2代目Mクラス(W164)は2005年当時のメルセデス・ベンツの革新ぶりを示すモデルだった。一定の成功を収めていた初代の弱点を見つめ直し、市場が求めていたオールラウンドラグジュアリーへと進化。Motor Magazine誌では「新しいメルセデス」の姿をあらためて欧州で検証している。(以下の記事は、Motor Magazine 2005年10月号より)

販売好調なSUVのトレンドをキャッチアップ

北米および西ヨーロッパにおけるSUVの販売は相変わらず好調で、ヨーロッパメーカーのSUVモデルの生産台数を見ても、7月までの2005年の累計台数はBMW X3が7万4000台あまり、フォルクスワーゲン トゥアレグが5万2000台、ボルボXC90が5万8000台、ポルシェ カイエンも2万8000台近くを記録している。老舗のレンジローバーは3万1000台、レンジローバー スポーツも1万1000台を超えている。

北米で生産されるBMW X5やメルセデス・ベンツMクラスの数字は不明だが、西ヨーロッパでの販売台数を見ると、BMW X5が1万台、そしてメルセデス・ベンツMクラスが1万3000台というから、こちらもビジネスが良好なことは容易に想像がつく。

なぜ、西ヨーロッパでSUVがもてはやされるのかと言えば、ミニバンと同じようなユーティリティを持ちなら、ミニバンよりもずっとスポーティな雰囲気があるからのようである。

つまり(日本でも同じだと思うが)、カッコ良く乗りたいのである。もう少し具体的に言えば、リアシートに子供や姑が乗っているような生活臭の強いミニバンよりも、颯爽としていてヘビーデューティでスポーツイメージのあるSUVの方が受けが良いのだ。さらに、重くて空力特性が悪いといった欠点は、効率の良い高性能ディーゼルの登場やハイパワーなガソリンエンジンの搭載により、燃費やパフォーマンスに対する不満が消えたことで解消している。

こうしたトレンドを巧みに捉えて登場したのが(正確に言えば再登場したのが)メルセデス・ベンツMクラスである。

画像: 新たに開発されたサスペンションにより走行性能が格段に向上。とくにエアマチックサスの効果は絶大だ。オフロードスイッチ、ダウンヒル・スピード・レギュレーション、ヒルスタートアシスト、電子制御デファレンシャルロック、エクストラ・ローを設定し、本格的オフロードも難なくこなす。

新たに開発されたサスペンションにより走行性能が格段に向上。とくにエアマチックサスの効果は絶大だ。オフロードスイッチ、ダウンヒル・スピード・レギュレーション、ヒルスタートアシスト、電子制御デファレンシャルロック、エクストラ・ローを設定し、本格的オフロードも難なくこなす。

先代の弱点をすべて解消、ボディ構造はモノコックに

1997年、8年前にアメリカで初の生産を開始したメルセデス・ベンツのSUVは、彼の地における生産性を考えてラダーフレームの上にボディを構築するというクラシックな手法を採用していた。それにはまた初めての海外生産ゆえの品質面の課題を解消するという狙いもあった。

こうして、見事に生産性という課題を克服した先代Mクラスは累計生産台数65万台という記録を打ち立てたが、これはメルセデス・ベンツのブランド力と市場のニーズが合致したからに他ならない。メルセデス・ベンツの決断力が勝利したのである。

今回登場した新型Mクラスだが、結論を先に言ってしまえば、先代モデルの弱点をすべて解消し、現在のSUVに求められている性能、特にオンロード上の快適性能を高めたオールラウンドラグジュアリーに成長している。

新しいMクラスのデザインは、メルセデス・ベンツのもっとも得意な確信的キープコンセプト手法によるものである。つまり、全体的な雰囲気はどこから見ても見慣れたMクラスだが、ヘッドライトのグラフィックやグリルなどをよく見ると各部分は洗練され、時代に即したラインを形成しているのである。さらにインテリアは一段とグレードアップしており、これではオフロードに入るのがもったいないと思われるほど都会的に洗練されている。

さて2世代目Mクラスのもっとも大きな特徴は、全長4780mm(先代は4638mm)、全幅1911mm(1849mm)、全高1815mm(1820mm)、そしてホイールベース2915mm(2820mm)と、ひと回り大きく低くなったモノコックボディである。

この結果、ドライバーズシートはもちろん、リアシート周辺のスペース(特にショルダー部分)がゆったりとし快適性が大幅に向上している。

さらに、ホイールベースの延長はリアシートに大きな居住性を与えただけでなく、巨大なカーゴルームをも与えた。ここにはリアシートを標準の位置にした状態で515L、つまり大型サルーン並みのボリュームがあり、4人分の大型トランクが搭載可能である。

シートを前に倒すと2050Lと商用車も驚くほどの空間が誕生する。しかも、ゆったりした広さの空間にまったく無駄な場所はなく、カップホルダーをはじめとした実用的な小物入れはいたるところに発見され、大変重宝する。

画像: 先代よりも格段に質感が向上したインテリア。プレミアムSUV人気の火付け役となったMクラスは、2代目となってもこのセグメントのリーダーであることを誇らしげに主張しているかのようだ。プレミアム・サルーンを思わせるエレガントさとスポーティさが漂う。

先代よりも格段に質感が向上したインテリア。プレミアムSUV人気の火付け役となったMクラスは、2代目となってもこのセグメントのリーダーであることを誇らしげに主張しているかのようだ。プレミアム・サルーンを思わせるエレガントさとスポーティさが漂う。

ドライバビリティでライバルより一歩先んじた

テストしたのは306ps、460Nmを発生する5L V8エンジンを搭載したML500。このエンジンは7Gトロニック(7速AT)と組み合わされ、パワーは電子制御多板クラッチによって前後輪に振り分けられる。

キーレスゴーによりスターターボタンで目覚めたV8エジンは極めて静かだ。わずかにアイドリングを行っているのがわかるのは、タコメーターの針が800rpmあたりで止まっているからだ。新たにステアリングポストに設けられたギアセレクトレバーはBMW 7シリーズを彷彿とさせるもので、下に引くとDレンジにエンゲージする。

空車重量2.1トンの巨体にもかかわらず、加速は軽快で、メーカー公表値の0→100km/h加速6.9秒は間違いなさそうだ。ちなみに最高速度は240km/h。この性能を約束するのが新型Mクラスに新たに採用されたサスペンションで、フロントはダブルウイッシュボーン式、リアには4リンク式が採用され、オンロードでの追従性向上を目指している。

またこの種のクルマなると、スキーツアーなど山間のアップダウンの多い峠道を走ることが想定される。そこで驚くのが、新型Mクラスに与えられたシャシのスポーツ性である。ラック&ピニオン式ステアリングはクイックで、といってナーバスではなく、正確な追従性を実現している。

もちろん山間部へ入り込めば、エクストラロー、あるいはダウンヒルアシストなどのオフロードデバイスが活躍する。

2代目Mクラスは8年間の経験とノウハウを積み重ねて、現代が要求する近代的なSUVとして生まれ変わった。先代モデルの持っていたやや武骨とも言えるオフローダー然とした存在感はやや薄れたが、代わって都会的に洗練された使いやすいSUVとなったのだ。

日本市場には、ポルシェ カイエン、BMW X5、ボルボXC90、フォルクスワーゲン トゥアレグ、そしてレンジローバーなど、ライバルがひしめいている。しかし、メルセデスベンツMクラスは、オン・オフ性能、市街地での快適性、高速道路での走行安定性など、様々な場所における総合的なドライバビリティで、さらに、使いやすさ、品質の高いインテリアなどで、他モデルよりも先んじた。ドイツ市場、いや世界市場が欲しているのは、新型Mクラスのこうした総合性能なのである。(文:木村好宏/Motor Magazine 2005年10月号より)

画像: サスペンションは新開発のフロント/ダブルウイッシュボーン、リア/4リンク。新たにエアマチック・サスペンションも開発された。4駆システムは基本的に先代と同じだが、オフロード走破性向上が図られている。

サスペンションは新開発のフロント/ダブルウイッシュボーン、リア/4リンク。新たにエアマチック・サスペンションも開発された。4駆システムは基本的に先代と同じだが、オフロード走破性向上が図られている。

ヒットの法則

メルセデス・ベンツ ML350(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4780×1911×1815mm
●ホイールベース:2915mm
●車両重量:2060kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3497cc
●最高出力:272ps/6000rpm
●最大トルク:350Nm/2400-5000rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:4WD
※欧州仕様

メルセデス・ベンツ ML500(2005年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4780×1911×1815mm
●ホイールベース:2915mm
●車両重量:2100kg
●エンジン:V8SOHC
●排気量:4965cc
●最高出力:306ps/5600rpm
●最大トルク:460Nm/2700rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:4WD
※欧州仕様

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