手の込んだモディファイが随所に施されたエクステリア
これは、フェイスリフトのひと言で済ませられるような規模のモデルチェンジではない。新しいベンテイガに関するプレゼンテーションを聞いて、私はそう直感した。
イギリス各地がロックダウンされる直前の2020年3月中旬、私はベントレーに招かれて新型ベンテイガのスニークプレビューに参加した。このとき、すでにコロナ禍が足下まで迫っており、いつ新型を発表できるかはまったく見通せない状況だったが、ベントレーとしては「クルマは完成しているし、わざわざイギリスまで足を運んでくれたのだから、とりあえず見て欲しい」という思いでイベントの実施に踏み切ったようだ。
目の前に現れた新型は、最新のコンチネンタルGTと似たヘッドライトとテールライトを移植しただけのようにも見えた。だが実際には、はるかに手の込んだモディファイが随所に施されている。
チーフデザイナーのステファン・ジーラフ氏が説明してくれた。「コンチネンタルGTと同じように、フロントグリルの周囲をカバーしていたボディパネルがなくなり、あたかもグリルとボンネットが直接触れ合っているように見える処理を施しました。この場合、勢いよくボンネットを閉めると応力による歪みでボンネットとグリルが接触する恐れがありますが、これは設計を工夫することで回避しています」
この変更のおかげでフロントグリルの面積が広がり、高さも30mmほど伸びた模様。さらにフロントグリル自体が垂直に近い角度に起こされた結果、現行型に比べてボンネットの先端が前方に伸び、立体感が増しているそうだ。
さらなるリードを得るべく踏み出した大がかりな一歩
加えて新しいフロントグリルとボンネットにマッチさせるため、フロントフェンダーやバンパーなども修正。結果として、これまでよりもさらに路上における存在感が強まるデザインに仕上がったとジーラフ氏は胸を張る。
ボリューム感の増したフロントセクションとバランスをとるため、リアまわりのデザインも大幅に見直された。リアフェンダーは左右に10mmずつ合計20mmも外側に張り出し、これにあわせてリアトレッドも拡大。大地を力強く踏みしめる様子が強調された。
テールライトがコンチネンタルGTと共通のイメージにされたことは前述のとおりだが、それ以上に驚かされるのは、テールゲートとリアフェンダーの形状を変更して、クラムシェルデザインを採用したことにある。この結果、テールゲートとリアフェンダーのシャットラインがボディサイドに回り込み、テールエンドのデザインはすっきりしたものに生まれ変わった。
インテリアではメーターパネルをフルデジタルディスプレイ式としたほか、センターディスプレイを10.9インチへと大型化。さらにエアアウトレットのデザインやウッドパネルの選択肢なども見直された。実質的な部分では、後席のシートフレームを新設計してニールームを拡大した点が注目される。4人乗り仕様は標準状態で30mm、シートをリクライニングさせると100mmも膝まわりの空間が広がったというから驚きだ。
ベンテイガは世界初のラグジュアリーSUVとして2015年にデビューした。そして現在では、ベントレーの生産台数で45%を占める最重要モデルとなっている。その後、ウルス、カリナン、DBXなどが各社から登場したが、依然としてセグメントトップの座を圧倒的な大差で守っている。
それでも今回、あえて大規模なマイナーチェンジを実施した理由について、プロダクトラインディレクターのクリス・コール氏は「ライバルに対するアドバンテージをより明確にするため」と説明した。ラインナップはV8、スピード(W12搭載)、ハイブリッドの3グレードとなる。日本には、今夏にもV8が上陸するほか、追ってスピードやPHVが導入される可能性も残されているという。(文:大谷達也)
■ベントレー ベンテイガV8主要諸元
●全長×全幅×全高=5125×1998×1742mm
●ホイールベース=2995mm
●車両重量=2416kg(5シーター仕様/・EU準拠)
●エンジン= V8DOHCツインターボ
●総排気量=3996cc
●最高出力=550ps/6000rpm
●最大トルク=770Nm/1960-4500rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速AT