〝稲妻〟パワーでカッ飛ぶハードマシン
トヨタ カローラレビン 1600:昭和47年(1972年)3月発売
かつて若者を魅了するライトウエイト•スポーツの代表だったのが、カローラ/スプリンターをベースにしたレビン/トレノだ。
レビン/トレノは、2代目の20型カローラ/スプリンターのときに誕生した。ネーミングはカローラレビン(TE27MQ)とスプリンタートレノ(TE27MB)で、マニアからは27レビン(トレノ)と呼ばれている。
その母体となったのは、カローラのクーペモデルである1400SRだ。丸味を帯びたセミファストバック スタイルを採用し、コンパクトなボディながら存在感がみなぎっている。
しかもレビン/トレノはFRP製のオーバーフェンダーと175/70HR13のラジアルタイヤで武装した。フロントマスクもスパルタンなムード満点だ。
ちなみにレビンとトレノでは、フロントマスクやリアコンビネーションランプなどのデザインが異なり、トレノのほうが全長で15mm長くなっている。
レビン/トレノでもっとも目をひくのはパワーユニットだ。その心臓にはセリカ1600GTやカリーナ1600GTに積まれていた2T-G型DOHCが選ばれた。
1400SRなどに搭載されているT型4気筒 OHVをベースに、ボアを5mm拡大し、これにアルミ合金製のDOHCヘッドを載せたものである。
精度の高い低圧金型鋳造法で成形されたクロスフローの半球形燃焼室をもち、全域にわたってシャープに吹け上がる高感度なエンジンだ。
ボア85.0×ストローク70.0mmで、排気量は1588ccになる。これにソレックス40PHHキャブを2基装着した。圧縮比は9.8のハイコンプレッションだ。性能的にも当時としてはトップレベルとなり、最高出力は115ps/6400rpm、最大トルクは14.5kgm/5200rpmを発生する。
また、レビン/トレノには圧縮比を8.8に落とし、レギュラーガソリンの使用を可能にしたモデルも設定されている。こちらは110ps/14.5kgmと、5psと0.5kgm低いスペックだ。
レビン/トレノの特徴のひとつは、軽量かつコンパクトなボディだ。カローラレビンは855kg、スプリンタートレノは865kgと、セリカと比べて100kgも軽い。
パワーウエイト•レシオは、7.43kg/psになるが、これは当時としては画期的な数値である。トランスミッションは1400SRのものと同じだが、DOHCパワーを効率良く引き出すために、ファイナルギアを4.300とした。オプションでリミテッド•スリップ•デフも用意されている。最高速度は190km/h、0→400m加速は16.3秒の俊足を誇った。
サスペンション形式は、他のカローラと基本的に同じである。フロントはマクファーソンストラット/コイル、リアはリーフスプリングによるリジッドアクスルを採用した。しかしながらダンパーやスプリングは格段に引き締められ、ハードなセッティングとなっている。
インテリアもスパルタンムード一色のレイアウトだ。タコメーターとスピードメーターを中心にした凄みのある6連メーターや本革巻きのスポーツステアリング、バケットタイプのフロントシート、フットレストなどを標準装備する。快適性よりも走りを満足させるためのインテリアと言えるだろう。
レビン/トレノは昭和47年(1972年)3月にベールを脱いだ。それから5カ月にしてフェイスリフトを受け、一段と逞しく生まれかわる。フロントグリルは立体的な造形となり、リアコンビネーションランプも、より端正で視認性の良いデザインに改められた。
レビン/トレノがデビューしたときの衝撃は筆舌に尽くしがたい。高性能モデルは数多く存在したが、これほど安価に、高いポテンシャルを発揮するクルマはなかった。セリカと比べて粗さが目立ったが、走り屋にとっては逆に大きな魅力となった。このジャジャ馬を乗りこなすことを喜びとする者が、レースやラリーで豪快な走りを見せてくれた。
カローラレビン 1600 主要諸元
●全長×全幅×全高:3945×1595×1335mm
●ホイールベース:2335mm
●重量:855kg
●エンジン型式・種類:2T-G型・直4 DOHC
●排気量:1588cc
●最高出力:115ps/6400rpm(110/6000)
●最大トルク:14.5kgm/5200rpm(14.0/4800)
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:175/70HR13
●価格:81万3000円