1999年にデビューした初代BMW X5は生産台数60万台以上という大ヒット作となったが、2006年、再びライバルを大きく引き離すべく、最先端技術を満載した第二世代(E70型)へと進化している。2代目X5はどんなクルマとなったのか。今回はギリシャで開催された国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2007年3月号より)

大ヒット作となったX5がフルモデルを受けて2代目へ

ひと回り大きくなったと聞いてからE70型ニューX5に乗り込むと、予想ほど広くなった感じはしなかった。しかしシートに腰掛けるとゆったりしていて、バックレストも高く従来型よりゆとりを感じる。室内を広く見せる工夫をしたのではなく、大きなシートで実際にその広さを体感できるようにしたからだ。

ATセレクターも実用上室内を広くするためのアイテムになった。これまでのような大きくストロークするセレクターではなく、シフトバイワイヤーになり、携帯電話のような形状と大きさのセレクターを手首のスナップで動かす。これによってセレクターを動かすためのエリアを確保しなくても済むようになり、いい位置にカップホルダーをレイアウトできるようになった。

プッシュボタンでエンジンを掛けたあと、ATセレクターの横にあるロック解除ボタンを押しながら軽く手前に倒すとDレンジになる。手を放すとセレクターはまた元の位置に戻る方式だ。動かし方はこれまでのセレクターと変わらない。Dレンジからロック解除ボタンを押さずに前方に押すとNレンジになり、そこからロック解除ボタンを押して前方に押すとRレンジになる。Dレンジから左に倒せばスポーツモード、そこから前後に動かすとステップトロニックのマニュアルモードになる。

唯一異なるのはPレンジに入れる方法だ。これは停止中にセレクターの頭にあるボタンを押すだけ。しかし実際の運転ではこのPレンジに入れるボタンは使わなくて済む。それはDレンジのままエンジンを止めると自動的にPレンジになるからだ。これは便利だ。この辺がシフトバイワイヤーのメリットだろう。

パーキングブレーキも室内を広く使うために変わった。レバー式でも足踏み式でなく、ATセレクターのそばに配置された電気スイッチ式である。パーキングブレーキスイッチと呼びたくなるほどだ。

画像: 新しいデザインのATセレクターレバーが印象的なインテリア。まるでジョイスティックのような操作感で、パーキングブレーキも電気式のスイッチとなった。

新しいデザインのATセレクターレバーが印象的なインテリア。まるでジョイスティックのような操作感で、パーキングブレーキも電気式のスイッチとなった。

走りのダイレクト感がさらに強まった

試乗したのはV型8気筒の4.8iと直列6気筒3Lディーゼルの3.0dの2種類である。ボディがひと回り大きくなったX5であるが、車重は変わらないので走りのデメリットはない。どちらのエンジンでも低速トルクが太く、高回転でも元気が良いので(ディーゼルでも)実に気持ちよく走れる。

さらに高剛性ボディと新しいフロントダブルウイッシュボーンサスペンション、フレックスレイによる高速データ通信によるスタビライザーとダンパーのコントロールによって、これまでより一段とダイレクトで軽快な走りを満喫できるのだ。

試乗車に乗りベースになるホテルから出る道で、まずハンドルからしっかり感が伝わってきた。タイヤはランフラットタイヤになったが、サスペンション、フレーム、ボディが現行モデルより「近くなった」感じだ。途中にゴムブッシュがあるとすれば、それが薄くなった感じだ。

そもそもX5はこの種のクルマの中ではしっかりしていたが、さらにダイレクトになっている。これはWRCで使うワインディングロードを走ったときにも感じた。深く回り込んでいるタイトターンがあったが、そこでハンドルを切り足していくと、ちゃんとノーズがインに向かって入ってくれるのだ。

車重に負けて外に膨らんでいってしまうかと思う場面でも、しっかりとラインをトレースしてくれる。これだけ大きなクルマなのにアンダーステアを感じずにドライブすることができる。ホイールベースが伸びたことで鈍重になりそうだが、実際には機敏に走れるようになっていた。車高が高いので安定方向に持っていこうとするのが普通だが、BMWはそうではない。SUVのことをBMWはSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)と言うが、さらに進化してスポーツカーに近づいた感だ。足元がバタつく感じはないし、乗り心地もいいのだ。

4.8iはアクティブドライブを装備していたが、コーナリング中のロール角をゼロにするだけでなく、路面の不整に対してボディの揺れを抑える効果もある。フレックスレイが貢献しているのは間違いない。

試乗車にはアダプティブステアリングも装備されていた。これは自動カウンターステアを当てることができるが、日常の運転ではバリアブルギアレシオの恩恵を受ける。不思議と車庫入れでも大きなクルマを扱っているという気にならない。

日本に来るのは7月ごろだと思われるが、進化したX5はまた好調なセールスを堅持しそうだ。(文:こもだきよし/Motor Magazine 2007年3月号より)

画像: 先代より全長が約19cm、全幅は6cmサイズアップされ、剛性を向上させたが車重は増えていない。実質的な軽量化を達成している。

先代より全長が約19cm、全幅は6cmサイズアップされ、剛性を向上させたが車重は増えていない。実質的な軽量化を達成している。

ヒットの法則

BMW X5 4.8i 主要諸元

●全長×全幅×全高:4854×1933×1766mm
●ホイールベース:2933mm
●車両重量:2245kg(EU)
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4799cc
●最高出力:355ps/6300rpm
●最大トルク:475Nm/3400-3800rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●0→100km/h加速:6.5秒
●最高速度:240km/h
※欧州仕様

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