ターボ旋風に吹かれて、ついにREもターボ化
マツダ コスモ2ドアHT ロータリーターボ:昭和57年(1982年)8月発売
初代コスモスポーツは国産初のロータリーエンジン搭載スポーツカーとして大いに脚光を浴び、そしてしばし間を置いて登場した2代目モデルは、ロータリーエンジン搭載のスペシャリティカーとして、高級志向の高まった市場で大成功を収めた。そしてその後を引き継ぐ形で昭和56年(1981年)9月のフルモデルチェンジによって登場したのが、この3代目モデルである。つまりコスモという名前を冠する以上、ステータス的にも営業的にも、極めて大きな期待をかけて送り出されたクルマというわけだ。
しかし生産設備などの都合から、デビュー当初はバリエーションが非常に少ない状態でスタートしなければならなかった。ボディは2ドアと4ドアのHT(ハードトップ)、そして4ドアサルーンという3種類が用意される予定だったが、デビュー時に発表されたのは2ドアHTのみ。4ドアHTと4ドアサルーンは、このとき双子車関係となったルーチェとともにお披露目されることになった。
また、ボディバリエーション以上にファンをがっかりさせたのは、ロータリーエンジン搭載モデルが設定されていなかったことだった。搭載していたのはMA型というレシプロの2Lのみ。最高出力はEGI仕様でも120ps/5500rpmで、13Bパワーにものを言わせていた2代目モデルの元気の良さに比べると、かなり寂しい状態だったのである。
ただしボディデザインは、マツダの意気込みの強さが伝わってくる斬新なものだった。思いきりウエストラインを下げて広いグラスエリアを確保し、フロントには角4灯のリトラクタブルヘッドランプを装着。スタイリッシュでありながらも、強烈な個性を持った外観を作り上げていた。
寂しかったバリエーションも、デビユー後1カ月で4ドアHTと4ドアサルーンが追加されて賑やかになった。またエンジンも1.8Lや2.2Lディーゼルに加えて、ロータリーも追加され、ようやくコスモらしいラインアップを形成したかに見えた。
しかし、ここでもコスモファンとっては悲しい現実が待ちかまえていた。追加搭截されたロータリーエンジンはパワフルさで定評があった13Bではなく、排気量の小さい12Aだったのだ。それも省エネ対策が施された6PIタイプ。数値的には130ps/7000rpmを発生してはいたが、牙を抜かれてしまったような頼りないフィーリングだった。
また皮肉なことに、マツダとしては初採用のセミトレーリングアーム式リアサスペンションを含め、シャシまわりの完成度が非常に高く仕上がってしまったのが、よりー層アンダーパワー感を強める結果にもなってしまった。
翌1982年にもなると、気持ちの良い走りを求めて買い替え待ちをしているユーザーの我慢もいよいよ限界に達するが、夏になってようやくコスモの名に恥じないハイパフォーマンスモデルが投入されることになった。それが、ここで紹介するコスモREターボである。
ベースエンジンは相変わらず573cc×2ローターの12Aだったが、6PIではない4ポートのハウジングを採用。それに日立製のターボチャージャーを組み合わせた新パワーユニットは、160ps/6500rpmの最高出力と23.0kgm/4000rpmの最大トルクを発生した。
このターボエンジンの採用によって、コスモの動力性能は一躍国産車トップクラスに躍り出た。Cd=0.32という低い空気抵抗係数に加えて、この種のスペシャリティとしては前面投影面積も小さく、最高速度は当時としては最速の213.33km/hをマーク。0→400m加速は15.73秒だった。デビューから2年を経て、やっとコスモという由緒ある名前を引き継ぐにふさわしい性能を手に入れたわけだ。
1983年10月のマイナーチェンジでは、12Aターボは165psへとパワーアップ。それと同時に13Bロータリーが、動的過給型吸気方式のスーパーインジェクションを採用し、160psの最高出力でカムバックを果たしている。
マツダ コスモ2ドアHTターボ リミテッド 主要諸元
●全長×全幅×全高:4640×1690×1340mm
●ホイールベース:2615mm
●重量:1205kg
●エンジン型式・種類:12A型・直2ローター+ターボ
●排気量:573cc×2
●最高出力:160ps/6500rpm
●最大トルク:23.0kgm/4000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:195/70SR14
●価格:241万2000円