1980年代のクルマといえば、ハイソカー、街道レーサー、そしてボーイズレーサーが人気を博していた。この連載では、ボーイズレーサーと呼ばれた高性能でコンパクトなハッチバックやクーペたちを紹介していこう。今回は「マツダ ファミリア(BD)」だ。

マツダ ファミリア 3ドアHB 1500XGi(BD型・1983年1月発売)

画像: EGI(インジェクション)仕様のエンジン搭載で、FFファミリアはパワーと足のバランスを得た。

EGI(インジェクション)仕様のエンジン搭載で、FFファミリアはパワーと足のバランスを得た。

FFファミリアの登場は1980年(昭和55年)の6月だった。当時マツダの技術者は「最後に出すFFだから・・・」と口を揃えて自信のほどを示した。

直線基調のスタイリッシュなボディのCd値は0.44。リフトを従来型より前輪で41%、後輪で51%抑えた空力的な造形で、欧州でも通用する高い直進安定性を実現した。サスペンションも、後方向への力がかかった時、後輪をトーイン方向に動かして直進安定性を向上させるSSサスペンションをリアに採用した。

さらにトップグレードの1500XGでは前後にスタビライザーを装着してロール剛性を高めた結果、開発ドライバーでマツダワークスのレーシングドライバーだった片山義美氏が「ケツ振らないから、ハンドル切る以外何もすることないんだもん、面白くないよ」と言うほどの高いコーナリング性能を実現した。

画像: EGI仕様となってリアコンビランプのデザインを変更。ボディ下部に黒いガーニッシュも装着された。

EGI仕様となってリアコンビランプのデザインを変更。ボディ下部に黒いガーニッシュも装着された。

新開発のE5型エンジンは、最高出力85psと最大トルク12.3kgmというパワースペック。先代のFRファミリア用1.4L(UC型)より全長と全幅を各70mm、全高を15mm小型化し、7.9kgの軽量化を実現して前軸荷重を抑えたのも、回頭性の向上に寄与した。何よりシャシに対してオーバーパワーでなかったことが、ハンドリングの素直さにつながったと言えるだろう。

1983年1月には、ここで紹介しているEGI仕様のXGiを投入した。最高出力は95ps、最大トルクは12.6kgmにアップしたが、最高出力のアップ幅は10psに抑えたので操安性の良さは損なわれず、高回転の伸びが増したことでパワーと足のベストバランスを得た。モーターマガジン誌のテストでは、最高速度は161.98km/h、0→400m加速は17.48秒を記録している。

画像: EGI仕様はハンドルが新形状になった。回転計のレッドゾーン表示はキャブ仕様と同じ6000rpmから。

EGI仕様はハンドルが新形状になった。回転計のレッドゾーン表示はキャブ仕様と同じ6000rpmから。

BD型FFファミリアは、洗練されたスタイル、広い室内、素直な操縦性が当時の若者のニーズに見事にマッチした。1980年代前半の街には赤いファミリアがあふれ「ボーイズレーサー」の呼称を生みだすほどの一大ブームを巻き起こしていく。

さらに1983年6月、E5ターボエンジンを搭載したターボXGおよびXG-Rが追加設定された。開発テーマは「総合性能を高次元でバランスさせた本格派のファッショナブルスポーツ」。最高出力115ps/最大トルク16.5kgmにパワーアップしたエンジンの高出力化に対応して、シリンダーヘッド/ブロック/クランクシャフトなど広範囲な仕様変更が図られている。また同時にドアミラーを標準化した。モーターマガジン誌のテストでは、最高速度は176.35km/h、0→400m加速は16.89秒を達成している。

画像: ターボエンジン搭載車は等長ドライブシャフトでトルクステアを消し、185/60R14タイヤを履かせて良好な操縦性を実現した。

ターボエンジン搭載車は等長ドライブシャフトでトルクステアを消し、185/60R14タイヤを履かせて良好な操縦性を実現した。

ボーイズレーサー伝

マツダ ファミリア 3ドアHB 1500XGi(1983年)主要諸元

●全長×全幅×全高:3955×1630×1375mm
●ホイールベース:2365mm
●重量:830kg
●エンジン型式・種類:E5型・直4 SOHC
●排気量:1490cc
●最高出力:95ps/5800rpm
●最大トルク:12.6kgm/4000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:175/70HR13
●価格:115万4000円

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