やっぱりアルファはMTがいいと感じてしまう
TI(トゥーリズモ・インテルナツィオナーレ)という呼称はアルフィスタにとっては特別な意味を持っている。古くは1951年の1900に始まり、ジュリエッタ、1960年代のジュリア、1970年代のスッド、1990年代の155と、時代を築いた「長距離ツアラー」に付けられたもので、普通のアルファとは一味違うことを示すものなのだ。
ミラノを起点にして一気にアルプス越えをしても「疲れ知らず」のパフォーマンスの持ち主、それがTIたる所以なのである。
今回のアルファ147TIはフェイスリフトを受けてからは初のモデルである。そう、アルファ一連のいわゆる「ブレラ顔」になってからのTIなのだ。従来の埴輪のような顔は確かに個性的だった。が、チャイニーズアイを手にした現行モデルは、伸びやかなラインと共にすっきり感を増している。それがTIでは、17インチの専用ホイールと、スポーツサスペンションによる15mmのローダウン、そしてルーフエンドの小ぶりなリアスポイラーによって一層強調されることになった。
TIとしてのルックスは問題なし、だ。TIならではの装備としては他に、キセノンヘッドライト、ヘッドライトウォッシャー、スポーツレザーシート(ヒーター内蔵)、ブラックの専用インテリア、TI専用バッジ&キックプレート&フロアマットが用意される。さらにホイールやサスペンションなどを含め、パーツとしては50万円相当にもかかわらず+25万円ほどに抑えられているのが嬉しい。また、TIには3ドア(セレスピードと5速MT)がラインナップされているのも見逃せない。
そこで今回連れ出したのはTIでしか味わえない3ドアの5速MT。座面の前後長がたっぷりしたレザーシートに収まり、キーを捻る。耳慣れたツインスパークのサウンドが「やっぱりアルファだな」と感じさせる。それにしても排ガス対策の関係から、ツインスパークは直噴のJTSにとってかわると言われた(事実、アルファ156はそうなった)にもかかわらず、147の方は「ツインスパークのままでも行ける」ということで続投。この伝統あるユニットは低速トルクは今一歩ながら、4000rpmから上の気持ちよさは正にアルファ流だ。
こうしたツインスパーク+5速MTを駆ると、「やっぱりアルファはMTがいい」と呟いてしまう。ギア比はセレスピードと同一ながら、クラッチペダルを介してリズムに乗ってシフトすると不思議と軽快な感じがするのである。シフト操作そのものは機械仕掛けのセレスピードの方が素早いはずなのに、だ。相変わらずシフトのストロークは大きいが、リズムが合うとスパッと決まる。決まったときの気持ちよさがいい。これは旧いアルファを知る者にとっては、懐かしさと共にホッとする瞬間でもある。
肝心のTIならではの脚は、従来モデルよりしなやかさが伴った感じがした。確かにノーマルのコンフォートサスから乗り換えると、215/45となったタイヤのため大きな入力に対しては硬さを感じる。が、その後のいなし方が優しくなっているのだ。
そのため高速での巡航が楽になっている。足下を見てちょっと寂しいのは、17インチ化されてもブレーキがノーマルのままなこと。性能的には不満はないが、スポーク越しに覗くディスクローター径が小さく見えてしまうのは、TIバッジが付いているだけに惜しまれる点だ。
アルファ147TIはバリバリのスポーツではない。ローダウンとインチアップを伴ったルックスの良さに加えて、適度に締まったサスペンションの組み合わせを楽しむモデルである。アルファ147を購入後にこの手のパーツを組み込みたいと思っている方、またオリジナルの3ドアのフォルムに魅力を感じている方、そうした人には最初からTIをセレクトすることをお勧めする。個人的にはMTで楽しんでいただきたいが・・・・・・・・・・・・。(文:河原良雄/Motor Magazine 2005年12月号より)
アルファロメオ アルファ147TI 2.0ツインスパーク3ドア(2005年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4225×1730×1435mm
●ホイールベース:2545mm
●車両重量:1280kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1969cc
●最高出力:150ps/6300rpm
●最大トルク:181Nm/3800rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:FF
●車両価格:313万9500円(2005年当時)