昭和は遠くなりにけり・・・だが、以前に連載した「昭和の名車」では、紹介しきれなかったクルマはまだ数多くある。そこで、1960年代以降の隠れた名車を順次紹介していこう。今回は「2代目 スズキ ジムニー」だ。

スズキ ジムニー(2代目/SJ30型):昭和56年(1981年)4月発売

画像: オープンタイプは、フロントウインドーを前に倒すこともできた。

オープンタイプは、フロントウインドーを前に倒すこともできた。

SJ10型 初代ジムニーは、1970年(昭和45年)に鈴木自動車工業(現:スズキ)がホープ自動車のホープスター・ON型4WDの製造権を購入・改良した上で製造販売したクルマだ。初代ジムニーは、軽自動車のカテゴリーにありながら本格的4WD車の実力を持ち予想外のヒットとなる。それを引き継いで1981年に2代目ジムニー(SJ30型)が登場する。内外装の一新とエンジン性能の向上が図られ、とくにリフレッシュされたエクステリアは、従来の業務用一辺倒の要素が見直され、ダイナミックなボクシースタイルとなった。

ボディバリエーションは、オープンタイプとバンタイプがあり、オープンタイプはF(キャンバスドア)、FK(ハーフメタルドア)、FM(フルメタルドア)の3機種、バンタイプはVA、VCの2機種。とくにオープンタイプは軽快感やスポーティ感があるデザインで、業務用として軽4WDが必要なユーザーだけでなく、普通のクルマでは飽き足りない若者層の支持も得ていく。

FKとFMで特徴的だったのが、幌を外したときに現れるロールバーだ。ヘビーデューティというよりはファッショナブルさを感じさせるアイテムとなっており、さらにフロントウインドーを前方に倒してフルオープン走行すれば、今までにないレジャー用ビークルとして鮮烈な印象を感じさせた。

画像: 2サイクルの3気筒エンジンは初代のものより少しパワーアップされている。

2サイクルの3気筒エンジンは初代のものより少しパワーアップされている。

エンジンは、539ccの水冷2サイクル3気筒を搭載する。これは先代(ジムニー55)からの引き継ぎとなるが、パワースペックは従来の26ps/5.3kgmから28ps/5.4kgmにアップして余裕を与えられた。エンジンへのオイル供給方法に新鮮なオイルをエンジン主要部分にポンプで直接給油するCCISを採用するなど、パワフルとまではいえないが、低速から高速、一般道路からオフロードまで、ゆとりをもって行えるようになった。とはいっても高速道路では70km/hぐらいが上限だったのは事実で、ラグタイヤへの配慮も考えれば、ジムニーにとって一般路や高速道路よりもオフロードの方が相性がいいのも事実だ。

ミッションは4速MTだが、高・低速2段切り替え式の本格的なトランスファーを備えていた。変速比は高速が1.741、低速が3.052と大きな差をつけ、地形や走行条件に合わせてギア比が選べるのもユーザーには喜ばれた。

画像: タコメーターもないシンプルなインパネだが、必要なものは揃っている。

タコメーターもないシンプルなインパネだが、必要なものは揃っている。

シャシは角型鋼管フレームをクロスメンバーで補強した構造の頑丈なラダーフレームを採用している。これはねじれ、曲げなどの外力に強く、苛酷なオフロード走行時の衝撃にも高い耐久性を誇る。サスペンションは前後ともに半楕円リーフスプリング式のリーフリジッドだが、満載時の荷重に強いだけではなく、十分にサスペンションストロークを確保したことでハード走行時の路面からの入力を吸収する。このシャシやサスペンションと6.00-16インチの大径タイヤの組み合わせにより最低地上高は240mmを確保し、起伏の激しい山道や雪道の走行にも対応している。登坂力はオープンタイプで37.6度、バンタイプで38.7度まで可能で、小さなボディからは考えられないほどの走破性を持っていた。

居住性も先代に比べて改善された。外観寸法では従来車とほぼ同じだが、室内スペースが広がった。タイヤハウスの出っ張り部分も解消し室内幅の拡大に寄与している。シートはバン(VC)にファブリックがある以外はビニールレザーだったが、コストダウンというよりも、シートを汚すようなヘビーデューティな使用方法に対応したものといえるだろう。FMやバン系にはリクライニングシートが採用され、乗用車的に使用できる。リアシートは、従来の横位置から前向きのベンチシートとなった。スペース的に狭いが、緊急用や物置としても利用できるようになったのは歓迎された。

画像: 幌を被せた状態のリアビュー。スペアタイヤカバーも用意されていた。

幌を被せた状態のリアビュー。スペアタイヤカバーも用意されていた。

昭和の名車のバックナンバー

スズキ ジムニー FK 主要諸元

●全長×全幅×全高:3195×1395×1690mm
●ホイールベース:2030mm
●重量:704kg
●エンジン型式・種類:LJ50型・2サイクル 直3
●排気量:539cc
●最高出力:28ps/5800rpm
●最大トルク:5.4kgm/2500rpm
●トランスミッション:4速MT
●タイヤサイズ:6.00/16-4PR
●価格:78万円

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