2005年8月30日に日本で開業したレクサス。まずは3モデルでスタートしたが、中でも注目を集めたのは、「インテリジェントスポーツセダン」としてスタートした「IS」だった。ここでは開業直前に明らかになったその詳細を改めて振り返ってみたい。その期待の大きさがよくわかるはずだ。(以下の記事は、Motor Magazine 2005年9月号より)

ボディサイズはアウディA4とほぼ同じ

いよいよ、その詳細が明らかになったIS。実際にそのアピアランスを見ると、厚みのあるアンダーボディにガラスエリアのコンパクトなキャビンを乗せていて、飛び切り精悍なイメージになっていた。

ボディサイズは全長4575×全幅1795×全高1430mm。これはアウディA4とほぼ同等。最新のBMW3シリーズはやや幅が広いものの、メルセデス・ベンツCクラスよりも格段に大きいという、現代欧州のDセグメントのど真ん中というディメンジョンである。

基本骨格のベースはクラウンにあるわけだが、ホイールベースは短縮されていて2730mm。ちなみにこれは3シリーズとCクラスのほぼ中間に位置する。

運動性能の向上に大きな効果があるとされるオーバーハングの短縮に関しては、ISよりも全長が短いのにホイールベースが長い3シリーズの方が徹底していると言えるが、見た目の凝縮感、もっと平たく言えば「走りそうな雰囲気」はISの方が色濃い。

特にそう感じさせるのがフロントまわりの造形だ。ボンネットからグリルに向かう大胆なVラインと、切れ長のヘッドライトで軽快さを醸し出す一方で、前後異サイズのタイヤを収めるフェンダーは大きく張り出している。しかも太いショルダーラインが後方に向けて強いウエッジシェイプを描いているから、非常に躍動感が強い。

こうした、かなり絞り込みの強いスタイルの上、サイドのグラスエリアも上下方向が狭い(前後方向に長いのはレクサスのデザインキューのひとつ)。それにフロントウインドウも高めのカウルトップと相まって上下方向に狭く、キャビン空間はそれなりにタイトな印象だ。

しかしそれでもリアシートの居住性などはキチンと考えられており、実用上十分な足下空間は確保されている。元来このくらいのサイズでFRとなるとパッケージが煮詰まってくるのは当然で、ISには3シリーズやCクラスに似た包まれ感があった。

ただし、トランクルームはちょっと小さめだ。容量は378L。ここはランフラットタイヤの採用でアンダーフロア収納も含め460Lの大容量を確保した3シリーズに一歩譲る。ちなみにランフラットはGSとSCには設定があるが、ISにはない。単に省スペースではなく、安全面にも効果のある装備なので今後に期待したいところだ。

画像: 「インテリジェントスポーツセダン」を謳って登場したレクサスIS。最先端の電子制御システムを搭載、知的なスポーツモデルを訴えていた。

「インテリジェントスポーツセダン」を謳って登場したレクサスIS。最先端の電子制御システムを搭載、知的なスポーツモデルを訴えていた。

318psのパワーを巧みにコントロールする

さて、走りに関するメカニズムにいこう。エンジンはクラウン譲りの2499ccガソリン直噴4GR-FSEと、GSと同じ3456ccD-4Sの2GR-FSEが搭載されている。組み合わされるのは全車ステアリングパドル付きの6速ATだ。

面白いのは2GR-FSEの出力がGSに搭載されているものとは異なる点で、何とさらにパワフルな318psとなっている。何が原因でこのような違いが出ているのかは現時点ではわからないものの、スポーツセダンとして上げられるものは少しでも上げるというスタンスなら恐れ入るばかりだ。

それにしても、いくらスポーツを標榜するとは言え、Dセグメントにいきなり300psオーバーの動力性能を与えてしまうのは大胆だ。数値だけを追うなら、これは欧州勢のスタンダードエンジンを越えてS4やM3、あるいはAMGといった高性能シリーズに迫るものである。

しかしもちろん、レクサスとしても野放図にハイパワーを与えたわけではない。2GR-FSE搭載のIS350は、ブレーキもフロント/334mm、リア310mmと、IS250に対し大幅に能力を向上させた。この効き味が実にシャープで、コントロール性、ペダルフィール共に良かったのは試乗で確認済みだ。

そしてさらに、VDIM(統合型走行安定システム)もIS350には標準装備となる。フィードフォワード制御により、車両が姿勢を乱し出す寸前から安定性制御を行うこの進んだメカがあるからこそ、318psという大パワーを躊躇なく設定できたのかも知れない。

ちなみにこのVDIMは電動パワステとの協調制御も行うが、VGRS(バリアブルギアレシオステアリング)を備えるGSとは異なり、アクティブにステアリングを切って姿勢制御をすることはない。ドライバーに安定方向のハンドル操作を知らせるトルクアシストを行うだけだ。

最後にISのグレード展開について説明しておこう。GSやSCは基本的にモノグレードなのだが、ISにはベースモデルを基本に、方向性の異なる2種類のパッケージが用意されている。

ひとつはバージョンL。これはいわゆる豪華仕様で、電動リアサンシェード、本木目のセンターコンソール&ドアアームレスト、セミアニリン本革シートといった、レクサスならではのアイテムが満載される。ちなみに最も高価なのがこの仕様だ。

もうひとつはバージョンSというスポーツ仕様。専用チューンのサスペンションを採用するほか、タイヤは17インチが標準に対して18インチ、ヌバック調表皮のスポーツシートとアルミペダルなどが装備される。

ただ、こうしたワイドバリエーション展開は、いかにも従来のトヨタ商法という感じがしてならない。まあ、欧州車にもこうした仕様設定はあるが、ISの場合は標準モデルがいきなり質素に感じるようなあからさまな差がある。たとえばステアリングのチルト&テレスコ調整が電動からマニュアルになったり、ドアミラーの防眩機能がなかったりといった具合だ。これってレクサスの「おもてなしの心」と、どう折り合いがついているのだろう。

さて、気になる価格だが、IS250の標準モデルが唯一390万円をつけるものの、後は事前の予想通りすべて400万円オーバー。IS350はベース仕様が480万円、バージョンSが495万円、バージョンLに至っては525万円という豪気さである。ちなみにこれはBMW325iと同じだ。価格面でも欧州勢と真っ向勝負はわかるが、だからこそ仕様設定は極力シンプルにすべきだ。「この装備が外れたからいくら安い」では、プレミアムも何もなくなってしまうだろう。(文:石川芳雄/Motor Magazine 2005年9月号より)

画像: ステアリングパドルシフター付シーケンシャルシフトマチックを全車標準装備するのがISの大きな特徴のひとつ。

ステアリングパドルシフター付シーケンシャルシフトマチックを全車標準装備するのがISの大きな特徴のひとつ。

ヒットの法則のバックナンバー

レクサスIS350(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4575×1795×1430mm
●ホイールベース:2730mm
●車両重量:1600kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3456cc
●最高出力:318ps/6400pm
●最大トルク:380Nm/4800rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:480万円(2005年当時)

レクサスIS250(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4575×1795×1430mm
●ホイールベース:2730mm
●車両重量:1570kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:2499cc
●最高出力:215ps/6400pm
●最大トルク:260Nm/3800rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FR
●車両価格:390万円(2005年当時)

レクサスIS250 AWD(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4575×1795×1445mm
●ホイールベース:2730mm
●車両重量:1640kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:2499cc
●最高出力:215ps/6400pm
●最大トルク:260Nm/3800rpm
●トランスミッション:6速A
T●駆動方式:4WD
●車両価格:425万円(2005年当時)

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