戦後復興策の一助として誕生した軽自動車は、その後たびたび規格の改定を受けて今日に至る。なかでも平成2年(1990年)に実施された改定は、軽自動車を今日のような在り方へと変貌させ、さらに本格スポーツモデルのいわゆる“A・B・C”誕生のきっかけともなった。

昭和24年(1949年)に始まった軽自動車の歴史は、幾度もの規格改定を受けて現在に至っている。そもそもは戦後復興策の一助として誕生した軽自動車規格は、その普及を目指してさまざまな優遇制度が導入されてきた。税金然り、車庫証明然り、そして免許取得が可能な年齢(16歳から~昭和39年まで)などの優遇策が採られた 。

そんな軽自動車が、今日のようなあり方に変化したのは、平成2年(1990年)の改定がきっかけだろう。 すでに昭和51年(1976年)の改定で全長3.2m以下×全幅1.4m以下×全高2m以下までボディサイズは拡大され、エンジン排気量は550cc以下まで大きくなっていた。それが平成2年の改定ではついに660ccに。全長は3.2m以下と100mm延長されたのだ。

現在の軽枠は全長3.4m以下に改定されたが、それ以外の縛りは平成2年のものがベース。つまり、現行軽枠の下地は平成2年の時点でほぼ出来上がったことになる。

それまで軽自動車と言えば、 あくまでセカンドカーやビジネスユースとしてのニーズがメインだったが、排気量に余裕が生まれたことで、ファーストカーとしてのニーズが徐々に高まりを見せるようになっていった。

いわゆる“A・B・C”に代表される軽スポーツカーの登場、ワゴンRの誕生で火がついた(そして現在に至る)モノスペース車の登場など、軽自動車の小型乗用車化とクラスレス化が着々と進んでいく。

平成10年(1998年)には再び軽規格が改定され、普通車と同じ衝突安全基準が適用されるのに伴い、全長は3.4m以下まで延長された。さらにその2年後には、高速道路の最高速度も従来の最高速度 80km /hから、普通車と同じ100 km/hに上がったことにより、 サイズとエンジン排気量以外は 普通車と遜色のない機能が実現した(そのぶん価格も上昇したが…)。

以後、現在に至るまで軽規格の変更はない。もっとも機能面の進化は著しく、横滑り防止装置の標準化を始め、衝突被害軽減ブレーキの搭載など、平成に入ってからの進化は、 普通車のそれと歩みを一にする。いまや軽自動車は、国内の新車販売台数のおよそ4割に迫る。660cc時代の到来こそ、 軽自動車多様化時代の幕開けで もあったのだ。

小さいのに本気!① 平成3年5月発売:ホンダ ビート

軽自動車と言えども容赦しない! さすがホンダの作ったスポーツカー である。軽の乗用車として初めてMR方式を採用しただけに留まらず、 量産車初のミッドシップフルオープンモノコックボディも実現してしま った。ほかにも軽四輪初のSRSエアバッグ搭載車の設定など、「軽だか ら...」という妥協はなかった。特筆すべきは搭載エンジンで、F-1エン ジン直系技術の多連スロットルと燃料噴射制御マップ切り替え方式を組 み合わせた吸気方式は「MTREC」を採用。3気筒SOHCながらターボ車と同じ64psを発生した。しかも、その発生回転数は8100rpm、最大トルクも7000rpmという超高回転型で、その加速はまるでバイクのようだっ た。総生産台数は3万3892台に達し、今なお現役のクルマも多い。

画像: 「ホンダ ビート」。小さなNSX? その走りはバイク感覚。

「ホンダ ビート」。小さなNSX? その走りはバイク感覚。

小さいのに本気!② 平成3年10月発売:スズキ カプチーノ

平成元年の東京モーターショーにコンセプトモデルを出品。鈴木修社長 (当時)が市販を表明してから2年後に発売されたのがカプチーノ。新規 格に合わせてエンジンを始め各部をリファインして登場した。ショーモ デルではカーボンボディだったが、さすがにそれは実現せず、それでも ボンネット、3ピース構成のデタッチャブル・トップ、リアピラーなど はアルミ製。足回りも4輪ダブルウイッシュボーンを採用するなど、各 部に軽自動車らしからぬ豪勢な装備やメカが奢られている。搭載される F6A型DOHCターボエンジンは前期型ではスチールブロックだったが、 95年5月のマイナーチェンジでアルミブロックとなり、最大トルクも 10.5kgm/3500rpmにアップした。

画像: オーソドックスなFRスポーツながら先進技術が詰め込まれていた。

オーソドックスなFRスポーツながら先進技術が詰め込まれていた。

小さいのに本気!③ 平成4年10月発売:マツダ オートザムAZ-1

ビート、カプチーノに続く第3の軽スポーツ がマツダのAZ-1。スズキにもOEM供給され CARA(キャラ)という名前で販売された。 先行した2車がオープントップだったのに対 し、AZ-1はクローズドボディ。だが、ユニー クだったのは、軽にしてガルウイングドアを 採用したところ。ニュルブルクリンクでも走 行テストを行ったというだけにボディ剛性の 高さは軽スポーツの中でも群を抜くが、それ ゆえにサイドシルの高さはハンパではなかっ た。反対に着座位置は低く、上にガバッと開 くガルウイングドアを持ってしても乗降性は 厳しかった。ボディ外板に樹脂を使って軽量 化。とにかく速かったが、高速域の安定性は いまひとつ。むしろ、峠道で本領を発揮し、 チョコマカと良く走った。

画像: スーパーカーのエッセンスを軽自動車に盛り込んだ。そのインパクトは強烈だった。

スーパーカーのエッセンスを軽自動車に盛り込んだ。そのインパクトは強烈だった。

This article is a sponsored article by
''.