2006年、2代目アウディTTにロードスターが登場している。スポーツカーとしての資質を高めた2代目のアウディTTで、ロードスターはどのように位置づけられていたのか。Motor Magazineでは、南仏で行われた国際試乗会の模様をレポートしている。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年2月号より)

Z字型に折り畳まれるソフトトップ

新型TTロードスターは、先代に続きソフトトップを採用している。近年の動向を見れば、新型では電動ハードトップを採用するのでは、とも予想したのだが、今回南仏で対面したモデルは、Z字型に折り畳まれトノカバーいらずでスッキリとしたオープンボディに変身する新たなソフトトップを備えていた。

その主たる理由を「車重を軽く、かつ重心を極力低くするため」とアウディの開発陣は説明する。つまり、走りにこだわった故の選択なのだ。

先代TTは、ユニークなスタイリングとお洒落なインテリアを愛でる雰囲気重視のカジュアルスポーツだったが、新型はエンジン横置きのFFベースという基本レイアウトは踏襲するものの、ボディや足まわりの大幅な進化を中心に本格スポーツへと鮮やかな変身をした。そして続くロードスターも、まったく同じ考え方で作られたというわけである。

シャシ構造からもそれは伺える。クーペ同様アルミとスチールのハイブリッドボディだが、硬いルーフがなくなったことによる剛性不足に対応するために、オープンモデル専用の強化が行われているのだ。

最大のポイントはサイドシル部分。外からは同じアルミの押し出し材のように見えるが、実は内部の補強部材を単純な+型から複雑な放射線形状に変え、同時に肉厚も向上させて、それにつながるシートアルミのプレスしたリアクオーターも一部を二重構造に変更。これらの施策により旧型ロードスターに対し、120%の捩れ剛性アップを実現している。

アルミとスチールの比率は「58対42」で、クーペの「69対31」に較べアルミの使用部位が減っているが、これはルーフパネルが幌に換わったのが主な要因。開発陣が気にする重量増は手動トップで35kg、電動トップで67kgとなった。

画像: 2006年に登場したアウディTTロードスター。ソフトトップは2シーターの後部にすっきりと収まる。

2006年に登場したアウディTTロードスター。ソフトトップは2シーターの後部にすっきりと収まる。

バランスがいい2.0TFSIエンジン搭載モデル

今回は電動トップのみを試したが、走り出して最初に感じたのが乗り心地の良さだ。クーペの締まった乗り味もそれはそれで魅力的だが、低速域でコツコツとくる硬さがやや気になった。僕はそれをアルミ独特の硬さによるものと解釈していたのだが、ロードスターは重量増が幸いしたのか、あるいはクーペよりも少し緩いのが効いているのか、ボディに適度ないなしがあり、入力の「角」が取れたまろやかな乗り味なのだ。

唯一、大きめのギャップを通過した時のみブルンとした余韻を感じたものの、試乗車が設定タイヤの中でも最も扁平率の低い245/40R18を履いてなお、これだけ良質な乗り心地を出していることに感心した。

同時に、ボディのしっかり感も数あるオープンモデルの中でも随一と思えるレベルにある。フロアやフロントウインドウのフレームなどにシェイクを感じるようなことはまったくないし、ステアリングも支持剛性の高さはクーペと変わらず操作フィールも澄んでいる。

そんなわけで、南仏の海岸線を縫う曲率のきついワインディングでもキビキビとした身のこなしを十二分に楽しめた。ただ、磁力を利用してダンピングを調節する「アウディマグネティックライド」は、スポーツに切り替えてもクーペほどの変化は感じられない。その原因がボディ自体に減衰性のあるオープンボディにあるかは定かではないものの、標準の状態で十分に楽しいハンドリングと快適性が両立できているのだから問題はまったくない。

モデル展開は3.2クワトロとFFの2.0TFSIの2種類。クーペの場合は3.2の方がバランスが良いと思っていたが、ロードスターのお勧めは圧倒的に2.0だ。全体の動きが軽快な上に、追い込んだとき最後に顔を出すアンダーステアもより軽微なのである。

パワーフィールもV6の怒濤のトルク感はないものの、低速域から十分に力強く、吹け伸び感も鮮烈。しかもオープン状態では抜けの良い軽快なエキソーズトノートも耳に届き、いかにもスポーツカーといった趣きなのである。

ルーフの開閉はコンソール上のスイッチひとつで行う。開閉にかかる時間は12秒で、しかも50km/h以下なら走行中も開閉可能というから気軽な切り替えが可能だ。オープン走行中は後方からの風の巻き込みを感じるが、髪が乱れるほどではない。それに新型TTロードスターには電動で上下するウインドディフレクターも装備しており、高速域では足下に回り込む風をかなり低減できるのも確認できた。

さらに、トランク容量は250Lと大きくなり、ラージサイズのスーツケースも収まる上に、トランクスルー機構の採用で1.9mの長尺物の収納も可能と実用性が高められたのも大きな魅力である。

この新型TTロードスターは、当面2.0TFSIが、2007年の半ばに日本導入の予定だ。(文:石川芳雄/Motor Magazine 2007年2月号より)

画像: 走りにこだわり、ソフトトップを採用。手動式と電動油圧式があるが、電動油圧式欧州では3.2クワトロに標準装備、2.0TFSIにはオプションとなる。

走りにこだわり、ソフトトップを採用。手動式と電動油圧式があるが、電動油圧式欧州では3.2クワトロに標準装備、2.0TFSIにはオプションとなる。

ヒットの法則

アウディTTロードスター 2.0TFSI 主要諸元

●全長×全幅×全高:4178×1842×1358mm
●ホイールベース:2468mm
●車両重量:1315kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:200ps/5100-6000rpm
●最大トルク:280Nm/1800-5000rpm
●トランスミッション:6速DCT
●駆動方式:FF
※欧州仕様

アウディTTロードスター 3.2クワトロ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4178×1842×1358mm
●ホイールベース:2468mm
●車両重量:1490kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3189cc
●最高出力:250ps/6300rpm
●最大トルク:320Nm/2500-3000rpm
●トランスミッション:6速DCT
●駆動方式:4WD
※欧州仕様

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