2019年11月3日に行われたF1第19戦アメリカGPで、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンは優勝争いを展開したがイエローフラッグに阻まれて惜しくも3位に終わった。一方、トロロッソ・ホンダの2台は最後の最後にポイントを失う悔しい結果となった。その戦いぶりとともに、4人のドライバーのコメントをレポートする。(タイトル写真はアメリカGPのスタート)

フェルスタッペンとメルセデスAMGのふたりが緊迫した戦いを展開

アメリカGPはスタートしてしばらくすると、メルセデスAMGの2台とレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンの戦いになることが明らかになった。フェラーリの2台はこの戦いについていけず、レッドブル・ホンダのアレクサンダー・アルボンはスタート時の接触で大きく後退していた。

まずポールポジションのバルテリ・ボッタス(メルセデスAMG)が好スタートを切ってレースをリード。予選3位のフェルスタッペンはスタート直後にセバスチャン・ヴェッテル(フェラーリ)をオーバーテイク、2番手に上がって激しくボッタスを追う。ハミルトンはフェルスタッペンから少し離れた3番手につける。

メルセデスAMGの2台はフェルスタッペンを完全にマーク。フェルスタッペンが13周目にピットインしてミディアムタイヤからハードタイヤに履き替えると、すぐさまボッタスもハードタイヤに交換して逆転を阻止。34周目にフェルスタッペンが2度目のタイヤ交換を行い再びミディアムタイヤに履き替えると、その1周後にボッタスも同じようにミディアムタイヤを交換して、またもやアンダーカットを許さない。

ボッタスがフェルスタッペンとタイヤ交換のタイミングをあわせてリードを守る一方で、チームメイトのルイス・ハミルトンは最初のスティントを長くとって1ストップ戦略がとれる体制に切り替えた。両面でフェルスタッペンを抑え込もうという作戦だ。

フェルスタッペンはレース終盤、1ストップで前方を走るハミルトンを追撃。残り2周でハミルトンをオーバーテイクできるところまで来たが、追い越しポイントであるターン12がマグヌッセンのストップによりダブルイエローとなってしまい、順位を変えることはできず、結局フェルスタッペンは3位でレースを終えた。

それでもメルセデスAMGと互角に戦っての3位表彰台獲得に、フェルスタッペンの表情は晴れやかだった。

対照的に、レッドブル・ホンダのアレクサンダー・アルボンは難しいスタートを切ることになった。1周目の1コーナーでシャルル・ルクレール(フェラーリ)とカルロス・サインツ(マクラーレン・ルノー)の間に挟まれる形となって接触、マシンのダメージ修復のためすぐにピットストップを行い大きく後退することになる。

思わぬピットストップでいきなりミディアムタイヤに変更したアルボンは、22周目に再びピットインを行い同じコンパウンドのタイヤに履き替え再びコースに復帰。3ストップとなってしまったものの、最後のスティントでソフトタイヤを履き、数々のオーバーテイクを繰り広げ、最終ラップで5番手まで順位を上げた。

トロロッソ・ホンダのピエール・ガスリーは、10番グリッドから2台のマクラーレンのマシンの間を割って7番手まで順位を上げ、1回目のピットストップではサインツの後ろでコースに復帰。1ストップ戦略でポイント獲得が見えていたが、 セルジオ・ペレス(レーシングポイント)との接触によりサスペンションにトラブルが発生したため、最終ラップで惜しくもリタイアとなった。

一方、ハードタイヤでスタートしたダニール・クビアトは、1回目のピットストップに時間がかかり後退したものの、残り17周でソフトタイヤへ変更して10番手でチェッカーを受けた。しかし、最終ラップのターン15でのペレスとの接触がペナルティとなり、5秒タイム加算されて12位に降格となった。

F1第19戦アメリカGP決勝 結果

優勝 77 V.ボッタス(メルセデスAMG)56周
2位 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG)+4.148s
3位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)+5.002s
4位16 C.ルクレール(フェラーリ)+52.239s
5位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)+78.038s
6位 3 D.リカルド(ルノー)+90.366s
7位 4 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)+90.764s
8位 55 C.サインツ(マクラーレン・ルノー)+1周
9位 27 N.ヒュルケンベルグ(ルノー)+1周
10位 11 S.ペレス(レーシングポイント・メルセデス)+1周

12位 26 D.クビアト(トロロッソ・ホンダ)+1周
リタイア10 P.ガスリー (トロロッソ・ホンダ)

ホンダの田辺豊治F1 テクニカルディレクターは、アメリカGPを終えて「レッドブルのフェルスタッペン選手が確実な走りを見せ、予選ポジションをキープする形で3位表彰台を獲得しました。ラスト2周で出たイエローフラッグがなければ2位のポジションも見えていただけに、悔しい部分もありますが、週末を通して安定した速さがあったと思います。また、チームメートのアルボン選手もスタート時の残念な接触により最後尾まで順位を落としながらも5位まで順位を挽回する力強い走りを見せてくれました。トロロッソでは、ガスリー選手終始ポイント圏内を走行していたものの、惜しくも最後に2台ともポイントを逃すことになり残念に思っています」とコメントしている。ホンダの4人のドライバーはレース後次のように語っている。

マックス・フェルスタッペン

画像: マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。予選3位、決勝3位。

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。予選3位、決勝3位。

「僕たちにとってはポジティブな週末で、3位でフィニッシュできたことをうれしく思っています。最後の数周でのイエローフラッグによって不利を被った部分があり、あればがなければ2位でフィニッシュできたと思っています。レース後に、フロアの一部が大きくダメージを受けていたことに気づいたのですが、それがなければライバルに対してもっと戦えていたのではないかと思うと残念です。いいスタートを決めてそのあとはボッタス選手についていこうとしましたが、彼らの方が全体的にペースがよかったようですし、マシンのダメージも考慮すると最終的に5秒差でフィニッシュできたことはいい結果でした。2ストップ作戦は正しい選択で、これが最速だと思うので、これ以外のストラテジーは考えられなかったと思います。ここのところ、いい形で前進ができていますし、またライバルとの争いに戻ることができたのではないでしょうか。ここからも難しい戦いになりますが、あきらめることはありません。ハミルトン選手の6度目の戴冠はとてもすばらしいと思います」

アレクサンダー・アルボン

画像: アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)。予選6位、決勝5位。

アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)。予選6位、決勝5位。

「今日は自身のベストを尽くす形で5位でフィニッシュし、僕にとって初めてのアメリカでの最終日を楽しむことができました。スタートはよかっただけに1コーナーでの接触には少しフラストレーションを感じました。もう一度確認する必要はありますが、両側を挟まれて明らかに行き場のなかったので難しい状況でした。これもレースの一つですが、結果的には縁石に乗り上げてフロアとフロントウイングにダメージを負いました。そこでピットインしなくてはならず、多くの時間を失ったためにいろいろな部分を妥協せざるを得なくてはなりませんでした。そうでなければ、ルクレール選手と4位を争うことができたかもしれないと思っています。普通のレースではなくなってしまいましたが、それでも最後尾から追い上げる形でオーバーテイクをいくつも決めることができたので楽しいレースでした」

ピエール・ガスリー

画像: ピエール・ガスリー (トロロッソ・ホンダ)。予選10位、決勝リタイア。

ピエール・ガスリー (トロロッソ・ホンダ)。予選10位、決勝リタイア。

「レースのほとんどをトップ10内で走行し、マクラーレンのマシンに劣らないペースで走れたので、いいレースができたと思います。終盤でセルジオ・ペレス選手とターン13で接触したためフロントの右サスペンションに不具合が発生してしまい、リタイアを余儀なくされてしまいました。バトル中にターン13でインを閉めたペレス選手のマシンが右フロントタイヤと接触しサスペンションが曲がってしまいました。大きな問題ではないと思っていたのですが、ポイントを獲得できずにレースを終える原因となりました。手応えを感じていたレースウイークでしたが、このような形でレースが終わってしまったことが残念でなりません」

ダニール・クビアト

画像: ダニール・クビアト (トロロッソ・ホンダ)。予選13位、決勝12位。

ダニール・クビアト (トロロッソ・ホンダ)。予選13位、決勝12位。

「難しいレースでした。ライバルたちと比べると、あまりいいペースとは言えなかったと思います。通常のレース時よりもタイヤの摩耗が大きかったので、原因がなにかを追求しなくてはなりません。しかし、問題がありながらも、最後は10番手でレースを終えられたことはポジティブに捉えています。少し荒々しかったかもしれませんがフェアなバトルであったはずですし、皆が観たいレースバトルであったと思います。今シーズン同じようなバトルを見せた他の選手がペナルティを受けていなかったので、今回のペナルティは納得のいかない結果となりました。モータースポーツにおいて必要なペナルティではなかったのではと、とても残念でなりません」

画像: アメリカGPの各ドライバーのタイヤ戦略。

アメリカGPの各ドライバーのタイヤ戦略。

ピレリタイヤはアメリカGPのレース結果について「アメリカGPではメルセデスAMGのバルテリ・ボッタスとレッドブルのマックス・フェルスタッペンが緊迫した戦術的な戦いを繰り広げました。フェルスタッペンはミディアム→ハード→ミディアムの2ストップ戦略をとりましたが、同じようなタイヤ交換を行ったボッタスの戦術的な戦いに封じ込められました。その一方で、ルイス・ハミルトンはふたりとは違う戦略をとり、完璧なタイヤ管理を必要とする1ストッパーで2位に入賞して6度目のタイトルを獲得しました。4位に終わったフェラーリのシャルル・ルクレールは3つのタイヤすべてを使用する異なる2ストップ戦略を採用、ソフトでの最後のスティントで最速のレースラップで追加ポイントを獲得しています。ルクレールの後ろでは、レッドブルのアレックス・アルボンが5位でフィニッシュしましたが、彼は唯一の3つのストッパーでした。上位6台には5つの異なる戦略がありました。アメリカGPではよくあることですが、さまざまな戦略が見られました」と分析している。

第20戦ブラジルGPは11月17日、サンパウロ郊外のインテルラゴス・サーキットで開催される。

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