オプションとなることだ。また、低い全高に合わせて、着座位置も下げられている。フロントは座面を薄くすることで約1cm、リアはスライド機構を省くなどして約3cm低くなっており、おかげで居住性にはまったく不満を感じることはなかった。荷室容量は減っているが、このスタイリングのためなら納得できる。そもそも、これはクーペなのである。

グレードはカイエンと同じく3種類。3L V型6気筒ターボエンジンを積むカイエンクーペに、やはり2.9L V型6気筒のツインターボエンジンを積むカイエンSクーペ、そして4L V型8気筒ツインターボエンジンを搭載するカイエンターボクーペが用意される。

今回は、そのすべてのモデルのハンドルを握ることができた。ただし、いずれも本来はターボのみ標準装備のエアサスペンションや、リアホイールステアなどが装着されていたということを、予めお断りしておく。

走りの基本的な印象にカイエンとの大きな差はない。快適性が高く、フットワークは上質。気持ちの良い走りを楽しめる。ハードウェアとしては、前述のとおりリアのトレッドが拡がっており、また開口部が大きく、複雑なリンク機構を持つリアゲートを採用することもあり、車重がやや重くなっているという。

それに合わせて全車に標準装備とされたPASM(ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム)はセッティングに微調整が施され、アンチロールバーの径も拡大されているが、フィーリングとして明らかな差を体感できるものではない。むしろ影響が大きいのは着座位置が下がったことの方で、心なしか身のこなしがスッキリ軽快に感じられるのだ。

画像: カイエンターボ クーペ搭載の4リッターV8DOHCツインターボエンジン。

カイエンターボ クーペ搭載の4リッターV8DOHCツインターボエンジン。

カイエンクーペを選ぶならやはりSとターボを勧めたい

ベースグレードのカイエン クーペでも最高出力340psとスペック的には十分で、不満なく走りを満喫できる。しかしながら、そこから最高出力が440psに高まるカイエンS クーペに電子制御式デファレンシャルのPTV(ポルシェ・トルク・ベクトリング)を装備した仕様に乗り換えたら、さらに濃密な走りの実感に思わず小躍りしそうになった。エンジンはトップエンドまで爽快に吹け上がって切れ味がいいし、コーナリングもよりリニアリティが増していて、ワインディングロードが楽しい1台に仕上がっていたのである。 

これで満足……という思いを、さらに揺さぶったのが最高出力550psという垂涎のパフォーマンスを誇るカイエンターボ クーペに、クーペだけのオプションとして設定されたライトウェイトスポーツパッケージ(LSP)を装着した仕様だ。LSPはルーフがガラス製の代わりに軽量なCFRP製とされる他、22インチ鍛造ホイール、専用の内外装パーツなどを組み合わせたもので、カイエンクーペ全車で選択できる。

トルクが分厚く、しかもそれが低回転域からトップエンドに至るまで淀みなく続く圧倒的な力感は、さすがに刺激的。しかもLSP付きでは遮音材が一部省かれ、スポーツエキゾーストのサウンドが一層強調されるから、ついついアクセルペダルに乗せた右足に力が入ってしまう。

フットワークも盤石の安心感を抱かせながらもLSPのおかげもあってか軽快感が増していて、シーンを選ばず楽しめた。ベースグレードでもいいが、選ぶならSかターボだろう。LSPはマストというのが自分なりの結論である。

すでに発表済みの日本での価格は1115万円から。カイエンは976万円から買えるが、PASMやスポーツクロノパッケージ、ガラスルーフ等々、標準装備が増えていることを考えれば、純粋にルックスの違いによる価格の差はそれほど大きくないと言っていいだろう。ちょっと違ったカイエンがほしいというなら、そしてもちろん、このルックスが気に入ったならば、選ぶ意味や価値は十分あるモデルだと言えそうだ。(文:島下泰久)

画像: センターコンソールの12.3インチのタッチスクリーンはポルシェ コミュニケーション マネジメントの情報などを表示する。

センターコンソールの12.3インチのタッチスクリーンはポルシェ コミュニケーション マネジメントの情報などを表示する。

■ポルシェ カイエンターボ クーペ主要諸元

●全長×全幅×全高=4939×1989×1653mm
●ホイールベース=2895mm
●車両重量=2200kg
●エンジン= V8DOHCツインターボ
●排気量=3996cc
●最高出力=550ps/5750-6000rpm
●最大トルク=770Nm/2000-4500rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速AT
●車両価格=1974万円

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