いよいよ開幕した東京モーターショー2019。一般公開を控え、Webモーターマガジン編集部が注目の出品車の真相と深層に迫る。まずはEVコンセプトカーを2台同時に出品した日産の事情を前編・後編に分けてお届けしよう。

2022年度までに国内発売される新型EVは3台だが・・・・

結論から先に言ってしまえば、今回の日産ブース雛壇に鎮座する2台のEVコンセプトカー(「アリア コンセプト」と「IMk」)は、今後2年以内に順次発売される。もちろん、市販に際してはサイズも含めて現実的な変更が加えられるのは言うまでもない。

画像: ステージ上に展示される2台のEV。ピュアコンセプトカーではなく、2年以内に“市販一歩手前”のコンセプトカーだ。

ステージ上に展示される2台のEV。ピュアコンセプトカーではなく、2年以内に“市販一歩手前”のコンセプトカーだ。

日産は2017年度に新6カ年計画「NISSAN M.O.V.E. to 2022」を発表、翌2018年4月には同中期経営計画に基づく国内市場の事業計画を発表している。その中に注目すべき一文がある。

「2022年度までに新型EV3車種、e-POWER搭載車5車種を発売する…」。

この新型EV3台のうち2台はまったくの新型車で、グローバル販売されるクロスオーバーカーと日本市場向け軽EVであることが明らかにされている。そして、いよいよこの2台の発売が迫り、今回の東京モーターショーで実車のイメージを再現したコンセプトカーが公開されたというわけだ。

では、編集部の独自情報も交えながら、「アリア コンセプト」から深掘りしていこう。

「アリア コンセプト」は圧倒的なパフォーマンスを備え、2020年度内に日本から順次発売開始

アリア コンセプト(以下、アリア)の存在は、すでに前回の東京モーターショー2017でも暗示されていた。「IMx」と名付けられたクーペライクなクロスオーバーがそれで、前後にハイパワーモーターを搭載し、EV専用に開発される新プラットフォームが採用されることを想定していることが謳われていた。ちなみに前後モーターを合わせたシステム最大出力は320kW(約435ps)、最大トルクは700Nm。出力はともかく、最大トルクではGT-R(=637Nm)を大幅に上回る。一充電あたりの走行距離は600km以上とアナウンスされていた。

画像: 2017年の東京モーターショーに出品された電動4WDのコンセプトカー「IMx」。

2017年の東京モーターショーに出品された電動4WDのコンセプトカー「IMx」。

今思えば、当時はまだデザインは決定されておらず、パワートレーンも開発途上であったはずだ。あれから2年、そろそろ市販スペックも決定しているはずだが、なぜか今回はボディサイズのみでパワートレーンに関するアナウンスはない。

ところが東モのプレスデー翌日(10月23日)に新たな情報がもたらされた。10月中旬に一部のジャーナリスト/メディアに向けて次世代電動駆動4輪制御技術の先行開発車が公開されていたのだ。IMx同様、テスト車は前後にモーターを搭載する4WD。システム最大出力227kW(約308ps)、最大トルク680Nmである。前後モーターは緻密な制御により、圧倒的な加速性能とともにブレーキとの協調制御によるトルクベクタリング機能も盛り込まれ、卓越したハンドリング性能をも実現しているという。この情報が公開されたタイミングから考えても、このパワートレーンと4輪制御技術がそのままアリアに搭載されることはほぼ間違いないと言っていいだろう。パワートレーンのスペックはIMxより大人しくなったものの、それでも“本格スポーツカー”に迫るスペックである。

画像: 10月中旬に一部メディアやジャーナリストに披露された電動駆動 4輪制御技術の先行開発車。Cセグメントのリーフがベースで全幅が拡大されているところから、アリアの先行開発車も兼ねている可能性が大!

10月中旬に一部メディアやジャーナリストに披露された電動駆動 4輪制御技術の先行開発車。Cセグメントのリーフがベースで全幅が拡大されているところから、アリアの先行開発車も兼ねている可能性が大!

画像: 可変トルク4WD。前後のモーターには統合制御によるトルクベクタリング機能が盛り込まれる。アリアにも採用される可能性が高い。

可変トルク4WD。前後のモーターには統合制御によるトルクベクタリング機能が盛り込まれる。アリアにも採用される可能性が高い。

市販車のボディサイズはCセグメント、イメージはコンセプトカーを踏襲

コンセプトカーのサイズは、全長4600mm×全幅1920mm×全高1630mm。市販車のサイズが気になる。そこで関係筋に聞いたところ「このままではありません。いわゆるCセグメントの範疇に収まるサイズとしか言えませんが、新EVプラットフォーム採用によるフロアのフラット化で、室内はひとクラス上のDセグメントに匹敵する広さを実現しています」とのこと。またエクステリアについても、「デザインの特徴は全部コンセプトカーに盛り込んであります」と語った。

実はアリアには兄弟車が存在する。しかも、アリアより早く発売される可能性が高い。それが「インフィニティQX55」だ。日産が北米で展開する高級車ブランド=インフィニティに新たに加わるブランド初のEVで、スポーツクロスオーバーの先駆車でもあったインフィニティFXの事実上の後継車となるCセグメントカーだ。詳細は不明ながら、今年8月に米カリフォルニアで開催されたペブルビーチ・コンクールデレガンス2019で2020年夏の発売が予告されている。

画像: 今年8月に米カリフォルニアで開催されたペブルビーチ・コンクールデレガンスで発表された「インフィニティQX55」のブラッシュストローク。クーペライクなルーフラインなどアリア コンセプトとの共通点が見いだせる。

今年8月に米カリフォルニアで開催されたペブルビーチ・コンクールデレガンスで発表された「インフィニティQX55」のブラッシュストローク。クーペライクなルーフラインなどアリア コンセプトとの共通点が見いだせる。

ともあれ、すでにアリアの完成度は相当なレベルにあることは間違いない。上述のインフィニティQX55が来年夏の先行発売、アリアは同年秋〜初冬に日本を皮切りに順次海外にも発売される見込みだ。

近日公開の後編では、もう1台のEV「ニッサンIMk」の深層を深掘りしていく。

This article is a sponsored article by
''.