2006年8月、2代目MINIのオフィシャル写真が公開されている。正式デビューはその後のパリサロンということになったが、写真公開の前には一部のジャーナリストに向けた事前ワークショップも開催されている。Motor Magazine誌もこのワークショップに参加、プロトタイプモデルの試乗を行っている。ここではその試乗記を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年10月号より)

クーパーSはBMW製の新開発1.6Lターボエンジンを搭載

「ニューMINIのダイナミックワークショップに参加しませんか」と、旧知のBMW広報から誘いが来た時、サスペンションでも変更したのかと思っていたら、「いや今秋パリで発表される次期モデルのことです」と言われ、慌てて駆けつけたのがアムステルダム郊外にあるザンドボールドサーキットであった。

ほんのわずかなカムフラージュで申し訳程度に素性を隠したニューMINIは、旧型のイメージを非常に強く残したデザインであることがすぐに読み取れた。

2001年の発売以来、なんと80万台が販売され、大成功となったMINIのデザインはキープコンセプト以外にはなかったのだろう。というのは、MINIを選択した50%以上のオーナーが「デザイン」を理由に挙げているのである。これはアルファロメオのオーナーよりも高い割合である。

そのようなわけでレトロと言われようと、MINIは1959年に現れたミニでなければならないのである。この現象はもはやポルシェ911と同じ道を辿っていると言えるのではないだろうか。

ただし、安全性の向上や後席の居住性を考えて、全長はおよそ60mm延長されている。ただしホイールベースは2467mmと変わっていない。

さて、このワークショップに用意されていたMINIはすべてクーパーSだったが、パワープラントは噂どおりBMWによる新設計で、1.6Lの排気量は変わらないが、直噴ヘッドにツインスクロールのターボチャージャーを採用している。

最高出力は175ps/5500rpm、最大トルクは240Nm/1600〜5000rpmへと向上している。この結果、スタートから100km/hまでの加速は旧型の7.2秒から7.1秒へ、最高速度は222km/hから225km/hへとわずかに向上している。

ニューMINIのエンジンはすべてBMW開発のものになるが、それは単に性能向上ではなく、オーナーから「燃費を何とかして欲しい」とのアピールがあったからであると開発担当のゲーディケ氏は語った。ちなみにこのターボエンジンの燃費は、BMWの非公式な発表によれば100kmあたり6.9Lで、旧型に較べると20%以上改善している。

画像: ダイナミックワークショップ終了後に公開された「MINI クーパーS」。(タイトル写真はダイナミックワークショップでの試乗時のもの)

ダイナミックワークショップ終了後に公開された「MINI クーパーS」。(タイトル写真はダイナミックワークショップでの試乗時のもの)

燃費性能は大幅に向上、CVTでなくトルコンATを採用

さて、今回の主目的であるシャシチェックが始まった。我々はペアを組んで約4kmのコースへ出る。もともとこのサーキットは2輪用でアップダウンとコーナーが多く、MINIサイズのクルマにも適している。

新たに採用されたスターターボタンを押し、走り出すとすぐにパワフルなエンジンの存在を感じる。どのギアからも、どの領域からも力強く加速する。またシャシは明らかに洗練されているのが感じられる。けれどもこれまでのようなゴーカートスタイルは継承されており、シャープなステアリングフィールはある程度の緊張感を要求する。

それでもコーナーの進入、そして立ち上がりの懐の深さ、許容度は随分と上がっている。正常進化と言って良いだろう。これはサスペンションジオメトリーの変化だけではなく、新たに採用されたアルミ製軽量サスペンション(マイナス6kg)などによる総合効果に違いない。

このワークシップが終わって数週間後には広報資料が届いた。それによると、MINIクーパーに搭載されるエンジンは、バルブトロニックと可変バルブタイミングを装備した自然吸気で、1.6Lの排気量から最高出力120ps/6000rpm、最大トルク160Nm/4250rpmを発生する。燃費は一般的な走行で20%、EUテストサイクルでも12.5%の向上を見ている。

ところで、やはりこれまであまり評判の良くなかったCVTはお役御免になり、かわってオプションで6速オートマチックが採用される。新しいマッピングでシフトスピードが向上し、快適性も増したこのオートマチックは日本では引っ張りだこになるに違いない。また、安全装備も格段に充実したものになっている。

すでにドイツにおける発売時期は決まっており、今年の暮れからクーパーとクーパーSがショールームに並ぶ。価格は前者が1万7350ユーロ(約252万円)、後者が2万1050ユーロ(約306万円)、ともに16%の付加価値税込みである。

またエントリーモデルのMINI ワンとディーゼルは、来年の後半から市場に投入される。もちろんコンバーチブルも計画されているが、こちらの新旧の切替えは2009年まで待たねばならない。日本での発売は来年の春ごろが予想されている。価格は未定だ。(文:木村好宏/Motor Magazine 2006年10月号より)

画像: MINI クーパーS。スタイリングの変更は最小限にとどめられているが、インテリアは大きく変わっている。センタースピードメーターが大型化され、ドライバーの正面にはタコメーターのみが配置される。

MINI クーパーS。スタイリングの変更は最小限にとどめられているが、インテリアは大きく変わっている。センタースピードメーターが大型化され、ドライバーの正面にはタコメーターのみが配置される。

ヒットの法則

MINI クーパーS(プロトタイプ) 主要諸元

●全長×全幅×全高:3714×1683×1407mm
●ホイールベース:2467mm
●車両重量:1580kg(DIN)
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:175ps/5500rpm
●最大トルク:240Nm/1600-5000rpm
オーバーブースト時は260Nm/1700-4500rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
●最高速:225km/h
●0→100km/h加速:7.1秒
※欧州仕様

MINI クーパー(プロトタイプ) 主要諸元

●全長×全幅×全高:3699×1683×1407mm
●ホイールベース:2467mm
●車両重量:1515kg(DIN)
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1598cc
●最高出力:120ps/6000rpm
●最大トルク:160Nm/4250rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
●最高速:203km/h
●0→100km/h加速:9.1秒
※欧州仕様

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