クルマ好きなら一度は憧れたことがあるだろうスーパーカー。その黎明期から現代までをたどる連載企画。第123回は「アストンマーティン ヴァルハラ」だ。

アストンマーティン ヴァルハラ(2019年-)

画像: 前後ともオーバーハングが短い、いかにも空力の良さそうなシルエットはヴァルキリーとよく似ているが、シザーズドアを備える。

前後ともオーバーハングが短い、いかにも空力の良さそうなシルエットはヴァルキリーとよく似ているが、シザーズドアを備える。

F1グランプリに参戦しているレッドブル アドバンスド テクノロジーとアストンマーティンのコラボレーションで生まれたハイパー スポーツカーは、AM-RB 001/002/003というコードネームで開発されていた。第1弾のAM-RB 001は「ヴァルキリー」という名で2017年に発表され、第2弾のAM-RB 002はサーキット専用モデルのヴァルキリーAMR(アストンマーティン レーシングの略)として発表される。

2019年のジュネーブ モーターショーで実車がワールドプレミアされた第3弾のAM-RB 003は、6月に「ヴァルハラ」という車名が公表された。ヴァルハラ(Valhalla)という名は、ヴァルキリーと同様に古代北欧神話に由来しており、「戦士の楽園」を意味している。また、ヴァンテージやヴァルカン同様に、車名にVの頭文字を付けるアストンマーティンの伝統も踏襲されている。

ヴァルハラはヴァルキリーと基本的なスタイリングを共有しているが、2台はまったく異なるモデルだ。ヴァルキリーとの最大の違いは、コクピットの大きさだ。ヴァルキリーのコクピットはきわめてタイトで、ドアもなくサイドウインドーがガルウイング式に開くだけだった。だが、ヴァルハラは公道を走行するための利便性や快適性も追求されている。ドアは前ヒンジのシザーズ式を採用して乗降性を高めている。

ボディパネルはカーボンファイバー製。シャシにはアクティブサスやアクティブエアロダイナミクスに加え、モーフィング エアロサーフェスと呼ばれる、空力性能付加物の角度を変えずにクルマのダウンフォースを変化させることができるシステムを採用している。

画像: デモカーのインテリア。ステアリングコラムには横長のディスプレイも備わる。センターコンソールは3Dプリンター製。

デモカーのインテリア。ステアリングコラムには横長のディスプレイも備わる。センターコンソールは3Dプリンター製。

外寸やパワーユニットなどのスペックは公表されていないが、ミッドシップ搭載されるエンジンは3.0L(正確な排気量は不明)のコンパクトなV6ターボで、エンジン単体の重量は200kg以下に抑えられる。これに電気モーターを組み合わせたハイブリッドシステムは、全体で1000bhpの最高出力が目標値だ。

ミッションはF1テクノロジーからフィードバックされた8速DCTを組み合わせる。また、サーキット専用車のヴァルカンにも採用されていた「ネクセル シーリング オイルシステム」も採用され、90秒以内にオイルカートリッジを交換することが可能だ。

ドライバーズシートがフロアに直付けだったヴァルキリーとは異なり、コクピットはハイパー スポーツカーらしい快適性が考慮されている。ステアリングコラムにはディスプレイも備え、インフォテインメントにはスマートフォンを利用する。センターコンソールは、軽量化のために3Dプリンターで製造されている。

ヴァルハラは世界限定500台で生産され、2021年後半には発売される予定だ。価格は、日本では1億5000万円くらいとされ、十数台が導入される予定。右ハンドルも設定される。だが、例によって500台のオーナーは既に決まっているという・・・。

画像: リアエンド下部は巨大なベンチュリートンネル。フロントフェンダー後ろのダクト内にカメラが備わり、ミラーの代わりを果たす。

リアエンド下部は巨大なベンチュリートンネル。フロントフェンダー後ろのダクト内にカメラが備わり、ミラーの代わりを果たす。

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