ポルシェ 918スパイダー(2013-2015年)
ポルシェは、2013年のフランクフルト モーターショーでプラグインハイブリッド機構を搭載したスーパースポーツカー「918スパイダー」をワールドプレミアさせた。プロトタイプにあたる「918スパイダー コンセプト」は2010年のジュネーブ モーターショーで発表されていたが、さすがのポルシェでも市販までには3年ほどの月日を必要としたようだ。
いかにもポルシェのレーシングカーDNAを継承されたスタイリングは、1970年代のル・マン24時間レースなどで多くの優勝を飾ったプロトタイプ レーシングカーの「917」をモチーフとしている。
さまざまなモータースポーツからフィードバックされたテクノロジーを基に、918スパイダーは仕上げられた。シャシはカーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)製で、きわめて優れたねじり剛性を誇り、その前後には衝撃吸収材も配されている。前述のようにプラグインハイブリッド機構を採用しながら、車重は1674kgにおさえられている。駆動用バッテリーはコクピット背後の低い位置に配され、低重心化と理想的な前後重量配分(前43:後57)を達成している。
918スパイダーのパワートレーンは、ル・マンなどで活躍したレーシングカー「RSスパイダー」に搭載された4.6L(正確には4593cc)のV8 DOHCエンジンをミッドシップ搭載し、フロントに2基、リアに1基の電気モーターを備えたパラレル式ハイブリッド機構を採用している。後輪はV8エンジンが基本的に駆動するが、モーターのアシストや、またモーターのみでの駆動も可能だ。リアアクスルの駆動は、7速PDK(DCT)によって伝達される。
フロントには独立したモーターが搭載され、固定減速比で前輪を駆動し、高速走行ではクラッチを切り離す。前後アクスルの駆動力は独立して制御される、応答性に優れた4WDシステムとなっている。リチウムイオンバッテリーの容量は6.8kWhで、外部充電も可能とし、日本では200V電源を使用すれば約2時間半で急速充電が可能だった。
システム全体で最高出力は887ps、最大トルクは1280Nmというパワースペックで、800〜5000rpmで800Nm以上の大トルクを発生した。公称の最高速度は345km/h、電気モーターだけでも150km/h。0→100km/h加速は2.6秒、0→200km/h加速は7.3秒。しかもNEDC総合燃費は約32km/L、フル充電ならモーターだけで約30kmの走行が可能だった。
インテリアはドライバーオリエンテッドで、ドライビングのための重要な操作系はマルチファンクションステアリングの周囲にまとめられ、インフォテインメント関係はセンターコンソールの高い位置に配された、2つのエリアに分割されている。
918スパイダーは車名に合わせて918台が限定生産され、日本にも30台近くが導入されたようだ。日本での価格もユーロ建てで、68万4800ユーロ(当時のレートで約8000万円)とされていた。
ポルシェ 918スパイダー 主要諸元
●全長×全幅×全高:4643×1940×1167mm
●ホイールベース:2730mm
●車両重量:1674kg
●パワーユニット種類:90度V8 DOHC+モーター×3
●排気量:4593cc
●エンジン最高出力:608ps/8700rpm
●エンジン最大トルク:530Nm/6600rpm
●モーター最高出力:129ps+156ps
●モーター最大トルク:210Nm+375Nm
●燃料タンク容量:70L
●駆動方式:縦置きミッドシップ4WD
●トランスミッション:7速DCT
●タイヤサイズ:前265/35ZR20、後325/30ZR21
●当時の価格:68万4800ユーロ