クルマ好きなら一度は憧れたことがあるだろうスーパーカー。その黎明期から現代までをたどる連載企画。第115回は「ブラバム BT62」だ。

ブラバム BT62(2018年-)

画像: デリバリー第1号車のBT62。全長は4.5mを切るサイズだが、全幅は2m近くあり、車高も1.2mにおさえられている。

デリバリー第1号車のBT62。全長は4.5mを切るサイズだが、全幅は2m近くあり、車高も1.2mにおさえられている。

1950〜60年代のF1グランプリで活躍したオーストラリア出身の名レーシングドライバー、ジャック・ブラバムは自らの名を付けたレーシングカー コンストラクターを1962年に興す。1980年代にはネルソン・ピケにF1チャンピオンを獲得させるなど、かつてはマクラーレンに比肩するほどの名門F1コンストラクターであった。その後、成績不振からブラバムの名は消滅したが、ジャックの息子でF1レーシングドライバーでもあったデイビッドがブラバムの名を復活させ、コンストラクターとして2015年から世界耐久選手権(WEC)に参戦している。

そして、デイビッド率いるブラバム オートモーティブが2018年に発表したのが、サーキット走行専用車として開発された「BT62」だ。BTとは父ジャック・ブラバムと、父の共同創設者で後にラルトを設立したロン・トーラナックの頭文字で、ブラバム車には常に車名にBTが付けられている。62は、父の時代からの開発コード番号だ。

BT62は、FIAのGT3レギュレーションにのっとって製作されている。現代の他のレーシングマシン同様、シャシやボディパネルにはカーボンファイバーを多用している。乾燥重量は1トンを切る972kgと、きわめて軽い。リアの巨大なウイングや、フロントおよびボディサイドの大型エアインテークなど、佇まいはレーシングカーそのものだ。

画像: メーターは全面モニター。ステアリングもレーシングカーのもののようで、センターのタッチパネルにスイッチ類が備わる。

メーターは全面モニター。ステアリングもレーシングカーのもののようで、センターのタッチパネルにスイッチ類が備わる。

ミッドシップ搭載されるパワーユニットは、自社開発の5.4L V型8気筒の自然吸気DOHC。最高出力は700ps、最大トルクは667Nmというパワースペックで、ミッションは6速のシングルクラッチAMTを組み合わせる。

デイビッドの目標は、このBT62でル・マン24時間をはじめとするWECでの優勝だ。したがってBT62はサーキット走行専用モデルとして開発されたが、この手のクルマを欲するセレブリティは、ロードバージョン(公道仕様)を望む者が多い。そこで、公道走行を可能にするオプションパッケージが設定された。内容は、公道で走りやすくするためにロードクリアランスを上げ、ステアリングの切れ角を大きくして最小回転半径を小さくし、エアコンやドアロック、盗難防止装置などを装着するというものだ。

ブラバム BT62はレーシングカーとロードカーの狭間にある、新参メーカーらしい野心作のモデルだ。ハンドル位置は左のみで、限定生産台数は70台。価格は100万ポンド(約1億3000万円)で、公道走行用のオプションパッケージは15万ポンド(約2000万円)といわれている。

なおブラバム オートモーティブでは、次なるモデルとしてBT62のフル ロードバージョンを計画している。豪華で快適な、このモデルなら日本の公道も走行が可能なはず。その登場に期待したいものだ。

画像: 巨大なリアウイングとリアディフューザーなどのエアロパーツにより、ダウンフォースは最大で1200kg以上にもなる。

巨大なリアウイングとリアディフューザーなどのエアロパーツにより、ダウンフォースは最大で1200kg以上にもなる。

ブラバム BT62(サーキット仕様) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4460×1950×1200mm
●ホイールベース:2695mm
●乾燥重量:972kg
●エンジン種類:90度V8 DOHC
●排気量:5389cc
●最高出力:700ps/7400rpm
●最大トルク:667Nm/6200rpm
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●燃料タンク容量:125L
●トランスミッション:6速AMT
●タイヤサイズ:前27-65-18、後31-71-18

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