7月16日の発表以来、話題沸騰の「新型スカイライン」。巷では最新の運転支援システム「プロパイロット2.0」が脚光を浴びている一方、往年のスカイライン・ファンから熱い視線を注がれているのが405psエンジンを搭載する「400R」。今回は、史上最強を謳う400Rのディテールに迫る。
GTグレード比でおよそ125万円の価格差。何が違うのか?
今回のラージマイナーチェンジで、ガソリン車は全車3リッターV6エンジンを搭載することになったスカイライン。話題のプロパイロット2.0はハイブリッド系グレードにしか装着できないので、あえてガソリン車を選ぼうという人は、よりアクティブな走りを期待してのことだろう。
さて、同じ3リッターV6を積むガソリン車でも、「GT」「GT Type P」「GT Type SP」のエンジン出力は224kW(304ps)、一方「400R」は298(405ps)。エンジンの形式はともに『VR30DDTT』である。どちらもシリンダーブロックにはGT-Rで採用されたライナーレス鏡面加工(ミラーボアコーティング)が施され、レスポンスを飛躍的に高めた高回転型小径ターボを組み合わせている。圧縮比も共通(10.3)で、電動VTC(可変動弁システム)も採用されている。
では、およそ100psもの違いはどこから生まれるのか。その秘密はターボチャージャーにかかる過給圧にある。GT系のそれは9.5psi(psi=重量ポンド毎平方インチ)であるのに対し、400Rは14.7psiと大幅に高められているのだ。
もちろん、まったく同じデバイスのままこれだけの高過給をすれば、タービンの過回転を招きさまざまなトラブルが発生する。日産はこの問題を解決するため、400R専用のターボ回転センサーを用いて緻密に監視するシステムを開発した。
これによって小径タービンでありながらその能力を限界領域までフルに引き出しているのだ。さらに強化ウオーターポンプを採用した水冷インタークーラーを2個採用する(GT系は1個)など、出力とレスポンスの向上に、さまざまな専用テクノロジーが投入されている。
VR30DDTT主要諸元 <>内は400R
●種類:DOHC・筒内直接燃料噴射V型6気筒
●ボア×ストローク:86.0×86.0mm
●総排気量:2997cc
●圧縮比:10.3
●最高出力:224kW(304ps)/6400
<298kW(405ps)/6400>
●最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1600-5200
<475Nm(48.4kgm)/1600-5200
●使用燃料:無鉛プレミアム
●WLTC1モード燃費:10.0Km/L
フットワークにも違い〜専用スポーツサスと電子制御ショック
新型スカイラインはハイブリッド車を含め全車に「ダイレクトアダプティブステアリング」が標準装備されている。いわゆるステアバイワイヤで、ステアリングとホイールは機械的に連結されておらず、電気信号で操舵を行う先進技術だ。
ハイブリッド車は比較的ラグジャリーな味付け、ガソリン車はよりスポーティなチューニングとなっているが、400Rではさらにスポーツサスペンションとインテリジェントダイナミックサスペンション(電子制御ショックアブソーバー)を標準で組み込むことで、俊敏でダイレクト感あふれるハンドリングとプレミアムスポーツセダンに相応しい乗り心地を両立している。
405psの高出力を受け止めるブレーキも専用だ。GT系は、キャリパーがフロント2ポッド対向/リアはシングルピストン、ディスク径はフロント12.6インチ、リアが12.1インチ。対して400Rはキャリパーがフロント4ピストン、リアが2ピストン、ディスク径はフロント14インチ、リア13.8インチだ。ストッピングパワーも大幅に高められている。
ちなみにホイールサイズは前後とも19×8.5J、タイヤは245/40RF19(ランフラット)となる。ちなみに同サイズのタイヤ&ホイールは、ガソリン車/ハイブリッド車とも最上級グレードのGT Type SPに標準装備、他グレードでもオプションで装着可能だが,400Rのそれはガンメタ塗装、他はアルミ切削高輝加工だ。
そのほか、専用ブラックインテリアとアクセントのレッドステッチ、専用デザインのパワーシート等など、400Rならではの専用装備は数多い。それを勘案すると、552万3120円という車両本体価格は存外のバーゲンプライスなのかも知れない。