昭和は遠くなりにけり・・・。以前に連載した「昭和の名車」では、紹介しきれなかったクルマはまだ数多くある。そこで、1960年代以降の隠れた名車を順次紹介していこう。今回は「トヨタ クラウン(7代目)」だ。

トヨタ クラウン(7代目/MS120系):昭和58年(1983年)8月発売

画像: パーソナルユース志向が強かった4ドアHTに対し、4ドアセダンは法人需要が多くフォーマルな雰囲気。

パーソナルユース志向が強かった4ドアHTに対し、4ドアセダンは法人需要が多くフォーマルな雰囲気。

日本の乗用車の歴史ともいえるクラウンが7代目となったのは、1983年(昭和58年)8月のことだ。「いつかはクラウン」の鮮烈なキャッチフレーズを引っ提げてデビューを飾った。ボディバリエーションは、パーソナルユース志向の4ドアHT(ハードトップ)とフォーマル志向を強めた4ドアセダン、加えて2段ルーフのステーションワゴンとなった。それまでのクラウンは高級車の部分がクローズアップされていたが、3タイプともウエッジシェイプで躍動感あふれるデザインとし若返りを図っている。これは見た目だけでなく風洞設備で磨き上げられたものでもあり、空気抵抗係数は当時のセダンとしては最良レベルのCd=0.37を実現している。

一方、意図的にユーザーの棲み分けも行っている。オーナー需要が大半を占める4ドアHTは4ドアセダンよりフロントグリルをスラントさせ、パーソナルムードを強く打ち出した。対して4ドアセダンはボディの四隅を角張らせ面を立てることで立派?に見えるようなデザインとした。また4ドアHTはドアミラーを採用するが、4ドアセダンは法人需要を意識してフォーマルなクロームメッキのフェンダーミラーを標準としていた。

画像: 4ドアハードトップのフロアシフト車は、エレクトリックディスプテイメーターが標準装備された。

4ドアハードトップのフロアシフト車は、エレクトリックディスプテイメーターが標準装備された。

インテリアでは、4ドアHTは専用のインパネから立体感をもたせるように続くドアトリム、サイドサポート調整機能を備えたシートなどを採用し、セダンとは明確に違いを持たせパーソナル性の強いデザインとした。セダンは端正で風格のある専用インパネ、シート、ドアトリムのデザイン処理で、国際水準のサルーン車にふさわしい居住性の確保などによりゆとりのある快適空間を目指している。

エンジンは車種体系に合わせ11種類用意された。主なもののみ紹介すると、ロイヤルサルーン、ロイヤルサルーンGにトップユニットとして搭載されたのが5M-GEU型の2.8L直列6気筒。このエンジンは先代から引き続き搭載されるが、175psにアップ。トルクフルな特性と高い静粛性を特徴としておりクラウン向きともいえた。7代目では、このエンジンとトランスミッションに電子制御式2ウェイオーバードライブ付4速AT(ECT)とをひとつのマイコンで統合制御するシステムを日本で初めて採用し、燃費とドライバビリティを向上させている。

画像: 写真は1G-G ツインカム24エンジン。2Lながら最高出力160ps/最大トルク18.5kgmを発生した。

写真は1G-G ツインカム24エンジン。2Lながら最高出力160ps/最大トルク18.5kgmを発生した。

主力エンジンとなったのが新規搭載の1G-GEU型ツインカム24だ。前年にマイチェンしたGX61マークII系に搭載されて好評を得ていたユニットで、2Lの直6 SOHCの1G-EUをベースにツインカム24バルブとした。このエンジンには、吸気マニホールドの各気筒用通路を2分割し、片側の通路に吸気制御バルブを設け、このバルブをエンジン回転数に応じて開閉する吸気制御システム、T-VIS(トヨタ・バリアブル・インダクション・システム)を採用していた。この効果は、低回転で吸気通路を狭くして流速を上げることでトルクを太く、高回転では両側を開きより軽快に吹け上がるようにできた。さらにTCCS(エンジン統合制御システム)などにより、10モード燃費10.2km/L(5速MT車)という好燃費を実現していた。

シャシは、量産FR車では世界唯一のフルフレーム4輪独立懸架を謳っていた。新設計のペリメーター型フレームを採用し、サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーンを継承、ロイヤルシリーズはリアにセミトレーリングアームを採用した。さらにGのリアサスには、光センサーを使ったマイコン制御により、乗車人数や荷物の重量にかかわらず車高を一定の高さに保つオートレベラーも採用している。プログレッシブパワーステアリングや4輪ESC(電子制御スキッドコントロール)といった、最先端の電子デバイスも積極的に盛り込んだ。

7代目クラウンはハイソカー人気にも後押しされ、好調に販売を伸ばした。1年後の1984年8月のマイチェンでは2954ccの6M‐GEU型エンジンを搭載し能力を高めた。さらに1985年9月には1G‐GZE型スーパーチャージドエンジンも搭載している。

画像: 太めのCピラーにクリアパネルが装着され、王冠エンブレムがあしらわれていたのも特徴的だった。

太めのCピラーにクリアパネルが装着され、王冠エンブレムがあしらわれていたのも特徴的だった。

昭和の名車のバックナンバー

トヨタ クラウン 4ドアHT ロイヤルサルーンG 主要諸元

●全長×全幅×全高:4860×1720×1400mm
●ホイールベース:2720mm
●重量:1500kg
●エンジン型式・種類:5M-GEU型・直6 DOHC
●排気量:2759cc
●最高出力:175ps/5600rpm
●最大トルク:24.5kgm/4400rpm
●トランスミッション:4速AT
●タイヤサイズ:195/70SR14
●価格:382万円

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