1980年代のクルマといえば、ハイソカー、街道レーサー、そしてボーイズレーサーが人気を博していた。この連載では、ボーイズレーサーと呼ばれた高性能でコンパクトなハッチバックやクーペたちを紹介していこう。今回は「バラードスポーツCR-X(AF)」だ。

ホンダ バラードスポーツCR-X(AF型・1983年7月発売)

画像: 初期型のヘッドランプは「まぶた」の付いたセミリトラクタブル式だったが、後期型では異形2灯の固定式となる。

初期型のヘッドランプは「まぶた」の付いたセミリトラクタブル式だったが、後期型では異形2灯の固定式となる。

S800を最後にFFに特化してきたホンダが、当時のFR信奉者に向け、FFでもスポーツできることを証明して見せたのが、1983年(昭和58年)6月に発表(発売は7月)されたバラードスポーツCR-Xだ。当時の軽自動車より50mm長いだけという2200mmの超ショートホイールベースと、車重800kgの身軽さを生かした走りは、FFライトウエイトスポーツと呼ぶにふさわしい切れ味を示した。ただし、ホンダが「デュエットクルーザー」と名付けたように、リアシートは定員4名とするための形だけ。2+2とも呼べないほど狭いものだった。

機構的には、1.5Lの3バルブSOHCにF1技術をフィードバックしたPGM-FIを組み合わせて最高出力110psを発生するEW型エンジンや、スポルテックと呼ぶフロント:ストラット・トーションバー/リア:トレーリングリンク式ビームアクスル・コイルのサスペンションなど、3カ月後にフルモデルチェンジするワンダーシビックを先取りした形だ。

画像: 重量増を嫌って、あえてSOHC3バルブを採用したEW型エンジンは1.5Lクラス最強の110psを発生した。

重量増を嫌って、あえてSOHC3バルブを採用したEW型エンジンは1.5Lクラス最強の110psを発生した。

しかし、シビックほどの量販が求められないため、CR-Xならではの実験的な挑戦が数多くみられた。そのひとつがフロントマスクやフロントフェンダーに世界初のH.P.アロイを、バンパーやロアスカートにH.P.ブレンドを使うなど、軽くて錆びないポリマー系樹脂素材を多用したことだ。車両前半部を重点的に軽量化することで、FFの宿命でもあるノーズヘビーを抑え、回頭性を高める効果があった。

画像: 1.5Lのサンルーフ仕様はカラード液晶デジタルメーターを採用して、先進性を訴求した。

1.5Lのサンルーフ仕様はカラード液晶デジタルメーターを採用して、先進性を訴求した。

ボンネット高を下げ、ボディ前後を強く絞り込み、ダウンフォースを得るリアエンド(クラウチングヒップ)を採用してCD値=0.33を実現したエアロライナーシェイプは高速直進性の向上に効いたし、世界初の電動アウタースライドサンルーフを開発したのも、天井の低いCR-Xならではのアイディアだった。

CR-Xは量販車シビックではできないチャレンジを現実のものにした、アドバンス スポーツでもあったのだ。

そして1984年10月(発売は11月)、CR-Xに待望の4バルブDOHCエンジンのZC型を搭載した「Si」が投入された。1.6L NA(自然吸気)エンジン最強の135psを発生するZC型は60kgの車重増をものともせず、モーターマガジン誌の実測データでは最高速度は197.00km/h(1.5iは182.65km/h)、0→400m加速は15.20秒(同16.19秒)と、1.5iに圧倒的な差をつけてみせたのだった。

画像: DOHCのZC型エンジンを搭載したSiは、ボンネットのパワーバルジが誇らしげだった。

DOHCのZC型エンジンを搭載したSiは、ボンネットのパワーバルジが誇らしげだった。

ボーイズレーサー伝

ホンダ バラードスポーツCR-X 1.5i(1983年)主要諸元

●全長×全幅×全高:3675×1625×1290mm
●ホイールベース:2200mm
●重量:940kg
●エンジン型式・種類:EW型・直4 SOHC
●排気量:1488cc
●最高出力:110ps/5800rpm
●最大トルク:13.8kgm/4500rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:175/70SR13
●価格:138万円

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